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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月30日

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269/531

清水夫妻の結婚式2

llllllll

少し時間を巻き戻して。

ユキからです。

lllllll








 とってもかわいいドレスを作ってもらいましたよ。

 皆ちょっとずつ似ていて、でも違う長さや飾り、小物を配したドレス。可愛いおそろいの衣装を着て、花嫁のお世話をするお友達をブライズメイドって呼ぶのだそうです。ちなみに男性の方はアッシャーと言うのだそうですよ。

 ドレスを縫ってくれたのは納涼会でご一緒した司先生のお友達であり、小学校の先生である果穂先生。昨日、先生達制作組はここで徹夜だったのです。私もデザインなど担当したので、『来ましょうか』と言いましたが、『社会人だけど未成年だからね』と、気を回していただきました。

 今は仮眠しているハズなのです。司先生の『着付けが終わったら撮影するから呼んでね』と言われていたので。声をかけに部屋から出て行った所、手持無沙汰そうな本日の主役を見つけます。

「渉先生、司先生の準備ができましたよ」

 ちょっと恥ずかしいけど清水先生の事を下の名で呼んでみます。二人共名字は清水になっちゃったから、その方が良いと思ったのです。

 隣にはにこやかに一人の男性が立ってます。ここの責任者で鹿島さん、病院で知り合った萌ちゃんのお兄さんです。萌ちゃんも体はだいぶ良くなって、今日は一緒にブライズメイド仲間なのですよ。

 私の白髪と赤い目にちらと驚いたようでもありましたが、その笑顔を崩す事がないのは大人の対応と言った所なのでしょうか? それとも私の容姿については萌ちゃんに聞き及んでいるのかもしれません。

 そうそう鹿島さんはモールのお仕事を回してくれたので、挨拶したいのですが、今日はそういう日じゃないのでそれについてはまた今度にしようと思います。確か来月辺りに打ち合わせの予約が入っていたハズ……

 そんな事を考えながら私が一礼すると、渉先生が笑い、鹿島さんはスッと頭を下げます。

「ユキちゃん、ありがとう。ブライズメイド用のそのドレスすごく似合ってるね。きっと賀川さんもイチコロだよ」

「な、何を! 賀川さん今日はピアノ演奏ですし、邪魔しちゃ悪いから……」

 賀川さん、昨日の朝にピアノは断るって言っていたのです。けれど司先生の着付けを手伝っている時に聞いたら『何も聞いてないぞ?』っと。





 だいたい昨日も帰りが遅いし、朝起きたらもういないし。一体どこに行ったんでしょう? 葉子さんに聞いても『さぁねぇ。我が甥っ子ながら彼はわかんないわねぇ』と笑うだけです。

「誰が甥っ子?」

 その時、お腹に負担のならないように極力軽いパニエを仕込みながら司先生が尋ねてましたよ。

「私と賀川君よ。辿ってみたら私の母と、あの子の母、姉妹だったのよ。ウチの息子が調べ……」

「ええっ! 葉子さん、息子さん居たんですっ?」

「そうなのよ。もう二十歳の」

「誰との? たたた、タカさんと?」

「やーねぇー、小梅先生。私にも連れ合いが居たってこないだ言ったでしょう? 先に逝った事以外は、清水先生よりもイイ男だったと思うのよ。あ、容姿は鬼みたいな厳つい人だったけど。笑うとねぇ優しいのよねぇ~」

「ああ、天国の『最愛』、ですか。渉と私もそう言える仲になるんでしょうか?」

「なるんじゃなくて、もうなってる、でしょ? この子達がその証明」

 着付けを手伝っていたその手が、そっと司先生のお腹に触れると、ニコニコしてました。

 その隣で高校の先生と言う田中先生と、もう一人綺麗な女性がほうっと溜息をついてます。二人共私と同じ、ブライズメイド服なので、仲良しさんなのでしょう。今日は初めて会うヒトが多いので、全員はとても覚えられていません。

