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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月26日

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257/531

交渉中です(謎の配達人)

lllllllllllllll

体……デカいな、この男。

lllllllllllllll

 









「それにしてもストーカーとは心外だよぉ。この浜の者でARIKAの娘と聞いて知らない者はいなかったし。ああ、お店のあった夏に来ればよかったと何度後悔したか」

 そう言って悩む姿は恋する男子だろうが、そのデカい体躯で唸られると威圧感があるな、そう思いながら従兄弟を眺める。高馬と書いて子馬なんて発音に何故したかわからないけれど、葉子さんもこうなると思ってつけた訳じゃなかっただろうなと考えた。

「やっぱ、聞き込みしたんかよ、子馬おまえ……かいの事本気なのかぁ?」

 レディフィルドは人の悪そうな顔でにやりと笑っていた。子馬は気付かず軽く頭を振り、

「ああ。少しでも俺の事を気にしてくれていると良いなぁと思ってるんだけど……今日はあみさんいないのか、残念だよぉ」

「海お姉ちゃんならホテルに居るよ?」

「こないだ送って行った時に見たけど、素晴らしいホテルのようだったなぁ。やっぱりあんなところに住めると良いだろうって思うよ。カプセルホテルは俺には狭い」

「ええ?! それって入れるの?」

 この巨体が入っている部屋カプセル自体やその上下の人が可哀想すぎる気がするのは気のせいだろうか? きっとギシギシ言って。だいたい汐ちゃんの言ってるように、『カプセル』に入り切っていないのじゃないだろうか?

 子馬はにっこり笑って『ちょっとはみ出てるかな』とか笑っているけれど、それはとても『ちょっと』とは思えなかった。

「カプセルなんか、何で。公務員ならもっと良い所に……」

「それなんか良い方。路上に段ボールって日もあるんだ。体が伸ばせる点ではそっちが良いけれど」

 俺が突っ込むと子馬は答える。レディフィルドも面白がってか、質問する。

「普段は何やってるんだぁ? 子馬は?」 

「今は……日雇い労働者に紛れている。路上で寝るなんて普通だよ。そう言う所で不自由している『ヒト』に声をかけてる。そう言う自由を気に入ってる『ヒト』も多いけれども。あんまり口外はしないでくれ、紛れる事に意味があるからさ。とにかくこれで賀川は音から身を守れるようでよかったよ」

「ん? 一応は良いけどなぁ」

 俺は再び砂利を噛んだような色を見て、態勢を整えたが、機械ニセモノホンモノ、やはりスピードと質が違う。レディフィルドの笛の音に、クッと心臓が絞られるような痛みを覚えて、顔を歪める。だが何とかそれだけに収められた。

「ま〜ぁ。ここからしっかり、身に付けてくんだな。カガワッ。間違いなく、タイミングはもう掴めてる。だがまだ、一回の防音でか〜なり体力使うみてぇだから、体調には気ぃつけろよ〜?」

「だからもう疲れていたあの日は一度しか成功せず、今日も体調が戻った途端に出来たって事だよな……?」

 慌てたようにレディフィルドの笛で飛び戻ってくる鳥の数の多さに俺達は目を見張る。彼はその鳥を追い払うような音を奏でた後、笛から口を離し、

「基本はな? でも、それだけじゃねぇ~だろ? 子馬ぁ~???」

 急にレディフィルドがニタっと笑い、子馬は溜息をついて、頭をガリガリと掻いた。

「寿々樹兄に仕込んでもらったんだけど、まさか君が気付くとは思わなかったよ」

「な?」

「正確にゃ、俺様じゃあなくルドとラザが、教えてくれたんだがな?」

 俺は折れた左腕の包帯が解かれており、入れていた副木そえぎがレディフィルドの手にあるのに気付く。所々焦げたソレを見せながら、

「おっ前、コイツ仕込まれてたんに、気ぃ付かなかったのかぁ?」

「……徐々に気力を奪って行くくらいしか出来ないんだけれども、『呪い』の御札を巻いておいたんだよ。見破られたんで焼けちゃったけどね」

「おま……それも寿々樹兄って……」

「俺、五歳までは裾野の家が俺の自宅だったんだ。八雲先生もその親戚の寿々樹兄も、賀川以上に知り合いに決まってるだろう?」

 添え木に何か仕掛けがされていたらしい。

 怪我の治療は殆ど終わっているが、リハビリの為に通っている八雲医院。包帯を替える看護師である鈴木なら、いつでも俺にそいつを仕込む事が出来ただろう。リーゼントの悪辣な表情の男がにんやり笑うのを思い浮かべる。

