食事中です(海さんと:謎の配達人)
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視界が悪いですよ?
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身支度を整えて、離れから食堂に行くと、ARIKAの海さんと、白髪仲間のレディフィルド君が来ていました。海さんはごはんだって呼びに来てくれたので、『ありがとう』って言おうと思ったのですが、もう一人知らない方がいて。
「あの……お取り込み中ですか?」
そこに居たのは。
とっても体が大きくて、賀川さんよりもタカおじ様よりもガッチリしていて。工務店を手伝いに来ている弥彦お兄様よりはちょっと小柄かなって思います。でも殆ど遜色なさそう。何故か葉子さんと同じ、優しい色を感じます。それでもその体格で詰め寄られるとビックリします。
その上、賀川さんが駆け寄ってきて、急に私を背に隠すので、何事かと思いましたけど。
「な、何が起こったのでしょうか?」
「こ、こ、この怪音は……」
遮られた視界、次、見た時は体格のいいお兄様が蹲って頭を抱え、
「い、今のはちょっと効いたぞ……」
タカおじ様も顔を顰めています。背中に居るので、賀川さんの表情は見えませんが、二人と違ってしっかり立っている感じです。
「レディフィルド……」
「超特大だぜ!」
嬉しそうに言うレディフィルド君の体から、とても濃い色の銀色の霧のようなモノが、渦巻いています。超特大は、それの事を指してのようです。
「何か視界が悪いです」
そう言っていると、賀川さんが私をチラリと見ていました。
蹲っていたお兄様は、震える手で警察手帳を取り出し、
「警視庁公暗部特殊所属、土御門 高馬です。宵乃宮 雪姫さん、まず事情聴取にご協力を……」
そうニッコリ笑う体の大きい『こうま』さん。子馬さん? じゃないですよね?
「私の息子なの。今、子馬って文字変換したでしょ? 高馬って書くのよ。どっちでもいいけれどね」
「どっちでもって、それ酷いよ、母さん」
「よ、葉子さんの息子さん?」
顔、似てないんですけれど、滲む色は確かに近いです。私が疑問符を並べているうちに、
「葉子さんの息子でもユキさんに何かするつもりなら容赦しない」
「とりあえず話に応じてくれないかな? 雪姫さん」
「そんなの聞かなくていい……」
賀川さんが食ってかかりそうだったので、私は賀川さんの後ろから顔を出します。
「話、聞きます。ちなみに私の名前は『しょう』じゃなくて『よい』って読んでました。今は前田、です」
「それじゃあ、お願いいたします」
「じゃ、ねーよ。その前に一発殴らせろや、こらっ!」
「ちょちょ、ちょっと小父貴っ」
そう言って、子馬さんとタカおじ様は、テーブルと椅子を挟んで追いかけっこを始めてしまいました。
賀川さんは私の手を取って離そうとしません。地味に、は、恥ずかしいのですけれど。
それをチラッとフィルさんは見て、にっと笑いながら近付いてきます。
「賀川。今の、ある程度、我慢できたみてぇじゃねーか」
「こんなトコで、吹くんじゃねぇよレディっ! ヘッドフォンがあったからよかったモノの……」
その後ろから海さんがレディフィルド君を蹴倒そうとします。ですが、タカおじ様の手を逃れて、高馬さんが動いたと思うと、海さんの蹴りを避けつつ、その上肢をがっつり抱きしめ、頬ずりでもしかねないような勢いで飛びつきます。
「元気があってすごく良いな。何より動きが綺麗だ」
「はぁっ!? なななな????? どこから湧いたっ?! 何? ちょ、えええええっと、その、は、はなっ、離せえぇっ!?」
海さんがじたじたと暴れますが、子馬さん、大きすぎます。素人目に見ても海さんの動きは素早いのに、全くそれを意に介さず、ひょいひょいとダンスするように嬉しそうです。それでも拙いとは思ったのか、はっとして、
「これは……若い女性に済まない事を。あまりに技が美しかったので」