「……最愛」

「私と澄君の……」

「田中先生はおもちゃ屋の次男だったわねぇ。あの子ならいずれ決めてくれるわよ。年下だから大人に見られたい故の『カッコつけ』もあるだろうから時間はかかりそうだけれど。秋原さんは意中の殿方はどう? 仕事柄その先はケジメが大変そうねぇ……さぁさ、ユキさん髪飾りの用意を。萌ちゃん、ブーケを受け取りに秋原さんとお願いよ」

「はぁい、萌、行ってきます! 秋原さん行きましょう」

「ああ、ええ」

 葉子さんは司先生の着付けにつきっきりですよ。葉子さんはブライズメイドの私達に上手に指示を出して使ってます。なので今日はメイド長なんて呼ばれてました。シンプルなフォーマルにコサージュと言うのもなんだかそれっぽい気がします……







 ……なんて、そんな事を考えていたら、それを見てる渉先生がニヤニヤしてますよ。別に賀川さんの事を思い出していたんじゃないんですよぉ? わたわたしながら、

「えっと、じゃあ、果穂先生をそろそろ起こしてきますね」

「ああ、ドレス関連で徹夜作業だったみたいだし、別室で倒れ込んでたんだよな。拓人先生が側に付いてくれてるはずだから、声をあげればそれで大丈夫だと思うよ」

「分かりました」

 ヘロヘロ~っと呼びに行ったら、果穂先生は今まで寝ていたとは思えないスピードで着替えを済ませ、

「撮影よ~お色直しよ~決戦よ! さ、果菜、美果、行くわよ! 双子ちゃんも着替え終わったかしら」

「いくぅ~けっせん~」

「くるみちゃん、みるくちゃん、きれいだったよママ」

「そ、それは写真に収めに行かなきゃ。あ、秋原さんもまだ撮ってないわ」

「確かその方は、さっき萌ちゃんとブーケを取りに……」

「じゃ、そっちから突撃ぃ~」

 っと、慌ただしく出て行き、残された男性がやんわり笑います。果穂先生の旦那様である拓人先生は今日の司会だそうです。

「小林先生、打ち合わせに会場係が呼んでいます。ここも控えで押さえましたからそのまま使ってもらっていいですよと、関係者には伝えてくれていいですよ。くれぐれも貴重品はお手持ちかフロントに」

「あ、ありがとうございます」

 入ってきた鹿島さんの言葉に、ぺコリと頭を下げて拓人先生が出て行きます。

「さて、それから遅れていたグラスの手配の確認と。賀川君に後二十分後には声をかけた方が良いですね。シェフの方に厨房で不備がないかを聞い……」

 鹿島さんがぶつぶつとスケジュール確認をしている中に、賀川さんの名が出てきたので尋ねてみます。

「あの、賀川さんどこかに来ていますか?」

「ん? ああ、彼はホールでピアノを使っているよ。彼、一体何者です? うちのホールのピアニストより良い音を出すんですよ。ちょっと驚きました」

 私は少し考えてから、

「……昔、習っていたんだって聞きました。でもこの頃まであまり弾けなかったとか。じゃ、ホールに行ってみます」

 会場となるホールはもう支度が整っていて。今日のお祝いに来た人達の待合まで音が響いています。丁度いいゆったりした曲なので、誰もがBGMと思ってきっと気にも留めていませんが、和やかな雰囲気作りに一役買っているようです。

 チラッとその姿を盗み見ます。まだ着替えもしていなくて、普段着のままの彼がピアノと遊んでいる様に見えました。その姿は何だか邪魔してはいけない気がして。

 弾けないと言ったその手が奏でる音があまりに美しくて、輝いて見えます。



 ふわりふわりと綿毛が舞い散る様に優しい音。



 賀川さんが鹿島さんに呼ばれて、着替えに行くまでその姿を私はこっそり眺めていたのでした。

llllllllll

"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生夫妻の結婚式の設定

鹿島さん、清水先生夫妻、小林先生家族、萌ちゃん、田中先生、高原直澄さん



『うろな町』発展記録(シュウ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6456bq/

秋原さん


くるみるく(パッセロ@大学受験突入様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9319bq/

くるみちゃん、みるくちゃん


うろな町、六等星のビストロ(綺羅ケンイチ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7017bq/

葛西拓也シェフ


お借りしております。

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