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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月16日

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237/531

会話中です(悪役企画)

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さて、電車に乗って。

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 電車に乗って、商店街に移動する、今日は買い出しなの。だって明日、お客様が来るのですもの。お客って言うのもちょっと違うかしら?

「で、この野菜を明日の朝までにウチに。魚と肉を買うから配送一緒に、間に合う? あ、ミカン一箱……足りないわね。二箱お願いね?」

「配送はいつもの賀川冷蔵便に回しとくよ。しかし後藤の弥彦君でも来るのかい、葉子さん?」

 タカさんやうちの人の仲間である、後剣さんの後藤建設から伏見 弥彦君が来ると、相当食べるのよ。その時の買い物並みだったからそう言われて、私は笑いながら、

「それがね、明日……」

「あら、あの時の奥様?」

 私はその台詞で振り返るの。そこに居たのは先月にユキさんが攫われた日に親切にも彼女が落とした日傘を拾ってくれた女性だったのよ。

 すらりとした身長、髪も唇もその瞳も、美しい桜色をした女の子。年は幾つなのかしら? そんな事を思いながら、

「まあ、あの時は親切にありがとう。桜さん。でもあそこの奥さまじゃなくて使用人よ?」

「あら、そうだったのです? てっきり」

「大丈夫よ、でも皆の手前もあるから。葉子って呼んで。それより助かったわ」

「いいえ、葉子さん。綺麗な傘だったから。すぐに落とし主が見付かって良かったです」

「あの時はお茶もあまり飲んで行かなかったでしょう? まともなお礼もできなかったから、そこでお茶でもしない? 後、ソコのお肉屋さんで注文したら終わりだから待てる?」

「え、そんなつもりじゃ」

「時間はどう? あるなら良いじゃない。ちょっと温かい物でも飲みましょう? それとも冷たいのが良いかしら?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 ニッコリと笑う桜さんはとても美しいわ。少し寒い時期だけれど、着物生地で出来た美しい桜色の衣装はとても彼女に似合っているの。



 私達は暖かい紅茶とマフィンをいただく事にしたわ。

「大学生なのね?」

「はい。今日はバイトの面接にこの辺に来て」

「あら? 家は町内なの?」

「南よりの海に近い感じで……こないだは散歩中にあの辺に行ってたんです」

「あら、裾野はあれから先、人家がもっと減って、高原の方まで行くと紅葉は綺麗かもねぇ」

「あの日は栃の木の広場まで行きました」

「そう。山にはこの頃あまり。森に住んでいる子がいるけれど私は行かないし」

「森に?」

「そう、拾ってくれた傘の持ち主でユキさんって言うの。こないだ話したかしら。森にアトリエがあるらしいわ」

 大学生だとか、バイトだとか、それが全部ウソだとも知らずにゆったりとした時間を過ごしたわ。

 彼女とお茶したカフェは二階建てで、商店街へ出入りする道に近いのだけれど。途中、ユキさんと賀川君の姿を見たわ。彼女は真っ白の髪だからやはり目立つわね。人混みにすぐに消えてしまったけれど。

「どうかしたのです? 葉子さん」

「いえね、知った人を見たのよ」

「え、好きな人ですか?」

「若いわねぇ。桜さんは好きな人は?」

「え? ああ、そうですね。いますよ。女の人ですけれど。大学の教授で尊敬してます」

 桜さんに話を聞きながら、『ユキさんと賀川君は森に行った後に商店街でデートしてたのかしら?』そんな事を思いながら、その影を見送ったわ。その時、少し上の空になっていたからかしら。

「葉子さんは気になる人とか、好きな人はいないのです? 結婚してないんでしょ」

 そう言われた瞬間、さっとタカさんの姿が浮かんで。やぁね、何だかうちの人の笑う声が後に続いた気がして、ちょっと言葉に詰まってしまったわ。

「こないだの家、私の勤めてる社長の自宅兼、宿舎で。私は管理や食事なんかの賄いをしてるのよ。そこの社長がちょっとだけ、気になるわね。今は病気をしてるしね、心配だわ」

 そう言うと、彼女は目を丸くして、

「でも、葉子さんは奥様じゃなくて使用人って言ってたから。それで社長だと不倫?」

「ふふふ、そう言う仲じゃないわね。それに私もタカさん……いえ、社長もね、連れ合いはもうこの世にはいないの。だからって私達はそう言う意味の繋がりはないわ。貴女も教授とそう言う関係ってわけでもないでしょ?」

「尊敬、ですか?」

「そうねぇ、親愛くらいかしら」

「葉子さんの旦那様だった人も、その社長の奥さんも素敵な人だったんでしょうね?」

「うちの人は素敵かって言うとちょっと違うかも。何せ体は大きくて強面だったし。でも君しかいないって言ってくれてたわね。社長の奥様はとても優しかったのよ。貴女の好きな教授は?」

「源氏物語について研究して居られるのです。源氏物語には『雲隠』という巻名だけで本文が全く伝承しない巻があって……」

「雲隠、って余り良い雰囲気の言葉ではないけれど」

「人が亡くなる事をそういうので。だからでしょうね。けれどその部分を知るのは大変な浪漫であり、それは当時を知る貴重な文献ですから……」

 大学では源氏物語のお話に関して研究でもしているのかしら? そう思ったわ。私は詳しくないのだけれど、桜さんが物語を丁寧に語ってくれたから、面白くお話が出来たわ。きっと彼女が尊敬する教授が彼女にそうやって丁寧に教えたのかしらなんて思いながら。







「葉子さん、少し歩きませんか」

 お茶を終えた私達はその彼女の言葉で、色々を話しながら、ゆっくり歩いてうろな裾野の方に向かったの。何とも取りとめのない内容だったけれど、女は喋るのが仕事みたいな物だから、とても良い時間だったと思っていたの。

「楽しいです、こうやっていると懐かしくて」

「お母さんみたいっていってたわね。私も楽しかったわ。でも、そろそろ帰らないと。ここからは電車にするわ」

 お洗濯も掃除も済ませて、非番の子の昼食は用意してきたし、夕飯は各自でお好み焼きを焼くようにホットプレートを置いて、ネタは冷蔵庫に刻んで仕込んで来たけれど。タカさんの様子も気になるし、賀川君とユキさんも今日はイイ雰囲気だったけど、波のある子達だから。

 でも……桜さん、少し寂しそうにして、

「じゃ、この公園に寄ってはダメですか?」

「え、あ、でも……」

「お願い! ちょっとだけ。最後にブランコ、乗りましょ? 本当に田舎の母と話しているみたいで懐かしくなっちゃった」

 ふわっと袖を揺らしながら木の多いその公園に入って行くの。もう夕暮れ時。曇っているから少し暗め。多い雲の隙間から微かに覗くオレンジの濃い色と黒い雲がちょっと不気味で。でもそこに入って行く桜色の彼女はとても自然だったから。

「仕方ないわね、ちょっとだけ」

 そう言いながら私は付いて行ったのよ。



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うろなの雪の里(綺羅ケンイチ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9976bq/

後藤剣蔵(後剣)さん 伏見 弥彦お兄様




『以下2名:悪役キャラ提供企画より』


桜さん『桜嵐さくらん』呂彪 弥欷助様より

余波なごり教授』 アッキ様より

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