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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
11月13日

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231/531

訓練中です(汐ちゃんと:謎の配達人)

lllllllllllllllllll

 地の文でもちょこちょこ説明していってますが、補足です。

 賀川は九日よりレディフィルド君に『耳の訓練』を頼んでおります。

 一回目の訓練お願い回は九日。

 今回が二回目の十三日となります。

 九日と、この十三日の前半戦は小藍様の所で描かれる事になっております。

 現在、小藍様宅は十一月四日の『第二回汐ちゃん争奪戦』を連載中。賀川も参戦中です。

 ここで件の左手の負傷を大きくしてしまう展開になるのですが。

 いかにしてそう言う展開になったかについては小藍様宅のお話にてお楽しみいただければと思います。

 時間ズレが生じておりますが、こちらではその先の話となります。

 よろしくご理解、お楽しみいただければと思います。


 では、こちらでは少し先に、耳の訓練、十一月十三日、二回目訓練回後半、お楽しみください。


llllllllllllllllllll









「気合入れて行くぞぉーーカガワぁーー」

 俺は今日、うろなの海で、郵便配達人を名乗る謎の白髪少年……いや青年レディフィルドに特訓を頼んでいた。

 奴の吹く笛は鳥を集めるための道具で、通常は人の耳には聞こえない。だが、俺やARIKAの海さんみたいに一部の人間には聞こえる。それも恐ろしい怪音なのだ。

 耳を塞がずにはいられない、音の暴力……思わず叫び、吐きたくなるような耳障りな音。

『ツール』という細工師に似たような音源を作らせて、そちらはだいぶ克服したが。それが子守歌に聞こえるほど、レディフィルドの笛は『恐怖の音源』であった。

 聞こえる者にとってはそれを塞がずにいる事は正気の沙汰ではない。

 今日は冷や汗と悪寒に耐えて聞き続けていたが、彼の言う所の三段階の『下』ですら、構えて聞いても死にかけている。

 この訓練、今回二度目になる。

 が、お願いを含めた一度目は……確か九日だった。まだ冴姉さんが婚姻届を強行して提出する前の事だ。左腕を折ってそれも解放骨折だったから、無理は出来ない。と言うか、二十七日に結婚式でピアノを弾いて欲しいと言われた事を断れずにいる。

 どうしたらいいか、悩みながら。

 落ち着かず、でも何かせずには居れず、レディフィルドに頼み込んだ音の特訓だった。



『耳を鍛える訓練なんだし、身体を動かす事はないだろう』



 そう思ったのに、させられたのは体力測定を兼ねた、完全に体力勝負の特訓だった。魂を鍛える為に体を鍛える、おおよそそんな理由だが。レディフィルド……四日に『あれだけの戦闘』と『負傷』をしていて、元気なモノだと呆れた。

 とにかく九日は疲れすぎて帰宅の車が動かせず、暫くホテルで休ませてもらうくらいだった。いつぞやユキさんが海の家で助けてもらった話を聞いた時、『無理をするな』と説教した気がするが、これでは人の事は言えないと思った。

 腕についても痛みどめと何かが効いているのか治りは早いようだが、流石にあの日は痛みが増し。

 翌日の夕方にはどうも葉子さんから伝わったのか八雲医院に呼び出しを食らい、訓練を受けてると言ったら鈴木だけではなく、八雲先生にまでアホかと罵られ、点滴を受けた。まさか音の訓練であんなに動かされるとは思わなかったんだよ。

 でも始めてしまったのだから、それを辞めるのも惜しくて今回の二度目となった。



「今日は前みたいに動いてないけど、気力だったら今の方が削られているよな」

「何か言ったかぁ~カガワぁ」

「いや、何でもない」

 俺は滲む汗を拭う。



 雀とかマメ鳥用が〈下〉。

 鶏とか烏用が〈中〉。

 最後が大きな鶴などが呼べる〈上〉。



 これがレディフィルドの笛の音の段階だ。

 もし克服する前に『音』を武器として使われたら、身動き一つできない間に殺される事もあり得た。だが耳の良さを完全に封じるのは防御力の低下と、盗聴器などを探す能力を失う事に直結する。できればうまく自分に取り込みたいのが本音だ。