高馬さんはそおっと壊れ物を置くようにして海さんを解放します。真っ赤になりながら照れ隠しなのか、本気なのか海さんが拳を振り回しました。
「ちょっと髪が乱れたね。ごめん」
子馬さんはそう言って笑って、海さんの手をするりと避けて、大きな手で黒髪の少し跳ねた頭をナデナデしています。
「えっと、レディフィルド君は、海さんの彼氏じゃない?」
「ぶははっ! どこをどーみたら、んな答えが出るんだぁ? 海に、彼氏なんかいないっつーの」
「それは良かったって、あれ? カイ? って言うのが本当の名前?」
「あみ、あみっ! 海って書いて、あみ! てっ! か、彼氏居なくて悪かったなぁっ」
「いや、俺は居なくて嬉しいよ」
「い? はぁ???」
海さんがワタワタしてますが、彼女がこんな感じなのは、何だか珍しい気がします。葉子さんはその様子を見ながら、
「高馬、女の子はあんまり困らせちゃダメよ。海さん片付けしてくれるかしら? ユキさんは食べてしまって?」
そう言って、野菜がたくさん載ったうどんを差し出してくれました。海さんは子馬さんから逃れるように慌てて台所に入ります。私は賀川さんの手をそっと離して先に座ります。
「そう言えば、昨日より、手が温かいです」
「うん、まあ。おまじないのおかげかもしれないね」
私は差し出されたうどんを混ぜ混ぜして、ちゅるちゅると、私が食べ始めます。
賀川さんは子馬さんに警戒したような目を向けながらも、
「子馬さんは、敵じゃない?」
「わかんないけれど、今の所は雪姫に興味と話を聞く事が先だと思ってる」
「……すまないが、一つ協力してくれないか?」
その返事を聞くと、高馬さんとタカおじ様、それからレディフィルド君を呼んで、幾つかにテストみたいなことをしてました。何をしてるのか私にはよくわかりませんが、レディフィルド君が笛に口を付ける度に、霞んで見えたり、賀川さんがかなり辛く嫌そうな顔をしてます。
「超特大以外はそこまで影響ないか……協力助かります」
「や〜っぱ、まだ全然ダメみてぇじゃねーかよ、カガワ? さっきの『まぐれ』だったんだな」
「何か掴んだ気がしたんだが……」
「ま、しゃ〜ねえ、また付きあってやっか。んじゃ、立て込んでるみてぇ~だしぃ今日の所は帰るぜ? またなぁカガワ〜! 海、俺様は帰んぞっ。お前は、そこの子馬にでも送ってもらうかぁ?」
「それは……俺は嬉しいな。ぜひ海さんは置いていって欲しいな……」
「んなっ!? ちょっ、ちょっとコラ、おいっレディっ!?」
慌てて海さんが台所から飛び出してきますが、高馬さんは海さんの背後で、悟られない様に腰に手を回して。ソファーにそのまま投げ込む様に座らせます。か、かなり強引では? 海さんもぱちくりしてますが、お構いなしです。
「いいから、俺が送るから。海さんはそこで座って待ってて」
今までレディフィルド君の肩で、置物の様にとまっていた真白の大き目の鳥が、海さんの膝にふわりと着地します。
「い、居ろっての? そりゃ、ユキっちを捕獲なんて言ってる奴、放っとけねーけど」
「放っては置けない? 嬉しいな。じゃあ、俺と帰ってくれるんだ。捕獲って言うのはまあ言葉の選び方が悪かったけど、それで待っていてくれるならそうしとく。一緒帰ろうねぇ?」
そう嬉しそうにしている背後からタカおじ様が忍び寄り、飛びつくように首に腕をかけると、
「子馬っ! また紛らわしいこと言ってんじゃねー捕獲だとっ! うちの娘だぞっ」
「タカの小父貴、すみませんね」
「冗談にも程がある!」
「でも、あながち冗談や嘘ってわけでも……」
「俺の目の黒い内はオメぇらの所にユキを連れて行くなんざあり得ねーからな」
「と、とりあえず話をさせてくださいね。こっちも仕事なんだよー」
そんな会話が聞こえています。またも暫く二人でじゃれていたのですが、高馬さんはそれから逃れると、言葉を正して、
「宵乃宮 雪姫 さん。さっき話した通り、警察なんですが」
