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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月30日

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反省会中です(子馬2)

lllllllllll

疑わしきものは排除する。

その方が楽だが。

llllllllll

 香取の小父貴はタカの小父貴の家族を殺したと言う。優しい人だが組織きょうかいでは『掃除屋』を任されるような力の持ち主であるからその程度容易い。信憑性があり過ぎるからタカの小父貴だって拳が収められなかった。ただその理由を語りはしなかった。でもいろいろと不審な動きを掴んではいたから、俺なら……いっその事と身の回から排除する。

 だがタカの小父貴は『自分の家族を殺した男でも側に置く』と言う決定を下し、俺はそれを飲んでの警護に当たる事となった。抜田の小父貴も、八雲先生も『お前の好きにしろ』と言った感じで、タカの小父貴に何も言わない。

 獅子身中の虫とならねばいい、そうならない様にしなければならない。

 俺は色々考えながら、幾つか自分が調べた事や、突き詰めた事を小父貴達に話す。

「じゃあ、今の仲介屋の篠生は宵乃宮の御神体かぐつちってヤツが入ってやがるのか?」

「推測的にはそうなります」

 俺は賀川とまこと君と言う少年が友人であった事、まこと君とかぐつちと名乗る神が契約していた事などを簡単に説明する。賀川の指が動くようになったあの『奇跡』まで語る暇はなかったが。いや、それらは彼ら二人のはなしだろうから、俺は言わないでいいのだろう。

「つまり契約内容的には賀川の安全と引き換えに、その子の亡き後の体を神が借りている。そんな話です」

「そりゃ、賀川のにそんな友達がいたとは。それにしても、神が、か。あんまりにも突飛な話だな。子馬」

「そんな事、言い出したらお前んとこのユキの存在を否定する事になるぞ。投げ槍」

 こういう世界にも詳しい抜田の小父貴はそう言って俺の話を聞いてくれた。香取の小父貴はぼんやり手元の生き物をながめていて、特に反応は示さない。

「で、子馬、森にあると言う滝の位置はわかりそうか?」

「あの森には幾つか『神域』はあるようで。でも招かれない者は入れない感じですね」

「んーーーーじゃ、ユキや賀川のは、そのなんちゃらいう神の知り合いなら入れてくれんじゃねーか? ほれ、あの水羽ってのもユキの中に居るってーなら、友達って感じで、どーだ?」

「……そんなのありですか? タカさん」

 賀川はありえないだろ、っと言わんばかりの口調で、そう言った。

 その時、八雲先生がホッと息を吐いた。

「終わったさね。透明のガラスはレントゲンに写んないんだけど、一応今度撮りに来るんだわさ。まあ、爆風でガラスが刺さったのよりは、深くはなくて幸いだったさね」

「……ありがとうございます。っと……」

 やっと包帯を巻いてもらい、寝転がる体制から普通に座ろうとして失敗している賀川を支えて、壁に寄りかからせる。タカの小父貴の膝の上、賀川が居心地が良かったとは思えない。それも足の裏を切ってピンセットで掻き回されて。身動きが取れないから仕方なく、だろう。

 だが、まるで息子が自分を頼って体を預けてくれているかのように、愛おしむタカの小父貴の柔らかな表情が印象的だった。賀川が顔を上げるとムッとした表情を作っていた事にも。先程見せた憤怒を少しでも抑えようとするのに役立って見えた。

「ああ、子馬もありがとう」

「いや。気持ちだけ出血を押さえただけだよ」

 俺はその隣に座る。八雲さんは手袋を外して処理し、消毒しながら、

「神って奴がいるならさ、やっぱり好みもあるだろうさよ。私だって面倒な奴らとは思うけど、トキや前田達の面倒を見てるんだからさ。ダメもとで連れて行ってみればいいさね」

「凄ぇ言われ様だな。おい。まあ、その仲介屋、得体が知れないからユキは出来るだけ遠慮したいが」

 タカの小父貴に言われ、駄目元で賀川を連れて行ってみるか、そう思った時、

「そう言えば不思議な夢を見たんですよ。暗い中でユキさんみたいな白い子が赤い刃物で……こう、首を切って暗い滝に落ちていくのを……その時、秋姫さんがどうだから早く来いって感じの事を言われたような…………」

「何でそんな大切な事を……」

「ゆ、ゆめだぞ? ただの夢。ユキさんに似た子でも傷つくなんて、考えたくもないし」

 夢、一般の人間にはただの夢だろうが、賀川のちょっと変わった経歴からすると、夢を夢で片付けるのは妥当ではないのだが。本人はわかっていないようだ。

「……ともかく、じゃあ今度、二人で」

「いや、待て。俺も付き合おう」

 抜田の小父貴がそう言った。






 その後も出来るだけ身辺を固め、だが彼女の自由性もありながら守ると言う、難題を並べながら、話を終えた。

「この恰好は恥ずかしい……」

「出来るだけ傷口を刺激したくないだろう?」

 俺は賀川をお姫様抱っこで部屋まで運んだ。俺的には背中に張り付かせる方が嫌だ。のこのこと階段をあがり、賀川をベッドに横たえる。

「うう、ありがとう……そこの引き出しに預かっている」

 何もない殺風景な部屋。この部屋のデスクに貼り付けてあったという刀流兄の残した手紙を見せてもらい、その後、電気を消してやる頃には、賀川は氷を頭に置きながら寝入っていた。相当疲れていたのだろう。

