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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
6月28日

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遭遇中です


久しぶりの森だーーー

 





 タカおじ様のところでお世話になって数日。

 余り一人で出歩かないようにとは言われてますけど、森に来ています。夕方には戻る約束ですけれど。



 楽しく散歩して、そろそろお茶でも飲んでから町に帰るつもりでしたら、小屋の周りに誰かいます。

 こんな森の奥に入って来る人は少ないのですが、その方は、

「ツチノコを見ていないかい? 後、山菜の採れる所も知りたい」

 そう言ったので、ツチノコさんは見ていないけど、山菜は知っていたので教えると、券をくれたのです。

「あ、割引券じゃなくて、無料券だ」

 私はいただいた券を眺めて、どうしようかと思います。



 券をくれた方は、三十代くらいでしょうか? いや、見た目より少し年が行っていた気がしますが、とても鍛えられた体をしていました。

 タカおじ様みたいに隠した感じではなく、鍛えられている事をアピールするかのような美しい筋肉でした。

「デッサンしたら楽しかったかな? でも「ツチノコ」さんって何だろう?」

 券には『とうどう整体院』と書いてあり、整体師……たぶん施術してくれる先生の名前が二人あります。

「藤堂……星野……雨……いや、雪……星降る中に藤、かな? 藤の季節に雪はないけれど。でも星は何だかとっても寂しそう」

 さっき見た男性の体から見えた影と共に、頭の中で色が混じっていきます。

 小屋にはまだキャンパスがあったはず、絵が描きたいと思いました。



「でも、もうそろそろ。オジサマの家に戻らないとかしら?」



 バス代入れにと、タカおじ様がくれた赤い財布にいただいた券を入れとく。いつか使うかもしれません。

 そろそろ良い時間です。

 暗くなったらクマさんやイノシシさんも出ます。今日は日が暮れるまでに家に戻ると約束していますので、後ろ髪を引かれながらも森を出る方向に足を向けます。



 とことこ、ふぁんふぁん。



 賀川さんが買ってくれたワンピを揺らしながら歩いていると、何だか二人、人影みえました。

 何だか楽しそうに歩いてますけど。

 どなたでしょうか?

 きょろきょろしてますから、何か落してしまったのか。あ、もしかしたら「ツチノコ」さんを探しているのかもしれません。それにしても……

「白い髪……」

 たまに染めた人を見ますが、こうやって地毛の人は外国人くらいしかいないのですが。私の白より濃い白です。男の子みたいなので、毛が少し太いのかもしれません。



 仲間だーーーー



 木に半分隠れるようにジッッと見ていたら、じゃれるように歩いていた二人の動きが変わりました。

「あ、気付いたのかな?」

 私はそっと近寄って行きます。



「あの……何をお探しなんでしょう? よろしければ、手伝いましょうか?」



  少し年下だと思います、とても美しい顔立ちをした少女が小鳥のように首をかしげるのです。


  「貴女、幽霊じゃないの?」

  「幽霊? いえ、人間ですよ……たぶん」


 いや、その男の子でしょ? 幽霊と言うなら。きっと。

 でも私を疑っているみたいで、彼女は額にぺたんって紙を貼るのです。

 うーん。同い年くらいなら剥がして貼り返しちゃうんだけどな。

 綺麗な図形が書かれた紙切れをちょっと目を寄せながら眺めます。


  「えっと、これは……なんですか?」

  「……本当に、人間みたいだね」


 その後、頭を下げられました。

「幽霊と間違えて、ごめんなさい―――ほら、稲荷山君も謝って!!」

 なんか、白髪の男の子、痛そうです。

 彼女は芦屋梨桜ちゃん、彼は稲荷山君と言って、うろな中学の二年生だと、そして幽霊を滅しに来たのだと言いました。

 これが世にいう、本物の厨二病でしょうか?


 

 で、いくらか話しましたが、凄くいい子達のようです。病気とか言ってすみません、それも私の方がまだ病気でした。すみません。

 芦屋さんは「おんみょうじ」らしいです。「幽霊」や「妖怪」をさがしているそうですので、いつか見付けたら教えてあげようと思います。

 だって芦屋さんは見も知らない私に「幽霊がいたら、襲われちゃう」って言って、家に貼る様にと紙切れをくれるのです。

 ただ、これ触って大丈夫でしょうか? 何だかパリパリしますけど。



 また来ますね、そう言い残しながら、二人は帰って行きます。

 木々の合間から覗き視える空は、蜜色から藍色へと変わり始めていました。

 手を振り振りして見送ります。


 二人を見送ったら、猛烈に絵がかきたくなりました。

 タカおじ様の家には、まだキャンバスも絵具も揃っていないのです。


 チョコレート色の建物がまた見えてきた時、もうそこらは真っ暗でした。

 電話を入れたのですが、話し中だったので、

「後からかけよう」

 そう言って私は家にお札を貼ってから、イーゼルにキャンバスを立てて、絵を描き始めました。

 時間を忘れて。




綺羅ケンイチ様 『うろなの雪の里』より、『とうどう整体院』の藤堂さん、名前を星野さん、お借りいたしました。チケットにお名前が書いてある事にしましたが、もし問題があれば書き直しますので、言って下さい。




寺町 朱穂 様 『人間どもに不幸を!』より稲荷山君と芦屋梨桜ちゃんお借りいたしました。

酷い事をユキが言ってますが、ビックリしただけです。問題があれば書き直しますので、言って下さい。



おいでいただき有難うございました。

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