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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
冴と魚沼(11月7日{木}~11日{月})

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転3(11月11日:冴と魚沼)

lllllllll

驚いたのです。

lllllllll






「ユキ君」

 私の後ろにいたのはカトリーヌ様でした。私の手をそっと取ると、縁側の方に行って、そこにあった椅子に私を座らせます。電気がついていないけれど、何かの灯りがあるのか外は仄かに明るく。遠くの座敷ではタカおじ様の笑い声や、賑やかに囃すみんなのさざめきがとても楽しそうです。

 カトリーヌ様は私の傍らに片足を付き、何だかとても眩しい者を見るかのような目つきで私を見るのです。だから恥ずかしくて。でも視線を逸らすのは失礼かなと戸惑ってしまいます。

「貴女はとても母親に似ていますねぇ」

「お母さんを……母を知っているのですか?」

「投げ槍君の息子、刀流君の恋人だったからね。刀流君の一番バッタ君と仲良かったですけれどもねぇ。少なからず仲間は皆、彼を知っていて。そうそう、『刀流』君って八雲君は生まれた時に立ちあったし、おんま君は名付け親なんですよ? 後剣君は彼の研究の場所を工場に掛け合ってねぇ。投げ槍君は彼の頭がいいのも無頓着だったから。私は少し離れた場所の教会で、彼の通っていた研究所も近くて。デートも兼ねてたのか、アキ君を連れて……二人とよくお茶したんですね」

 タカおじ様の『仲間』は全員そう言う繋がりで刀流さんを、そして母の事を知っているのだと思うと、やはり不思議な気持ちになります。でも次に続けられた言葉に私は驚くのです。

「それに彼女とは暫く一緒の教会に生活していたんだよぉ」

「え?」

「正確には……彼女を閉じこめたんだよねぇ。牢の中にね……」

 今までと違う、急に投げられた『牢』と言う重苦しい言葉に私はオドオドとしてしまいます。

「な、何か母が悪い事をしたのですか?」

「そう思う? 悪い事したって?」

 牢に入れていた、その事自体を嘘を言っているようには聞こえません。けれども、私の母はそんな事をされるような事をしないハズだから。私は少し考えて、

「私の母は悪い事なんかしません。けれどカトリーヌ様がそうするという事は、余程、何か理由があったのですよね?」

 そう言うと、クスクスと笑って、

「やはり貴女はアキ君に似て、疑う事を知らないなぁ」

 頭をさらりと彼が触ると、黒い髪がまるで金色に輝いているように見えます。

「アキ君は綺麗だったよ。友人の息子の、恋人と知っても魅かれるほどにね、あの人は美しいよ。宗派など越えて、巫女と言う血筋にふさわしい美しい心があった。まるで……」

 そう言いながら、遠くを見て、

「私は彼女を教会の奥深くに作られた牢に閉じ込めた。鍵は私が持って、世話をしたのは敬虔なシスター達。投げ槍と刀流が探してるのは知っていたけれど、言わなかった。彼女はあの事を刀流君に話したろうか……」

 空には細かな星があって、キラキラと静かに瞬く中、電気のないその部屋にカトリーヌ様の声が響きます。

「彼女はそこで身籠った、君を…………」

 その時、がしゃん、と、大きな物音がして。私はビックリして席を立ってしまいます。

「往生際が悪いぞ、ぎょぎょ!」

「風呂に放り込め、寿々樹」

「あぁっー? 俺が? アホ賀川はどこ行った。はぁ~使えねぇな。まあ、ロリが判明した小父貴の為なら仕方ねーか!」

「俺は寿々樹、お前のようにロリじゃないぞ!」

「ほら、冴ちゃんもお風呂に行って来て」

「でもその、鉄太様が戸惑ってますし。葉子お母さんっ、きょ、今日の所はその……」

「ユキさん、冴ちゃんをお願い! カトさんもちょっと動いてちょうだいな」

 カトリーヌ様は少しだけ目を泳がせた後、私から視線を外して、

「はいはい、ぎょぎょ君を捕まえればいいのですねぇ。そのまま大きい方の風呂に男子全員で入ってしまいましょうかぁ」

 茶色の瞳が暗闇だとはっきり光ったのが見えたのは私だけでしょうか? 途端に金色の蛇が放たれ、ぎょぎょのおじ様の足に絡みます。でも次の瞬間には眼も髪も落ち着いた暗い色に戻っていました。

「うぬぅ。不覚。そんな所にカトリーヌが居るとは」

「ほら、行くぞ」

 ニヤッと笑った後剣のオジサマと鈴木さんがズルズルとぎょぎょのオジサマを引っ張って行きます。

「タオルは後から持って行くわ~、で、八雲さんは?」

「もう少し飲んでるわさ、葉子」

「じゃ、ユキさん、冴ちゃん、お風呂済ませちゃって?」



 何だか、大切な話をしていた気がしたんですけれど、話が途切れてしまいました。それは気になるのですが、冴さんが戸惑った様子です。

「私とお風呂は嫌ですか? 冴さん」

「そ、そんな事はないのよ? でも今夜……そのね。そういう事は覚悟の上ですけれど……お昼にキスしたばかりの殿方ですのよねぇ」

 そっと口に手をやりながら考える冴さん。その仕草がとても色っぽいです。大人の女性にのみ漂う色香は、昔の冴お姉様には感じられなかったもの。前も綺麗でしたが、それはただ表面的で、今のように誰かを引き付ける様な柔らかさではなく、強烈な社長としてのカリスマ性と言った感じでした。

 ほう……っと溜息をつきながら、冴さんは思い出したように、

「玲はどう?」

「わからないです。つ、疲れたのじゃないかと思います。鍵盤ハーモニカを鳴らしていたのですが、何だか聞いちゃいけない気がして」

「そう。笑って過ごせるようになれば良いけれど」

 そう言うと、冴さんは溜息をついて。

「貴女だけしか見えないのに、貴女だけが見えなくなってるのね。本当に不器用な子だわ」

「わ、私ですか?」

 冴さんは私の肩に手を置き、賀川さんに似た黒い視線を私に向けて、

「玲も変わっているけれど、ユキちゃんも相当ズレてるから、噛みあうのは大変なことねぇ」

 そう言ってクスリと笑うのでした。


llllllllll

うろなの雪の里(綺羅ケンイチ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9976bq/

後藤剣蔵(後剣)さん


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』

『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。


お借りいたしました。

問題があればお知らせください。

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