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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月17日

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242/531

談話中です(海さんと)

lllllllllllllllll

昨日の最後の子馬台詞が分かり辛かったようなので、少し手入れを。

「凄いな、俺の従姉妹。流石、刀森の血を引くだけあって、巫女への忠誠心は厚い」

と、なってます。ユキと賀川ではありません。

はい、賀川と子馬は従妹? らしい、

そしてユキが寝たので、賀川でスタートです。

lllllllllllllllllllllll










 くったりしたユキさんが可愛い。

 キス、ちょっと長めにしたのだが、茹でダコみたいってこんな感じだろうか。さあっと朱が走って。よほど恥ずかしかったのか、終えて抱きしめた途端に俺の肩に顔を寄せてしまい。

 子馬が変な事を言ってる最中に、急にすぅすぅと寝息を立てはじめた。

「ねた?!」

 俺を『従姉妹』呼ばわりする大男が驚く。こっちがどうしていいかわからない、何が、何だと言うんだ? 葉子さんも意味がわかっていないらしく、こちらを見て首を傾げるだけだった。

 とりあえず俺は眠り姫となった彼女を抱きかかえ、子馬からユキさんを離そうとした。だが彼女は、ゆらぁっとその身を起こす。赤い瞳がやけに冷気を帯びていて、ユキさんであってユキさんでないのに俺は気付く。『この人』とは以前に会った事がある気がした。

 そう、夏、俺の部屋で寝込んでいた彼女からキスをして来た……その時のユキさん?

「もー、いそうろうがきゅーにキスするから、巫女ったらイキできなくなっちゃって」

「ユキさん?」

「こ、この……段階で出て来ていただけるとは」

 急に子馬は身を引くと、膝を付き、

撞榊厳魂天疎向津姫命(つきさかきいつみたまあまさかるむかつひめ……」

 そう行って恭しく礼を取った。もうこいつの行動も台詞も俺には理解不能だと思う。そして今の『ユキさん』も良くわからない。

「……それ、シタかまない? 水羽とよびなさい」

「水羽……おめぇユキん所の神!」

「こんにちわ。たかやり。さえへのさいはい、みごとでした」

「ありゃ……勝手に引っ付いただけで、オレは何にもしちゃいねぇ」

「まあ、いいでしょう」

そう言うと、ユキさんの形をした彼女はクスクスと笑った。今ハッキリ、タカさんを名前だけで呼んでいた。間違いなく彼女は正気じゃない、ユキさんは人を呼び捨てにしない。では、誰だと言うんだろう?

「た、タカさん? 何かわかってるんですか?」

「だまってろ、賀川の」

「う……」

 どうも状況が読めない。でも今はユキさんであってユキさんでない者がそこで薄く笑っていた。

「こうま、古くの血がわかる者としてアナタは来たのでしょう? 宵乃宮の刀守にして、土御門当主」

「この男が、真の刀守となり得ますか?」

「いそうろうは私に『水』をくれし者。幼きより火之迦具土神ひのかぐつちのかみの加護下にすでにあります」

 子馬が息を飲むのが分かった、そして真剣な光を黒の瞳に揺らして頷く。

 ユキさんは急に俺にぴったり体を添わせる。ユキさんであってユキさんでない感覚は不思議で、でも俺に対して間違いない好意は感じられた。

「もう、月姫つきの巫女のように、秋姫あきの巫女のようにならぬよう。この刀守を雪姫ゆきの巫女を永久に、側に……」

 ユキさんの体が再び完全に崩れて、再び眠り始めた。



「まさか撞榊……いや、水羽様と会えるとは。それも俺は彼女の刀守じゃなくて良いって確約だし、よかった、よかった。これで言い訳が出来るぅ」

 一人嬉しげに子馬が呟いている。こっちは困惑しているのだがお構いなしだ。

「高馬! 何が何か、ちょっと説明しなさいよ。当主って何なのよっ。それも賀川君が従姉妹ですって? 何を言ってるの?」

 今まで黙っていた葉子さんが声を上げた。海さんはじっと話を聞いていて、膝の鳥は忙しなく彼女の回りをウロウロしている。

「……刀森が、何か関係あるって言うの?」

 葉子さんは眉根を寄せてそう聞いた。自分を置いて行った母親が嫌いで、『刀森』という名も便宜上使っているだけで、葉子さんにとってその苗字は忌むべき物なのだろう。それが表情からありありと見て取れた。

 そしてその回答は、子馬の口からではなく、タカさんの口から洩れた。

「……おめぇの母親が育ててた『余所の子』。名前を知ってるか? 葉子さんよ?」

「知りませんよ、そんなの。複数いましたしね」

「しょうのみや あき」

「……はい?」

「じゃあ、そのうちの一人が宵乃宮 秋姫。ユキの母親と、葉子さんの母親が一緒に居たのは掴んでいる。こないだ『洞南園』の面会者名簿に、静子って名前と、アキヒメさんの小せぇ時の字が残っていたのを見た」