 今の所レディフィルドの笛に勝る音源がない。それは幸いだと言えた。

 ちなみに録音では威力が半減するのは証明済みだ。

「来いや~カガワぁっ」

「ちょっと、待ってくれ、レディフィルド」

 俺を呼ぶ奴の言葉をそう言って止めた。

「どうしたの、賀川のお兄ちゃん?」

「んだよっ、せっかく気ぃ入れたってのに」

「すまない。でも誰かが来た。たぶん……」

 訓練は汐ちゃんも一緒に居て、今、休憩したばかりだったのだが、俺の耳は遠くから誰かの声を捉えていた。



「あきらちゃーん」

「やっぱり姉さん……」

「え? 賀川のお兄ちゃんのお姉ちゃん? 隣はカッパさん?」

 着物姿が多かった姉さんだが、法廷やらに出入りするせいか黒いコートにスラリとした足が目立つ、タイトスカートだった。隣には身長の低い、スーツを着たカッパ……いや、義兄がついて来ている。

「カッパじゃないよ、魚沼先生は弁護士で。俺の義理の兄。姉さんの旦那……」

 と、言っても入籍したのが十一日。たった二日だ。自分の義兄と言う認識は薄い。

「そう言えば汐、あのカッパさんは清水先生の試合の時に見た気がするよ。確か汐よりちょおっと小さい女の子が腕に……あれ?」

「お前の姉さん幾つだよ? 隣の男、完全におっさんじゃねぇ~か?」

「んーー姉さんは二十八で、魚沼先生は五十五だね」

 そう言いながら俺は二人を迎える。

「どうしたの、姉さん。引っ越しは終わった? 手伝うつもりだったのに」

「もともとそんなにないのよ。服も何もかも小さいから着られないし。家具や小物は鉄太様と買い揃えに行って、少しずつ揃えるわ。それに、今、貴方そんなに働けないでしょう?」

「姉さん、その……」

「ユキちゃんには言ってないわよ。それより海の方の人達にお世話になっているって聞いたから、どんな感じか見に来てあげたの。汐ちゃんって、この子? か、わ、い、い、わねぇ」

 ちょっと姉さんの目が怖い。でも汐ちゃんはにっこりして、

「青空 汐です。ねえ。お姉さん、少し前まで『小さく』なかった?」

 汐ちゃんは鋭かった。殆ど『その事』に気付く人はいないのに。驚いた姉さんに簡単に説明する。

「……ああ、ユキさんではないけれど、汐ちゃんもそう言うのがわかる子なのかも。こないだの清水先生の試合で魚沼先生と姉さんを見たらしいよ。この『夜輝石』は彼女がくれたモノだよ?」

 そう告げつつ、ドックタグと共に輝く青い石を見せると、冴姉さんは頷いて、綺麗に微笑みなおす。やはり我が姉ながら、色々と飲み込みの早い人だ。

「魚沼 冴ですの。うちの玲がお世話になってますわ。そちらが?」

「レディフィルドだ、サエ。この俺様がお前の弟、鍛えてやってんだから感謝しろよー?」

「聞いていますわ。破壊的な音楽の才能の持ち主だそうですわね」

 俺的には褒めてない台詞を姉さんが言った。

「ケケッ、違ぇねぇ。確かに、この笛の音は破壊的(そう)かもなぁ〜」

 だが言い方的に良い方に勘違いしてくれたか、もともと好意的な感想だったのか、レディフィルドの機嫌は良い。これから再訓練だから、機嫌を損ねたらやりにくい。

 姉さんは挨拶を終えると、魚沼先生に持たせていた菓子折りを汐ちゃんに渡し、砂浜を後にしようとした。

「魚沼先生、ちょっと聞きたいのですが……」

 俺は義兄にちらっと睨まれる。

「音って見えますか?」

「何を言ってるの、あきら?」

「……冴、黙っているがいい。今は義弟と話している。して、音が見える?」



 冴姉さんがぴたりと黙った。


lllllllllllllllllllll

キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

汐ちゃん。レディフィルド君


色々感謝です。

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