帰宅中です(葉子と子馬とユキ)
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楽しかった結婚式からの帰宅です。
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「私は学生さんではないので、残っても良かったのですが……」
葉子さんと並んで会場を後にします。私の台詞に葉子さんが首を振ります。
「森から降りてきた時は疲れていたでしょう? ユキさん体調が上下しやすいから心配なのよ。でもこれって昔からなの?」
「ええっと。そんな事はなかったと思います。体が強い方でもありませんでしたけれど。でも……そう言えば、母と森に住むようになる前辺りから、こんな感じになって……そう、お月様が来るようになったんですよ。それできっとだと母が……」
「ああ、生理ね。遅めかしら? 中学の終わり頃よね」
「お母さんに……そう、あの時……来たって言ったら泣いてました……」
そう言えば、女の子なら来るべきものが来ない方がおかしいのに、母は何故あの時泣いたのでしょう? あんなに急いでこの森に来たの……そのタイミング? 服なんかは揃っていなかったけれど、急いでいた割に最低限必要なモノは揃えてあり、私が退屈しないようにか絵具とか、筆とかはちゃんと用意してあって。その包みが『うろな文具店』だった……母は私の絵を見て褒めてはくれたけれど、絵具なんて不案内なはずなのに。よく考えれば母のチョイスではなかったのではないでしょうか? なら、誰があれは用意したのでしょう?
「母さん。巫女様を警護に来ました」
そんな会話をしながらの帰り際、会場を離れた途端、すっごい巨体が現れてビックリしたのですが。来てくれたのは子馬さんでした。
「高馬、貴方本当に仕事なの? 海さん、見にきたんでしょう? 彼女の料理の手際は凄いわねぇ。それにしても、そんなにユキさんってアレなの?」
「うっ……こ、こないだは母さんまで狙われたの忘れた?」
「え?」
私は驚きます。聞いてないんですけれど、そんな話。
「いやぁね。警護対象の前でそんな事、不躾に言うもんじゃないわ。我が息子ながら呆れるわ。ごめんなさいね」
「警告を出すのは当然だろう? ……母さんを狙ったのはピンクの髪に瞳をした女と、左目を隠したこの女だ」
渡されたのは、写真。そこに写っていたのは仲良さそうに本を読んでいる二人の女性。とても和やかそうで、そんな『狙う』なんてしそうにないのですが。
「それから女の話を聞いて悪いんだけどね。女の巫女は子を生める状態になった方が宵乃宮では価値が高いんだ。というより、次代の巫女を取ると言う意味や、恋でその想いの力を狩る方法を使い、悲しみで巫女を埋め、良質化するのがやり方だ。幼子よりも思春期を迎えた少女が一番……」
「…………おやめなさい、高馬!」
葉子さんは強い口調で私から写真を奪い取って、子馬さんに押しつけると、
「か、母さん」
「ユキさん。本当にごめんなさいね。高馬! 貴方の仕事は警護でしょう! 心を思いやって、上手く言えないならおしゃべりは要らないわ。例えば狙われたのが貴方の大好きな海さんだったとしたら、彼女にそんな不躾な事を言うの?」
「彼女に言ったら鉄拳が先に飛ぶと思う……」
「そう。怒ったり不快に思ったりすると言う事は想像がついているようね。誰もが同じなの。誰かと相対する時は、自分の一番好きな人に対するように接しなさい。犯人らしき者の顔を見せるまではまだしも、そんな気味の悪い話はしないで。警護に来たと言うなら、ユキさんが知っていようといまいと、危険に近付く時にはその身を張りなさい! 少なくとも父さんはそうしていたわよ」
「うぅ、そこで父さん持ち出すのは卑怯だよ。母さん……」
「あのあの、良いのです。私も少し知っていた方が」
「ユキさん、もしこんな話をするにしても。今日はいけないわ。今夜の貴女は『楽しかった』と結ばなければいけない日なのよ? 小梅先生と清水先生の為に」
途端にニッコリ葉子さんは笑うと、
「今度、冴ちゃんと魚沼先生をどうにかしたいのよね? いい案ないかしら?」
「えっと、ドレスは頼めば果穂先生がこなしてくれそうですし、指輪は持っているようでしたけど」
「高馬? 貴方、ちょっとは話を聞いてなさいな。海さんはさばさばしてるけど、女の子なんだから。いずれドレスや指輪なんか要るんじゃないの?」
「ちょ、ちょっと母さん! その、海さんとは……」
「母さん、海さん好きよ。例えば貴方の子を抱いたりできないのはわかっているわ」
「え? 何でですか? 子馬さんは息子さんで、もし子供が出来たら孫……ですよね?」
私の疑問に葉子さんは微妙な笑いを浮かべます。
「土御門は今こうやって私と高馬が会っているのも、許しているわけではないのよ。もし、思いのままに孫だって抱きしめて、迷惑するのは嫁になる女性よ。もっともうちの子が嫁連れて来る日がくるかしら?」
「酷いよ、母さん」
「そんな風に思っていても、息子が好きな人が出来た時に居合わせたなら、母さん……ちょっとは応援したいのよ?」
「……ありがと」
どんなに繕っても二人の間には時間も場所も隔てた溝があるのでしょうが、親子としての眩しい絆がソコにある様で。私も少し母が恋しくなりました。お母さん、どこで何をしているのでしょうか?
「さて、まずは姪っ子、冴ちゃんの話ね?」
そう言いながら子馬さんを上手に巻き込んで楽しい話を始めたのでした。
帰り着くと確かにだいぶ疲れていたようです。お風呂に入って、もうお布団に入る事には芋虫さんのように……ううっ、虫さんは嫌いなのに。何でこんなに体が重いんだろうって思いながらお布団にコロコロ。
その時ふと、梅雨ちゃんをあやしながら、彼が覗きこんで来た、その瞳を思い出して。
「は、恥ずかしい……けど、あの後食べた冷たいのは、とても綺麗で……そう、美味しかった……し……梅原先生は綺麗だっ……た……し……」
私は布団に潜り込むと、この後の騒ぎも知らず、寝入ってしまったのでした。
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"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
清水先生夫妻の結婚式の設定
清水先生夫妻、果穂先生 梅雨ちゃん
キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
海さん
問題ありましたらお知らせください。
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結婚式は調子よく書けて毎日更新できましたが。
花粉症による体調不良と以降の進行に詰まり、
ストックは余りありません。
余り書けない土日月も挟みますので、以降の更新頻度は未定とさせて下さい。