「え?」

 タカさんの言葉に葉子さんが当惑の声を上げる。

 子馬がそこでゆっくりと口を開いた。

「母さん、刀森はもともと巫女の分家筋なんだ。男は刀を守る者だった。女は巫女を育てた。男は巫女の配偶者になる事が多かった。それが宵乃宮に統括され、男も女もいつしか巫女を育てるだけになり、育てた巫女は機が熟した頃、子を生し『人柱』にされ、殺されるシステムになったんだ。……それを憂い、巫女を連れて逃げた女が歴史上何人か確認されている。一番最近の報告は二十年近く前。連れ去られた巫女の名は『秋姫』、その時に養育機関の『刀森』はすべて惨殺された。表向きは火事として処理され……」

「ちょ、ちょ、待って、ちょっと待って。高馬。変な事、言い出さないで」

「変な事を言ってはないよ。土御門が掴んでいる宵乃宮に関する情報の一部だよ。これは真実。一番生粋の巫女である秋姫を連れて逃げた女には、娘が二人いて、一人が母さん、もう一人その姉は養女に出されたり、結婚したりで名前が幾度か変わったが『時貞』と言う家に嫁に行ったのが確認されてる……」

「う……嘘でしょ?」

「俺がそんな嘘をついて、何か良い事ある? 母さん」



 俺は葉子さんを見た。とても不思議な気がする。

 葉子さんが母さんの……妹?

「じゃあ、葉子さんは俺の叔母? ……だから、子馬は従姉妹って事?」

「そうなるんだよね。時貞 玲」



 俺より動揺し出したのは葉子さんだった。

「高馬? それってもし私が施設に居なかったら? この子の母親が? 私の姉? 姉が居たの? 私、何も知らないわ。私を施設においた母を恨んでいたの、恨んで……なのに、何?」

「施設に居なければたぶん母さんはもういなくて、俺も生まれてなかったよ。そろそろ知るべきだよ。会った事もないけど、お祖母さんは巫女を悪意を持って育てる様な役を子供にさせたくなくて、母さんやその姉を自分の側に置かなかったのだと……思う」

 はじめて、笑っていない葉子さんを見た。

 強張った顔。

 葉子さんが母に似てるかはわからない。けれどこの人の作ってくれるご飯はとても暖かくて好きであったから、こんな表情は余り見たくはなかった。ふら付く葉子さんをタカさんがそっと支え、

「葉子さんは葉子さんだ、気にすんな」

「……ねえ、高馬が知ってるって事は……うちの人も知っていたって事? 言わずに逝ってしまったの? もともと刀森だから……そんな切っ掛けで出会ったの」

「そうか。おんまの家系が子馬と同じく公僕こうあんだったのは聞いている。だが細かくはわからねぇ。でもおんまは優しい男だった。今ココに居たなら、お前ぇを優しく抱きしめてくれただろう、きっと」

 声もなく、葉子さんが涙を落す。タカさんはしっかりとその傍らでその体を支え、泣き崩れかけた彼女にそっとその胸を貸した。

 自分を捨てていたと思っていた親が、自分を生かすために側に置かず、離したのだと知った衝撃は浅くなかったようだ。

 俺は母から花が返って来た時は嬉しかった、だが困惑もした。死んだ者へは基本的に何も出来ず返せない、俺のように花が返ってくる奇跡などそう起こるモノではない。恨んでさえいた相手なら尚更にどう考えていって良いか迷うだろう。



「とりあえず状況はわかったよ。巫女の身柄は暫く任せた。俺の方でもヒトを出しておくよ。暫くこの地に派遣されて居るから、またくるね。俺への疑いは晴れた? さあ、さあ、海さん、送るよ」

「え、あ、これ、このままでいいのかっ!」

「良いんだよ、海さん」

 子馬は海さんを招きよせると、ふんわり笑ってそのまま出て行こうとする。彼女の近くに居た白い鳥は開いていた窓から玄関先の方に先回りし始めた。

「子馬! わからない事が多すぎる。もう少し説明を……」

「すまないが、日と場所を変えよう、時貞 玲。賀川、と、呼んだ方がいいのか?」

「待ちなさい、高馬……」

「タカの小父貴、そして賀川。巫女と、母さんを頼んだよ」

 そう言って、海さんを攫う様にその巨体を揺らして、前田家から出て行った。


llllllllllll


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

海さん。ルド君。


子馬が海さんを気に入ったようです。

問題があればお知らせください。

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