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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月16日

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234/531

逢引?中です(汐ちゃんと:謎の配達人)

llllllllll

とても楽しそうだな。よかった。

後半はダイジェストになります。

llllllllll






 今日はユキさんと森の家に来ている。

 何か言いたげだけれど、何も言わないで、お互いいた。それもユキさんは創作意欲に燃えているようで、あんまり俺の事を気にしている様子はなくて、助かっている。

 そして篠生のかけた謎が解けないまま、俺の指もほぼ動かないまま、ただ時間だけが経過する。

 三十日にはピアノを弾いてほしいという清水先生夫婦。その門出を祝いたいがもう、無理だろう、そう思い始めていた。でも断りの電話、後回しにし続けている。

 このままではいけない、『俺にはもうピアノは弾けない』と言わなければ。でも言おうとすると涙が何故かこみあげて、言葉を塞ぐ。ピアノを愛していた自分、親友との思い出してしまった約束は軽くなかった。

 俺はもう『弾けない』んだ、それを言ったら『負け』な気がして。もう二度と、動かない気がして。イヤ、動かないのだと何処か認められなくて……苦しい。

「いや、負けてるんだよ、もう」

「え? 何か言いました?」

「いいや、何も。それより紙、波打ってるけれどいいの?」

 ユキさんは白い紙を板に置いて、刷毛で放射状に濡らし、引っ張りつつ、ハンドガンのようなもので木枠にうち止めていた。

 水を含んだ紙は波打っており、俺が想像する『キャンパス』の状態には見えなかった。相当引っ張っても破けないんだな、紙って……驚きながらも俺が聞く。するとユキさんは水だけしか含んでいない刷毛をクルリとしながら笑う。

「大丈夫です。水張りって言って、このまま乾くと紙がピンとなってまっすぐになるんですよ。紙は生きていますから」

 ユキさんはそう言ってにっこり笑う。その時、俺は何がしかの音を耳に入れたが、それとほぼ同時に、

「誰かが来ました!」

 そう言ってくるりと玄関口に向かうユキさん。余りの素早い動きに驚く。『怖い誰か』ではないかとか、懸念して動いてくれればいいのに。だが……それは恐怖で震えるような生活をしてくれと言っているような物だと気付いて口を噤む。

 彼女のあまり深く考えない緩い性格に、俺達は救われているのだろう。誰かに攫われると言う事は、ともすれば家から一歩も出ないと言い出してもしかるべき体験だ。だが彼女はそこまで塞ぎ込んではいない。

 ただ、先月末の事も全然感じて居ないわけじゃないと、彼女の信頼する司先生からの報告もあるから気を付けねばいけないが。



 とりあえず出てみると、その玄関先には謎の配達人レディフィルドと、海の家のARIKAの少女、汐ちゃんがいた。

 九日、そして十三日の『耳の訓練』以降、会ってなかったが、まあ元気そうで何よりだった……と、いうか心配されていたのは俺だった。十三日は無理して音を聞き続け、意識を失ったから。



