起床中です(ユキと賀川)
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夢に見たのはあの人の事。
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昨夜はとっても疲れていて、布団がとても気持ちの良い夜でした。
朝に見た司先生のウェディングドレス姿はウットリするほど綺麗で、清水先生なんて一度チラリと見て、扉を閉めなおしてまた開いたぐらいだった事を思い出したり。
森で聞いた生徒さんの賛歌が晩秋の空に響くのとか……夢で見ていたんです。
その時に鳴り響いていた楽しげな鍵盤ハーモニカの音、それに夜、花火の音が響いたのを思い出しました。
それに重なるように彼が私を見上げて言うのです。
『俺とで…………いい?』
……って。
音でよく聞こえなかったけれど、俺とで……じゃないの。
賀川さん。
違うの、他の誰とでもなく、貴方が……
じゃ、なきゃ……嫌なの。
夢の中では、その後小林先生達が来なくて…………
甘くて冷たいデザートを知る事もなく。賀川さんにフロントのリボンを解かれた所で恥ずかしいって思ったら、目がパッチリと覚めたんです。
「は、恥ずかしい……」
よ、よかった……よね?
「……っぅ……オカシイですよね」
いつからこんな事考えるようになったんでしょう?
彼が抱きしめてくれればくれるほど、私は彼の重荷になって行く気がして。嬉しい分だけ、なくすと怖くて、でも彼以外は嫌。恥ずかしいけれど、他の人から『触られ』そうになった事なんか思い出すと、泣きそうになるくらい嫌なのです。
だけど私を巫女として望む人達は彼が邪魔みたいだから、仲良くしてると彼に矛先が向いてしまいそうなのが、更にもっと嫌で。
それなのに彼の上目遣いで言われた台詞を改めて思い出して、一人でコロコロしてしまいます。
カーテンの隙間から空を見るともう賀川さんはそろそろ会社に行ってしまう時間ではないかと思います。でも急いだら一緒にご飯くらい食べられるかもしれない。そう思って飛び起きた所で、コロンと転げてしまいながら、かさかさ、お着替えしますよ。
覗いたらダメですよ。
「うーん」
今日のお洋服で悩みます。
どれにしようかな、今日はロングの白いペチコートに合わせて、ワンピはちょっとアンティーク風なボルドーの服。赤は似合わないかな? 目の色が際立ってしまうけど悪くない? やっぱり無難にオフ白にトーションレースのブラウス、紺のフレア。いや、濃茶でチョコケーキみたいなのも良いかな?
「うん。これでいいかな?」
白のぺチコートレースがこれなら映えそうです。
顔を洗って、髪を梳いて、ああ、ちょっと間に合わないかもしれない。
そう思ったのですが。
「おはよう」
って、食堂には彼がいました。まだ食事は半ばで、タカおじ様はもう済んだのか茶を飲んで、丁度出かける感じでした。
「おはようございます。タカおじ様は出勤で、賀川さんは今日は遅番ですか?」
「いや、用事が出来たんで休みを取ったんだよ。昨日も休みだったからアレなんだけれど……」
「用事を済ませたら早く戻れよ? おめぇはよ昨夜と言い、今朝と言い、無茶ばかり……」
タカおじ様が何かを言おうとしましたが、葉子さんがお弁当を渡して、
「あーーはいはい。タカさんは行ってらっしゃいな」
そう言って玄関先に送り出してしまいます。
「お弁当?」
「この所、タカさん持って行ってるよ。経費節約だって」
「それもあるけど、健康のためにね。賀川君も作ってあげましょうか?」
戻ってきた葉子さんの台詞に賀川さんは首を振ります。
「そんな……面倒をかけられないし、一日何食も要りませんよ?」
「え? 三食でしょ? 別に五食とか言ってないわよ? ついでだからいつでも言いなさいな」
そう言って台所に戻って行く葉子さん。
「で。どこに行くのですか? 賀川さん」
「空港にね」
「え? もしかして海外にまた?」
そう言うと賀川さんは笑顔で否定して、
「まさか。明日は仕事があるから」
「じゃ、どうして空港に?」
「アリスがね、来るんだ」
そう言ってすごく嬉しそうに笑います。ドキってしたの、何でしょう?
「メールが来てたけど気付いたのがさっきで。到着昼だって言うから迎えに行こうかと思ってね」
「えっと、アリスさんって。その、夏に……してた人ですよね?」
そう、アレは夏の暑いある日。
バス停で。確かに人通りはなかったけど公衆の面前なのにちゅーしていた人です。
「う、その言い方はどうかと思う。挨拶だからね?」
「でも、でもココは日本です。ちゅーは特別なのに」
アリスさん、綺麗なお姉様です。大人の香りのする女性。昔の賀川さんを知っている、それも彼の彼女だった人の妹。
「ユキさんもついてくる?」
「な、何で私が付いて行かないといけないんですか?」
「え? いや、無理に来てって意味じゃなかったんだけど」
「その、ですね」
何気なく誘ってくれたのに、全力で断ってしまいました……だってまたあんな風にしてるのを目の当たりにするのはとても嫌なの。それに私にキスするのは挨拶なの? ドキドキしないのかな……賀川さん、よくわかんないです。
「そう?」
賀川さんは首を傾げます。台所に居る葉子さんに向けて、
「じゃあ行ってくるよ。葉子さん、俺出るから。今日は遅くなります。空港周辺でどこか面白い所ってあるかなぁ……こないだは観光できなかったらしいからどこが良いかな?」
「わかったわ。そうねぇ、あっちの方だと港の方とか遊園地なかったかしら? 食べ物の博物館もあったんじゃない?」
「遅く?」
「ん、アリスの事だから酒も飲みたがるだろうから、車は乗って行かないし。それなりに遅くなると思うんだよ」
「賀川君、早く帰って来ないとタカさんが怒るわよ? だって貴方、足……」
「ははは、大丈夫です。たまに来た友人をもてなさない訳には、ね」
「ホントに気を付けて? あ、ユキさん、ご飯は?」
遊園地、博物館、お酒、それに遅くなるの? ……私、遊園地って行った事ないし、お酒はムリだし、何だかそれってデート? そう思ったら、食欲がなくなってきて。
「いえ、昨夜たくさん食べたので、余りお腹、空いてないです……お茶だけで」
「じゃ、そろそろ準備していくかな? ユキさん、お出かけの時は葉子さんに声をかけて出るんだよ?」
「こ、子ども扱いしないで下さい!」
つい、大き目な声が出てしまって、賀川さんが唖然としています。
こないだ攫われかけてから皆心配してくれている、それだけだってわかっているのに。何だかイライラします。
首を傾げるように手にしていたご飯を掻きこむと、賀川さんは、
「そういう訳で昼や夕飯は要らないです。葉子さん。ユキさん行って来るね」
笑って彼がそう言うのに、その手が髪を撫でてキスを額にしようとしているのに気付いてすごく恥ずかしくなって。私は勢いよく手を払って、部屋に戻ってしまいました。
だから賀川さんが、昨夜ガラスで切った足の痛みを堪えて立ち上がったのを、私は見る事はありませんでした。
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"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
清水先生夫妻の昨日結婚式の設定
清水先生夫妻、小林先生、お名前チラリ。
問題があればお知らせください。




