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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月28日

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259/531

デート? 中です?(海さんと子馬)

llllllllll

元気のいい声がする。

llllllllll

 






「子馬って弟妹居たんだぁ~何人?」

「海さんより多いよ?」

「え? 五人より?」

「そうだなぁ、五十はくだらないんじゃないかな?」

「何、ヘタな冗談……って、ここって……」

 そこは『ようごの やどり木 洞南園』と書かれていた。南うろな駅から歩いて少しの距離にある、その建物を見て意味が分かったらしい。



『じゃあ、そのうちの一人が宵乃宮 秋姫。ユキの母親と、葉子さんの母親が一緒に居たのは掴んでいる。こないだ『洞南園』の面会者名簿に、静子って名前と、アキヒメさんの小せぇ時の字が残っていたのを見た』



 タカの小父貴が俺の母さんに言った言葉。海さんはそれを思い出したのか、

「確か洞南園って、身よりのない子供が……」

「そう、母さんここに居たから。ここの子供は全員、俺と母さんの弟妹だと思ってる。血の繋がった兄弟は居ないよ」

 そう言いながら俺が入って、職員室に入る前には園のグランドの方から子供達が駆けて来た。

「久しぶり、子馬兄ちゃん」

「こんにちわ。ごめんね、今日は先生と約束があるんだ。そのかわり良いヒト連れて来たんだよ。海さん。かわいいだろ? でもスポーツも出来る女性だ。足早いよ?」

「え、こ、子馬っ!」

「と言うわけで、俺は仕事。皆を任せるからよろしくね」

 そう言って部屋に入るまでに十人近く寄り集まった子供達に海さんは手を引かれる。俺の紹介だからもあってか、子供の食いつきは良い。だいたいココの子は明るい子が多い、施設長の想いが行き届いているし、うろなはボランティアの数も多いから。それでも悲しい事を胸に収めて笑っている子達だ。

「子馬兄ちゃんのお友達らしい、アミさんって言うらしいぞ?」

「遊ぼう、キャッチボールがいいな!」

「え、サッカーだろ?」

「お砂場でままごとだよぅ、あみちゃんは女の子だもん」

「でも足早いらしいぞ。で、アミ姉ちゃんは子馬兄ちゃんの彼女?」

「ち、ち、ち、ちっげーよっ、ただの友達だ、と、も、だ、ちっ!」

 そんなにきっぱり言われると悲しいけれど。

 たくさんの小さな手に引かれていく海さんはヤケクソなのか、それとも子供に囲まれてテンションが上がったのか、

「よっしゃーぁ! まずはサッカーだ!」

 などと叫んでいた。それを背に部屋の扉を閉める。

「高馬君、いらっしゃい。そこのボランティア名簿に名前を書いてね」

「こんにちわ、施設長。今日は頼んでいた件を……」

「ええ、ええ、誠君の事だったわね」

 自分の分と海さんの分を書いた後に、ソファーにそっと座る。それでも凄くしなったのを見て、施設長が笑う。

「初め葉子ちゃんが連れて来た時は豆みたいだったのに……」

 昔話が始まると長いので、ある程度で切って俺は『誠君』の写真をもらった。三歳くらいの、小さい感じの少年。

「園田 誠、引き取られて篠生 誠って名になったの」

 そう、俺の子馬とか、寿々樹兄とか……名前と言うのはやはり聞いた時に『アレ?』っと思わせる音の組み合わせがある。俺の子馬という音も由来を聞かねば何故と言う名だし、苗字と名前が一緒の発音というのも不自然だ。

 しのぶ まこと、も、どちらも名前に聞こえる為、不自然さがあった。そのだ まこと、の方が自然なのだ。だから俺は苗字が変わったのではないかという想定で調べに入ったのだ。まさか短い間で時期は違っていたとは言え、母の暮らした施設に居た者とは思わなかったが。

