お話中です(謎の配達人)
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波の音を聞きながら。
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「俺が死ぬ事で、ユキさんの力が大きくなって、その力が悪用されかねない。だから俺は殺される隙が出来ない様に、弱点である音を克服しろって話。左の故障もバレてるし、期限までに音を何とか出来ないなら掴まえる。そう言う感じだと言えばわかるか?」
一から宵乃宮やら何やらを話していくのは大変だったので、とりあえず今論点になっている部分だけをレディフィルドに話す。汐ちゃんはわからないようだったが、俺にとって余り良い決定ではないとは判断している様子だった。
「やっぱ、あの白いねーちゃん、ちょっと変わってたんだな。何で賀川(お前)が死ぬのがねーちゃんのパワーアップに繋がるのかは、わっかんねーけど」
レディフィルドは笛をポンポン手で軽く叩きながら呟く。
「けど克服までの期限が今日って……何でもっと早く言わなかったんだよっ!」
「そのつもりだったけれど、ツールのソレで吐き気を感じて、それが元に戻るまでと思っていたらズルズル……」
「お、おめぇはどこまで要領が悪ィんだ!」
「すまない」
どうしてだろう、あの話の後からガタガタと調子を崩した。
たぶん一度拘束されれば、なかなか出してもらえないと俺は思う。きっとお役所仕事だから。
研究対象とされる事もあるだろう。
ただ確実に守られるのを望むなら、おススメすると子馬は付け加えていた。
「警察は悪い人を捕まえるのがお仕事なのに、良いヒトを捕まえちゃうの?」
「どうしてもの時は隠れる方が良い時もあるんだよ。宝石を金庫に入れるようにね。ユキさんを匿ってくれるって話。その前に俺って事……」
汐ちゃんには言えなかったが。
子馬の居る二課より一課に目を付けられると、このような打診なく強制収容になるらしい。
一課に掴まった者の末路については、子馬は聞いても何も言わなかった。
ただその話の後、『死なないように気をつけろ』と、最後に言われた子馬の台詞は、俺が死んで『人柱』とユキさんが認められれば、彼女が一課の対象となる事を指すのだろう。
……ユキさんの母、秋姫さんは刀流さんを失った時点で『人柱』であって、彼らからも逃げていたのかも知れないなど思った。
俺は『ホテル〈ブルー・スカイ〉の屋上』で、『お前が持つ笛の音を克服する事が出来れば、俺はもっと、強くなれると思うんだ』そうレディフィルドに言って、耳を鍛えて貰い始めた初日をチラと思い返す。
「子馬が言う通り、このままだとどこかでそう言う『攻撃』を受ける日は近いだろう。今だと本当に俺、戦う間もなく……やられる。お前の音を『克服すれば強くなれる』かもしれない、それだけで訓練を決めたのに、まさか、こんな急務になるなんて」
「カガワ、どうすんだぁ。まさか……」
「まぁ、早く戻って来れるように頑張るさ」
完成に近づいたかと思った音への遮断判断が全くできなくなったばかりか、先程の様に死にかけていてはもう訓練もあったもんじゃない。
まるで気力が湧かないのは何故なのか。
「やだ、賀川のお兄ちゃん、行っちゃうの?」
「もう時間無いんだ。俺が死んで、ユキさんにまで何かあったら困るから」
「諦めんのかよ! 今まで散々、苦しい音に耐えてきたんだろうがっ!」
レディフィルドの叱咤が飛ぶ。だが俺は顔を伏せてしまった。
「お前っ! そのツラ上げろっ、らしくねぇっ! らしくねぇだろ? カガワぁ!」
先月の末、今月の頭と、汐ちゃんを奪還せんが為に戦った。あの時の様な思いも力も湧かない。左手も自由には動かないまま。
「……らしくないのはレディフィルドの方だろ?」
俺の気のない返事にチッっとレディフィルドは舌打ちをした。俺の上げた僅かな視界に、白髪に蒼き目が美しい男が、笛を構えるのが目に入った。
「この阿呆がっ。そんなアホなら今ここで俺がっ!!!!!」
「待って、今、吹いたらお兄ちゃん死んじゃうっ!」
汐ちゃんの制止の声に重なって、肩の鳥が大きく羽ばたく。
その時、レディフィルドの音がまるで天使の歌声の様に聞こえた。
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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)
http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/
レディフィルド君、汐ちゃん、ルド君
お借りしてます。問題あればお知らせください。