 ユキさんはレディフィルドの白髪に興奮気味だった。更に瞳の色の青さに感動しきりで。

 彼女、白髪見ると『仲間』って嬉しくなるらしい。うろなは結構いろんな色の髪や目の持ち主は多いけれど、やはり『黒髪』の人種の中で『白髪』は目立つ。



 この後、森を散策した後、四人で移動する事になり。

 又も非常識なのに楽しい移動法に不覚にも喜びそうになったり、そろそろ冬だと言うのにずぶ濡れになったりして。

 汐ちゃんの祖父が経営していると言うホテル<ブルー・スカイ>の浴室に居た。

 浴室と言っても日本の伝統文化『銭湯』のような感じで、男女で別れた大きな風呂だ。壁は上部で筒抜けになっており、ユキさんと汐ちゃんの動きは大体わかる。

 清水先生が決闘に備えて訓練に来ていた時には家の大風呂がよく使えていたのだが。

 今は開けていないから、ちょっとうれしい。広い風呂に居ると日本っていいなと思う。

 それも海外の真っ白で落ち着きのない滑々大理石ではなく、俺好みのごつっと黒っぽい岩風呂を模した感じなので、非常に落ち着く。



 ちゃぷん……



 あ。



 水音で、隣の女子浴室で、ユキさんが動いているのを感じてにやっとする。

「お前、変な事考えてっだろ? カガワ」

 少し離れた場所でお湯に浸かっていたレディフィルドが俺の口元を見咎めて言った。

「ん? 濡れた髪がその谷間に挟まれてるのとか? その下の色も白いかとか?」

 俺は首からさげている二枚のドックタグとその側の青い石がお湯の中で揺れているのを見ながら、声が隣に響かないようにぼそりと言う。

「ちょ……具体的だなぁ、カガワ~」

「ああ、まぁ汐ちゃんと……てるのを想像して、するならかなりロリだな、犯罪だな」

「……おっ前〜っ。むっつ〜り、だったんかぁ」

「レディフィルドは『俺様』とか言うくせにやっぱりお子様だな」

 そう言うとレディフィルドはその端正な顔を見せつけるように、白い濡れ髪をかきあげる。そしてザバッと湯船のお湯を揺らし、俺にワザとに詰め寄った。

「そうでもないぜ?」

 俺の顎を慣れた手つきで上に向かせる。

 綺麗な青い瞳が異様な雰囲気を醸し出していた。俺もニヤリと笑って、レディフィルドを湯船に右手で引き込み、浮力に任せて足絡める。お互いの体で影になったせいか、首から吊り下げた青い石が仄かに光を放っているのが見えた。

 風呂の湯の波紋に青い光がレディフィルドの白い肌に落ちてとても綺麗だ。幻想的とまで言える青い光は彼の鍛えられた胸筋に淡い光を落し、整った顎のラインや鎖骨の凹凸を浮き立たせ、美しかった。

 更にドックタグの滑らかな銀面は青い光を反射し、彼の海を模した様な青い瞳を更に深く神秘的な色に見せる。一言で青と表現するには惜しい、尊さをも感じさせる涙色あお

「な、レディフィルド。考えない方が不健全だろ。ま、想像だけでいれるなら、こーやって誰とやろうと実害はないさ?」

「ふっう〜ん? んじゃ、こんな風にお前とでも?」

「そんなオカズでイケるか?」

 そこまで二人で真面目な顔で、ギリギリまで近づけ合いながら。

 俺は調子に乗ってレディフィルドの鎖骨を左の指先でそっと撫でる。

 途端に奴の顔にぞくりとした表情が浮かんだ。

「お前、この手っ!」

 その青い光に輝く瞳が見開かれ、突然叫ばれて腕を掴まれる。俺は驚いてその腕を振りほどき、足を離して距離を取る。

 左手の指、やはりうまく動いていないのに気付き、はっとする。

「お前、左手の具合……相当悪いのかぁ?」

「あ、す、すまない。もしかして痛かったか?」

「いんや、逆だ。ゼリーみてぇに全然力が入ってねぇし、それなのに氷みてぇに、固くて冷てぇな……」

「そ、……か」

「自分でどんくらいの力が入ってんのかも、わっかんねぇ〜のかよ? カガワぁ。それって……」

 俺の左手の具合はその日によって違うが、今日は殊更良い感じではなかった。良い日でも健常と違うのは自分の中でも歴然だ。先ほど乗ってきた満員電車でユキさんを揺れから守る時に、力を込め過ぎなかったか少し心配になる。

 八雲先生の診断だと、普通が十なら俺の手は良くて六割くらいしか動いていない。そして俺が求めるピアニストとしての動きは普通の十ではなく、二十も三十も上だ。

 深刻な表情になりかけたレディフィルドに、俺はするりと手を回し、その形の良い尻を触ってニヤリとする。流石にレディフィルドは驚いた表情を張り付けてバサッと立ち上がる。風呂の湯で温まった体に、俺の冷たい左手の攻撃さわさわは無視できない様だった。