「俺が敵なら殺ってるぞ?」

 そう冗談で言いながら、その顔を見やる。意志の強そうな眉、閉じた瞳のまつ毛は長くはないが綺麗だ。若干顔色が悪いのは致し方ないだろう。時折見せる苦しげな表情は色気さえ感じさせる。俺にそんな気はないが、加虐心をどこか煽った。これであの我慢強さなら、良い商品だったろう。俺も自分を幸福な方だとは思わないが、かつての賀川程の苦痛とは比べ物にならない。

「残酷だな。今は巫女といられて幸せなのかな? ピアノが奏でられて少しは心が安らいでいる? どうして『普通』がやって来ないか恨んだりしないのか」

 


 眠っている男の人生、答えのない質問を思いながら、ふすまを閉め、小父貴の家を出る。

「子馬、泊まって行けばいいだろうによ。葉子さんの朝飯食っていけ」

「今はいいかな。顔見たら怒られそうだから」

「そうか。今日は悪かったな。だが何があったかはわかんないが、あいつは仲間だ。頭に血が上っちまって面倒かけたが……」

「いいえ。公安の俺の仕事は謎を探る事ではなく、巫女を守る事ですから。出過ぎた真似をして申し訳なかったです」

「これから、……頼むな」

 そう言って玄関を送り出された所、先に出ていた抜田の小父貴が車を横に付けてくれた。

 八雲先生は『もう少しだから』と言う寿々樹兄に、『お前のもう少しは二時間だろうがさ。待てないわさっ!』を半ば脅しながら運転させ、帰宅したようだ。

「送ろうか? 子馬」

「抜田の小父貴。何故『そんな事』になったか、知っているんですよね?」

「探るな、と、言われただろう? 乗るか乗らないか?」

「イイです……もう少し回りを警邏して結界でも置いて帰ります。お疲れ様です」

 俺が断ると、高級車は走り去って行った。



「僕は貴方がアヤシイと思っていたのですよぉ?」



 途端、背後から声をかけられる。そこに居たのは紺の服に十字架を揺らした神父、香取の小父貴。手には白き生き物。小さいのに、ぱっくりと欠伸をしたその口の中は恐ろしいほどの牙が並んでいた。

「おれが、あやしい?」

「ええ」

 今まで項垂れていたとは思えない小父貴の物言いと立ち居振る舞い。まるでそれは無害を装いとぐろを巻いていた毒蛇が、捕食を考えて動き出した時のように歴然と差があった。

「今まで、演技?」

「半分くらい、ですよぉ」

「じゃぁ」

「いや、嘘はついてないよ?」

 それはタカの小父貴の家族を殺した事か、巫女を守ると言った事か。俺の疑問に香取の小父貴は答えるように、

「どちらもですよぉ。私は貴方が今日、巫女を襲わせる手筈をしたと思っていたよ」

「ええ???」

「巫女を欲しがっているんでしょう?」

「……一課や研究所系がね。俺は違う」

「僕は疑ってました」

 クスリと小さく笑って、

「今日貴方が掴まえた男は、『ピースメーカー』じゃないかなぁ?」

「……」

「僕が逃がしたのは彼だけだから。彼には今回の仕事の評価が間違っている事を触れ回って、評価を正当に出来たら『殺さないでいてあげる』と約束したんですよねぇ。彼は場数だけは踏んで逃げ回ってる分、持って行く情報の鮮度は群を抜いているから信用されるし、それ故、彼を泳がせている稼業の者も多いんですよねぇ」

 俺が黙っていると、小父貴は言葉を繋いだ。

「なかなか仕事自体を取り下げさせるのは難しいですからねぇ。評価の適正化の方が楽だから。そしてその為に……僕が彼を放った事も……予測していたんじゃないかな? それで子馬君、君も彼を解放したんでしょう? 僕が任せた仕事をさせる為に」

 その通り、俺が掴まえたのは平と言う男だった。すでにズタボロになっていたから、何でかと思ったが。腕の歯形に『もしかして神父服の白い生き物にやられた?』と聞いた時に浮かべた血の引く様な形相、否定したが小父貴と接触があった事は確信していた。更に彼を絞り上げて誰と言わずとも何を命令されたかまでは聞き出し、知っていた。そして俺からも『念押し』してから開放し、評価は見る間に適正化された。

「君が情報操作したならわざわざ適正化を促す為に放った『ピースメーカー』を生かしては帰さなかったと思うんです。それとも僕をそう思わせる、そこまで見込んでの演技ならわかりませんがねぇ」

「それこそ、小父貴の方が俺を信用させる為では……それに何故、あの部屋の中でそれを言わなかったのかが疑問で……」

「君もあの時点では突っ込んでこなかったよねぇ……僕の事をどう思ってもらっても構いません。僕は僕の信じたモノの為に動いています。失策な事も……ありますが。言い訳するつもりはありませんよぉ」

「失策……」

 その意図する所が聞きたかったが、小父貴は語る事はなく。手元の生き物は俺を睨んだ。

「お互い、疑い出したらキリがないでしょう。子馬君、貴方がどう思うか知りませんが、ともかく私は貴方をただの『おんま君』の息子ではなく、『仲間』と思う事にしますよぉ」

 そう言ってポンと肩を叩くと、神父は夜闇に消えた。

 俺は小父貴の事がますますわからなくなった。


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URONA・あ・らかると(とにあ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n8162bq/

るぅるぅの基本設定

(とにあ様宅るぅるぅとは別個体、今日は小型化中)


『以下2名:悪役キャラ提供企画より』名前のみ

『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。

『平 和人』蓮城様より。


問題があればお知らせください。

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