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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月19日

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247/531

昔話中です

lllllll

そしてふわふわ帰りました。

lllllll

 





 ゆっくり歩いて散歩しながら帰宅したので、家に戻ると夕方になっていました。二人は自宅まで送り届けてくれて、そのままタカおじ様の家には寄らず、どこかに行ってしまいます。喧嘩……していないと良いのですが。

「ユキさん、食事は?」

「お昼パンをたくさん食べたので、少なめで」

 出されたかぼちゃの煮つけやひじきを少しの白いご飯と頂きます。そうしているとタカおじ様やお兄様、そして賀川さんも戻りました。お茶を配ってから自分の席に戻ると視線を感じてふと見ます。

「賀川さん?」

 私が気付いた途端に目線を避け、あまり食事に手を付けずに部屋に戻ろうとしていました。葉子さんに、

「あら、あまり食べてないわね、顔色も余り良くないわ。昨日も……」

 そう言われていました。そう、昨日、公園で子馬さんを降ろすのを見かけたのが夕方……でも帰って来たのは私が知らない程遅くで。一体どこで何をしていたのでしょう。賀川さんは目を泳がせたまま。

「大丈夫です……」

「賀川さん、気分悪いのですか? ダメですよ。ちゃんと寝ないと」

「ちゃんと寝ているし、今晩も早く寝るよ。そんな顔しないで、ユキさん」

 口を軽く押さえながら、さっさと引き上げる彼の後姿を見送ります。

「何だか、心配ね。ホントに波のある子だわ……それにしても賀川君が甥っ子だったなんて不思議だわ。夏の頃から一緒に居たのに、気付かないものね」

 子馬さんが、葉子さんの『姉』が賀川さんの『お母様』だったと言った話に触れ、溜息をつくようにそう口にします。そうやって言われてみれば、賀川さんと葉子さんの顔立ちが似ている気がするから、不思議なモノです。子馬さんより賀川さんの方が似ている気がする程です。っていうか、子馬さん、ぱっと見は葉子さんに本当に似ていませんけど、おんまさんに似ているのでしょうか?

「もう少し早く知っていれば……うろなに居たらしいの。彼の母、私の姉ね……高馬以外に血縁なんかいないって思っていたのに。冴ちゃんが居た時に、ああ、娘が居たならって思って『お母さん』なんて呼ばせていたけれど、本当に姪っ子だったなんて」

 今度、聖子さんのお墓参りに行く時に、場所を聞いてそちらのお墓にも行ってみようかしら、などと葉子さんは呟いています。聖子さんと言うのは同級生の方で、おんまさんが亡くなったのとそう変わらない頃に、事件に巻き込まれて亡くなったそうです。

「おんまさんのお墓には行かないのですか?」

「ふふ、あの人が行ってきますって、ココの玄関を出て行って、私は遺体も見てないの。土御門の人には、お墓なんてないんですって。今は高馬が立ちまわってそんな事はなくて、髪の毛と骨の一部くらいは戻ってくるのだそうだけれど。お葬式なんかあったのかしら?」

「……あん時、そんな事になるって知ってりゃ、早く車に乗せて連れ帰ればよかった。せめて、せめて髪の毛の一本でも抜いて、ココに連れて帰って来てやりたかったなぁ、おい」

「タカさん……」

 お茶碗洗いをしていた私と葉子さんの後ろに、いつの間にかタカおじ様が辛そうな表情で立っていて。近くの椅子に座ると、

「当時の土御門は厳粛だったから、その体も政府のモンだって、『そう言う扱い』が普通だったらしい」

 死んだらお葬式して、火葬されて、お墓に入る。当たり前って、思うのに。お墓のない遺体はどう扱われたのでしょう? 家族ようこさんの元に帰りたいんじゃないかな? 考えただけで可哀想な気がします。

「あの日は……それまで普通に工務店で働いていた、ちょっと体格のいい幼馴染だって認識が覆されっちまった。……まぁ、あの肉塊のような男が潰れているのを見るのも、酷な話だが」

 タカおじ様が行く予定だった現場で亡くなったと言う、おんまさん。

 その亡くなった姿を見たのはその現場にいた人や、駆けつけたタカおじ様だけで。土御門が用意したと言う車に遺体は搬送されたけれど、それ以降の行先は教えてもらえず、葉子さんは会わぬまま。子馬さんも程なく連れ去られてしまったそうです。

 面会の権利さえ握りつぶそうとしたそうですが、ぎょぎょのオジサマが調停に持ち込んで得たらしいです。それさえも大変な騒ぎだったと言います。そして十五年、会えたのはたった数回だったそう。

「……私はあの人の元気で優しく笑う姿を忘れないし。あの『現場』で人を助けた雄姿だけを聞いていれば、それだけで……あの人らしいと思うわ。ねぇタカさん、高馬ったらあの人にとても良く似てきて。あの背中を見たら懐かしくて……そうそう、何だか海の家の、海さんの事がとても気に入ったみたいだったけど」

 葉子さんは話を切り替えます。タカおじ様を慮っているのでしょう。

「色気付いてきやがったな、あの豆粒子馬がでっかい子馬になっただけでもビックリなのにな」

「豆粒?」

「そう。あの子、超未熟児で一キロなかったのよ?」

 それは驚きです。だいたい子供は三キロくらいあるものです。あんなに今は大きいのに……

「賀川君が生まれた時はどんなだったのかしら? 今度冴ちゃんに聞いてみましょうかね」

 嬉しそうに微笑みながら葉子さんは仕事に戻り、タカおじ様も普通の表情に戻っていましたので安心しました。



 ただ、一晩寝て、起きてくればきっと体調を戻してくるだろうと思った賀川さんでしたが、この先一週間ずっと疲れが抜けない様子で。

 私も葉子さんも声をかけるのですが、大丈夫の一点張りで。週の終わり頃にはタカおじ様もオカシイと頻繁に口にするほどでした。

「食べちゃいるが、ありゃ全部戻してるな」

「女の子じゃないから悪阻でもないでしょうし、どうしたんでしょうね」

「何かと戦ってる感じだ。やり方間違ってるみたいだが。気付くまでほっとくしかねぇ。いいな、ユキ。見守ってやれ」

「はい……」

 気付くまでに事故でも起こさないと良いのですが……そんな事がないように祈るしかないのでした。



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うろなの雪の里(綺羅ケンイチ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9976bq/

(桜井)聖子さんちらり。


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さんちらり。

問題がありましたらお知らせください。


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この更新を持って、ゴールデンウィークあけるまでは不定期更新となります。

メッセ等も滞りますのでご了承ください。

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