「ははは、その代わりに、こんな攻撃が出来るんだ。オモシロいだろ? レディフィルド」

 ユキさんの裸をこの手で撫でまわしたら、きっとイイ反応が返ってくると思うんだよな、などと考える。その邪な心が読めたのか、半分呆れた表情で、

「おま、カガワ~余裕だなぁ」

 余裕なんかない、けれど、やっと左手の故障の事を少し笑えた気がする。それがおかしくて喉でクスクス笑いながら、 

「もしかしたらどーてーだから、魔法使いなのかと思っていたが。流石に『そう』でもないんだな、レディフィルド」

 冗談の応酬が終わった事に気付いたレディフィルドは湯に浸かりなおしながら、

「まほ……何だゃそりゃ」

「日本の都市伝説みたいなもんだな? たぶん」

 そこまで言った所で、隣の女子風呂から気になる音が響きはじめる。

「あ、今、ユキさんが洗い場で石鹸泡立ててる……どこ洗ってるんだろーな……汐ちゃんはタオルを、だな……」

「をい……変な方向に聴覚使ってるんじゃねーよ!」

 何処からか出した笛をガツンと吹き鳴らされ、俺はお湯に沈みながら叫ぶ。

「レディフィルドっ! やぁーめーろーしーぬー」

「ははん、一度、死んでろカガワ~」

 こうして水音でユキさんの『いろいろ』を想像するのは、奴の手で阻止されたのだった。





 この後、借りた服を着て甘味処に行ったり、商店街で魚沼先生と言う名の義兄に会ったりした。

 カッパに見えてしまうその男の隣には、姿が戻り、名字が変わった姉の『魚沼 冴』がこの日も幸せそうだった。そこで食べたコロッケの件で、ユキさんと二人で照れていると、

「なぁんだよ〜? 現実リアルだと照れんの、賀川(お前)?」

 と、レディフィルドに突っ込まれる。

 更に、

「あー、相手が雪姫セツだからかぁ〜♪」

 そう言われて、俺は確かにと思う。誰とそう言う事になっても、その場で本能的に燃えてもそれで終わりだったと言うのに。

 後から想像してまで楽しむ事なんかなかった。ユキさんとはキスを想像して、本当にキスできたなら、その後何度も……考えたりするんだよな。

 何で、彼女だけにこう魅かれるのだろう? そう思いながら、

「ん、そだな。ユキさんは色々美味しいな」

「どんな意味だよぉ」

「想像とリアル、そして想像で最低三度はイケるって……」

 こそこそ、レディフィルドと話していると、

「え? 何の話? 賀川のお兄ちゃん?」

 汐ちゃんが突っ込んできたので、ちょっと笑って、

「んと、レディフィルドは好きな子とナニしたいのかって……」

「だぁッー、カガワに近寄るなっ」

「なんだよ、レディフィルド。映画とか、遊園地とか……いろいろ何したいかって話だよ」

「うーん、汐はね、どこで、何がいいかなぁ」

 可愛らしく無邪気な汐ちゃん。

 そんなふうにからかったせいか、『お前、明日訓練な』と、レディフィルドに厳命され、駅近くで『小さなカップル』と別れた。



「訓練って何ですか?」



 どうせ明日の訓練場所は前田家と決まっていたから。ユキさんには、

「俺の耳、ちょっと変わっていてね。ちょっと前からそれを治すのにレディフィルドには付き合ってもらってるんだ」

「治さないとどうにかなるんですか?」

「ああ、心配しなくていいよ。ちょっとレディフィルドと遊んでいるだけだから」

「そうですね、今日も仲よさげでしたよね? フィルさんと汐ちゃんもいい感じでしたけれど。フィルさんと賀川さんも。何だか見ていると楽しかったです」

 ユキさんはそう言うと嬉しげに笑った。



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"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水夫婦。結婚式がある設定を。


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

汐ちゃん。レディフィルド君

llllllllllllllll

 地の文でもちょこちょこ説明していってますが、補足です。

 賀川は九日よりレディフィルド君に『耳の訓練』を頼んでおります。

 一回目九日。二回目十三日が終了。

 この日は二人で過ごすつもりでしたが、wデートとなりました。

 こちらは賀川目線のダイジェスト版となります。

 男子風呂が微妙に……? 気のせいですよ?

 女子風呂やら諸々は小藍様の所で描かれる事になっております。

 現在、小藍様宅は十一月四日の『第二回汐ちゃん争奪戦』を連載中。賀川も参戦中です。

 ここで件の左手の負傷を大きくしてしまう展開になるのですが。

 いかにしてそう言う展開になったかについては小藍様宅のお話にてお楽しみいただければと思います。

 時間ズレが生じておりますが、こちらでは耳訓練二回目後、その先の話となります。

 よろしくご理解、お楽しみいただければと思います。

 翌日に耳訓練三回目に入るようですが、その前に賀川が少しだけ動きます。

 その前に葉子目線が入ります。(予定)


 現在緊急で諸々調節中の為、まだ書き上げておりませんので、明日更新できるかは微妙です。ご了承ください。


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