清水夫妻の結婚式10(会場外へ)
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鍵盤ハーモニカを弾いてみる。
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鍵盤ハーモニカも意外と楽しい。首から針金のようなラックで下げて両手で弾く。ピアノとは違って吹きながら弾くのはコツがいるが、思ったよりもいい感じの音が出た。友が願った俺の幸せがココにあるような気がする。
清水先生の教え子たちが歌う。
もしもまこと君が普通に大きくなって、俺も普通に生きられたなら、こうやって恩師に歌やピアノを捧げる時が合ったろうか? ココに居る皆が友と共に声を合わせて合唱した事。人生の中で友と過ごすという、ごく当たり前の幸せ。それががやって来ない者も居ると知っている者が何人いるだろう? いや彼らは知らなくていい、幸せだけを知っていればいい、懐かしいと振り返るその日の為に、この時を宝箱に入れていればいい。
短い、幼い日々に在りし日の友をやっと思い出しながら撫でる鍵盤ハーモニカの音は、とても軽やかで、楽しげに吹けているはずだ。彼らが頑張って森を歩いて来て、ここで声を合わせた事を思い出した時、俺の音も楽しげであるように祈りながら。
何より恩師の心に響けと美しく声を張るのが、俺の心にも溶けて。俺はまだちゃんと『感じられ』ている事に安堵する。
歌うわけでもないけれど楽しげにユキさんは白髪を揺らして。赤の瞳は森の赤を映し、その美しさを守る為なら、何も厭う事も怖がる事はないのだと。俺は生きて。彼女が俺を望んでくれるのならどんな事になっても生きているのだ、側に居たいのだとその色を胸に焼き付ける。
「喜んでもらえて良かったです。では次は『私たち』の出番ですね。リズちゃん、賀川さん、お手伝いお願いします」
「はいはーい♪ すぐセッティングするっスね」
ユキさんの声に現実に引き戻され、リズさんの声にハッとして、
「分かった」
出来るだけ、至って普通を装って用意を始める。
その後は滞りなく指示通りにベルさんからの動画を起動させ、ベルさんのお祝いのメッセージを展開。
指輪のイリュージョンとして、メッセージをカメラで拡大して見せ。何の問題もなく全てが進んでいたのに。
ベルさんから授かったと言って首から下がったネックレスが光り、ユキさんが、
「ふゅーじょーん♪」
という掛け声と共に、気配を変えた。
「変身かんりょー♪♪」
……何の話だ。
「とりあえず続行するっス! 全ては『イリュージョン』っス! 良いっスね???」
駆け寄ってきたリズさんからそう断定的に言われ、俺は頷くしかなかった。
その後のユキさんは清水先生を『わたる』と呼び捨てし、俺を『いそうろう』と呼んだ辺りで、こないだ『水羽』と名乗った者にユキさんがなっているのだと察した。
コレは精神病の一種なのだろうか? 俺にはやはり判断がつかない。
更に彼女が息を吹きかけると、何故か清水先生の結婚指輪が水晶の中に納まってしまい。イリュージョンとしてなら、その場で解かなければならないのだが、その水晶玉とネックレスを持たされた清水先生はイノシシたちに攫われ、その場を退場してしまった。
たけのこ好きなイノシシの為、秋に収穫できる四方竹のタケノコを山積みにして買収したとかしないとか。真偽のほどは定かじゃない。だが先生はユキさんが倒れた時に現れた、イノシシ達に導かれ、この後電車の出発地点に連れて行かれたと言う。
「あれ、私、何してたんでしょうか? そもそも、この格好は一体!?」
正気に戻ったユキさんがふら付いたので、俺はすかさずその体を支えて抱きしめる。変身した彼女の服装はとても……今日は妄想を止めようと思っていたのに、ついその短いスカートに手を差し入れたくなる様な姿だった。
「っと。賀川さん? 成功、したんですかねぇ? お祝い?」
「うん、イイと思うよ」
ぽんやりとそう聞くユキさんにそう答えて抱き寄せる。着ぐるみのままなので、胸に顔が当たっているけど余り気にしていない様子だった。
気にしたのはリズさんで、
「いつまでも胸に顔を埋めて、抱きついてるんじゃないっスよ。ユキちゃんを離すっスよ。それじゃエロ犬ムサシっスーーーー」
っと叫んでいたので、名残惜しかったけれど顔を上げ、ユキさんをそっと木の根もとに座らせる。そして着ぐるみを脱ぎ捨て、リズさんに投げ渡す。中は普段の服装なので問題ない。
「リズさん、抜田先生と手分けして、皆を着替えさせて。俺はユキさんをさっきタカさんが使っていたヤツを使って、森から背負って連れて行くから」
「え? イイですよ。あ、歩けます」
「ユキちゃん、言われた通りにするっス。余り消耗はしない風な話だったっスけど、もし私が付いていながら倒れたりなんかさせたらベル先輩が……」
ぶるぶるっとリズさんは身震いする。
「うんうん、その方がいいっスよ。わかったっス。道具の仕分けもやっておくっスから賀川さんはユキちゃんを見てて欲しいっス。私はユキちゃんの部屋からタオルケット取ってくるっス」
珍しく意見の一致したリズさんは、抜田先生と共に学生達を取りまとめ、森から出る準備をさせる。俺の役割だった荷物の仕分けも、リズさんが率先してやってくれた。
ユキさんは大丈夫と言ったが、やはり疲れていて、すぐに立ち上がる元気はない。そんな彼女をタオルケットで包んでそのまま背負って、森を後にする。
「余りモタモタすると夕闇もやって来るし、最後の『御馳走』を食べ損ねるっスよ!」
その一言で皆、森へ来た時の疲れを忘れた様に。道具を置いて行けて身軽なのもあり、大人数でありながら問題なく、暗闇が落ち切る前に『最後の場所』に辿り着き、先生夫婦の感動の指輪交換を皆で見守り、その後の『宴』にも参加出来た。
町に戻る間、ウトウトしていたユキさんは、その頃には体調は回復していた。
起きた時に微かに揺れた赤い目に、どうしたかと、問いかけて。『大丈夫です』と明るく笑った事に俺は安堵しながら、彼女の珍しいビビット衣装の姿や可愛らしい仕草に見入って楽しんだ。
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"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/
清水先生夫妻の結婚式の設定
清水先生夫妻
キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
空さん
(他学生さんの合唱)
悪魔で、天使ですから。inうろな町(朝陽 真夜様)
http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/
リズちゃん ベル姉様
台詞などだいたいYL様の結婚式流れに合わせていますが、
http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/121/
からまだ書かれていないラスト方向へ。
問題があればお知らせください。