「彼、確か……貴方が産まれたくらいに亡くなったはずだけど」

「亡くなった……」

「ええ。引き取り先のお母様もお父様も良い人でね、短い間でも一緒に居られて嬉しかったって。あの子は天使、本当の天使だったんだって笑っておられたのよ」

「そう、ですか」

 俺はその後、幾つか話を聞いて部屋を出る。



「そっれーぇ! いっけぇー」

 子供達の声に紛れて海さんの声が飛ぶ。サッカーは終わったのか、沢山の軟球のボールをノックで子供達に拾わせている。大きい子達はそれに参加したり、近くでキャッチボールをしたりしていた。

 野球に興味のない子はブランコや缶蹴り、お砂場でままごとしている子がいる。

「入れて! あ、ごめ……」

 俺がままごとの中に入ると、そこに居た女の子の一人がきゃぁ! と言って飛び上がった。まだ面識のない子だった。巨大で厳つい男がちっちゃなプラスチックスコップを握って笑っているって、シュールだったかもしれない。

「子馬お兄ちゃんは借金取りのオジちゃんじゃないから怖がらなくて大丈夫だよ?」

「お兄ちゃんは遊んでくれる人だよ」

 他の子のフォローで、すぐに慣れて、『お父さん』役で『家』に招かれる。これで子供達は、心置きなくお父さんと俺を呼んで甘える。お父さんが苦手な子にはお兄さんになり、優しく撫でて笑うとホッとした顔をしてくれる。


『遊んでくれて、抱っこしてくれて、そんな大人の手を求めて。一瞬だけでも、特別に愛されている記憶が欲しいと思った。幼い貴方こうまにそうしてあげられなかったのが悲しいわ』と静かに笑う母を想う。


 そうして考え事に耽りつつ、砂でプリンを作っていた。砂がうまく掬えなくて笑われる。その時、何かがこちらに飛んでくるのに気付く。それに海さんも気付いたようだが、彼女からは遠すぎた。

「子供がっ!? こ、子馬っ! どうにかっ……!」

 海さんが遊んでくれて、とてもテンションが上がった子供のうちの一人が、全力で球を投げ、それがキャッチ側の子をスリ抜け、砂場にバウンドなしで飛び込んだのだ。それも硬球だった。

 子供と言っても小学生も最上級生になれば凄い力。当たり所が悪ければ小さい子なら……

 俺は手で受け止めようとしたが、今は『無理だ』と判断し、サッカーボールを胸で受ける様にトラップする。ボクッと右肩にボールが当たる嫌な感触。

 いつの間にか海さんが駆け寄ってきて、側に居て、声をかけてくれる。

「だ、大丈夫か?」

「まあ、大丈夫。俺の体は丈夫だから」

 骨にヒビが入った程度、数時間で治るから。ニッコリ笑うと、

「ナイス、子馬! お前の大きい体が役にたったな」

 そう言いながら、俺の右腕にポンと触れる。そうしながらボールが飛び込んだこと同様に、海さんのすっごい足の速さに驚きを隠せない子供達にギロッと眼光を飛ばす。

「だぁーれぇーだぁーーーーっっ!? 硬球は使うなって、先に言っといただろっ!」

 そう言って投げた子を捕まえると、昏々と説教し出す海さん。職員もその様子を見て、

「良い娘ですね。うちの職員に欲しいわ。で、冷やしますか?」

 っと、言い、近くに居た子供が、

「大丈夫。私がお手当てしましょう!」

 そう言って大き目の赤い桜の葉っぱをしゃがんだ俺の肩に宛がってくれる。

「ありがとう」

 目で職員に氷を断っていると、子供達の歓喜に混じって悲鳴が上がる。説教を終えた海さんが鬼ごっこを始めたらしい。俺は子供達の砂のご飯を頂きながら、走り回って居る海さんを見て、何だかとてもうれしかった。




lllllllllll

子馬は楽しい模様。

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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん。


お借りしてます。問題あればお知らせください。

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