「はい? 私、何かしましたでしょうか?」
「夏に……小角という者、そしてその一味に加担していましたね?」
こくっと噛まずに最後のシイタケを飲み込んでしまいましたよ。
「えっと……」
「大丈夫ですよ、オロされた上での強制的な行為である事は裏が取れてますので、問題ありません。蒸し返す事もありません。ですが、貴女は『巫女』として自覚がありますか? ご自分の身が守れないのに不安でしたら、私達が身柄を捕獲……いえ、保護する話が浮上しています」
「えっと、えっと、良くわかりません。でも『水羽さん』には私と喋れるくらいには普通でないと言われました」
その台詞を言い終わるか終らないか、わからないうちに賀川さんがガツンと机を叩き、
「ユキさんは何となく緩いし不思議だけど、たぶん普通だし、巫女なんて自覚は要らないだろう!! 彼女は普通に、ごく普通に生きてるだけだっ」
目が、いつになく怖い、怒ってるみたいです。でも、子馬さんは優しい表情のままでとりたてて気にした様子もなく、冷静かつ和やかに賀川さんを見ています。
「高馬、ユキさん、少し変わっているけれど。問題はないわ。貴方が出てきたと言う事は問題あるのは『回り』でしょう? 昨日の様な事があるって言いたいのでしょうけど? 私達も気をつけるわ」
「今の所、問題ねーよ、子馬。緩いけどユキは俺達が守る」
「あの私、やっぱり『普通』ではないんですね」
賀川さんも葉子さんも、タカおじ様も……ストレートに『普通』とは言ってくれなくて、何だかシュンとしてしまいます。海さんは何だか食い入るように聞いてますが、何処までわかっているかは不明です。
するとそんな事を見ていた賀川さんが私の横に座り、
「こっち向いて、ユキさん」
「はい?」
「君は俺が守るから。安心して……」
そう言って賀川さんは私の頬に両手を添えると。
突然。
深く、長く、キスをしてくれました。
昨日みたいに額とかじゃないです。
くくくく、口です。
口に……した事ないわけじゃないけど、余りに長くて苦しいし、それもみんな、がっつり見てるのに、全く恥らい無いんでしょうかっ?????
が、外国帰りだとキスってそんなに抵抗ないんでしょうか????? 意味わ、わかりません……
「あらあら、賀川君」
「うわ……」
「ゆ、ゆ、ゆ、ユキはやらんぞ!」
口を離した賀川さんが、ギュって私を抱きしめてくれます。
「すぐじゃなくても貰いますから。タカさん。俺、ユキさんが好きですから」
私は成されるがままカクンと彼の肩に顎を載せます。
ああ、もう、ふわっふわっします、呼吸がうまく出来なくて、クラクラしますけど、気持ちいい感じが……
「だから子馬さん、お引き取り下さい。ユキさんは俺が、俺達が守ります。俺自身も守って『人柱』になんかしません」
ふわっと子馬さんが笑っているのが目に入ります。瞬間、あれ? この人、どこか賀川さんに似てる? そう思った時、
「凄いな、俺の従姉妹。流石、刀森の血を引くだけあって、巫女への忠誠心は厚い」
「「「「え?」」」」
その場に居た皆が疑問詞を投げ、私は声にこそできませんでしたがとっても驚きながら、すとんと眠りに落ちました。
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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)
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海さん。レディフィルド君。あ、ルド君、昨日書き忘れました。
うろなの雪の里(綺羅ケンイチ様)
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うろな天狗の仮面の秘密 (三衣 千月様)
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