「こんな事をやるのは最初で最後だけど、思ったよりテキメンだったなぁ。この系統の守りは俺かやっぱり香取の小父貴だね」

 俺はやられた、と、頭を抱えた。呪いなんて信じたくもないが、実際あれほど滅入ったのは何か不自然な物を今なら感じられる。

 俺は今から相手にする敵が、自分の常識ではない何かを仕掛けてくる可能性を悟った。それも子馬の体格から、ただの体力馬鹿かと思ったが変わった攻撃にも長けているのを知る。

「やあっと、イ〜イ顔になりやがったなぁ、カガワぁ〜? ま、俺っ様のおかげだぁなぁ〜♪」

 そう言ってレディフィルドが俺の肩を叩く。

「っ……ってぇーよ! レディフィルド!」

 叩いたのが負傷している左なので俺が咆え、揺れたらしくドリーシャがグルグルと文句を言っている。だがヤツは笑っているだけ、その傍らで汐ちゃんは俺達を見守る様に微笑む。

 俺はそれを見ながら息を吐き、ドリーシャに小さな声で礼を言った。まるで本当に伝わっているかのようなタイミングで、くるると嬉しそうな声が返ってくるのに笑う。

 そうしながら子馬に宣言する。

「音に対する耐性はどうにか上げて行く。その点は問題ない。左の負傷も何かを殴るくらいには問題ない。だから子馬、このうろなで、頼む。そしてユキさんを守る時は協力してほしい。それも今回お前が仕掛けたような『根拠のない攻撃』は俺達じゃ防げない、ユキさんにそんな攻撃が向かない様に、ぜひとも、頼む」

 俺では対処できない攻撃に対応できる人材とみて、俺は頭を下げた。

「そんなに深々頭下げなくても、巫女の警護それは一応任務には入っているし、水羽様からお声もいただいたし……俺的にはうろなに居られれば良いんだよ、うん」

「そうだな、ココには海さんもいるから。ユキさんが居れば、うろなに来る理由になるんだろ?」

 俺は顔を上げるとすかさず突っ込む。子馬が少し顔を赤くしたのを俺は見て確信する。

「ね、汐ちゃん。電話で頼んだ物、くれる?」

 俺はしゃがんで、汐ちゃんの目線に合わせる。

 実は少し前に彼女に『ある事』を頼んでいたのだ。

「これ?」

 彼女はポシェットから封筒を取り出す。彼女らしい、可愛いピンクのソレをちょっと戸惑いながら差し出す。彼女が夏の日に『お願い事を聞いてあげる』と言ってくれた、その言葉を行使したのだ。

「えーっとぉ、確かにね、汐、お願い事聞くって言ったけど。これでユキお姉ちゃんの為になるの?」

「うん。ありがとうね。ほい、子馬!」

 俺はそれを受け取ると、子馬にそのまま渡した。不可思議そうな顔をする。その手は意外に器用にそれから中身を取り出すと、その柔和な笑顔が固まった。

 中身の一枚をレディフィルドは子馬の手から素早く抜き取って、

「これ、海の……」

「賀川のお兄ちゃんに、海お姉ちゃんらしいの選んで、って言われたから……」

 汐ちゃんに貰ったのは、海さんの写真だった。

 特別色っぽいと言う事はないが、それだけに健康的な海さんの笑みや家族にしか見せない表情が溢れている。チラリと見えたその写真、流石妹だ。海さんらしいその可愛さが滲み出ているスナップを選んでいる。

 ヘタに色気がないそれは、女には慣れない感じの子馬にはドストライクなチョイスだ。

「それ、あげるから。ユキさんの事、頼むな子馬」

「ああ、……うん」

 ポンと肩を叩く。だが写真にポーっと見入って聞いてないな、後からもう一度、しっかり突っ込んでおこうと思う。

 警察、そして土御門と言う裏があるので、どこまでかはわからないが、これで子馬はある程度、取りこめたはずだ。試しとは言えヘンな攻撃で先手を打ってくるほど頭を利かせて来るとは思わなかったが、味方になってくれればコレほど心強い者はないと思ったが故の賄賂しゃしんだ。

 それもユキさんを基本守る味方はタカさん関係で皆年齢が高い。やはり近い年齢の仲間となりそうな子馬は取りこんでおくべきだろう。こいつ伝いで鈴木も動いてくれそうだ。

 そう目論む俺の背後で、レディフィルドが悪戯に笑って、

「ま、これで俺様が鍛えてやった訓練は、終わったとみて良いと思うが……おめぇ、忘れてねぇよなぁ?」

「あ? ……ああ」

 俺はこの訓練に付き合ってもらう時、レディフィルドに『……タダで教えて貰えるたぁ、思ってねーよなぁ? カガワぁ?』と、言われていたのを思い出し、彼の言葉を待った。





lllllllll


レディフィルド君が請求したのは? ……12月に!

お楽しみに。


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

レディフィルド君、汐ちゃん、ルド君 海さん、ドリーシャ(ラザ)


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』

『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。



お借りしてます。問題あればお知らせください。

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