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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月31日

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211/531

続・収穫祭中です

lllllllll

楽しさの合間に。

lllllllll








 会場は海の家ARIKA。夏にイルカさんの絵を渡しに来た場所です。

 ハロウィンは盛況でした。

 何人か知った顔も見ます。

 席は魔女姿の司先生と一緒だったのです。他の子は知らない人でした。

 そう言えば、清水先生にこないだの試合に勝ったお祝いを、タクシーの中で言い忘れていました。

 傍に行って告げると、帰りのタクシーでもよかったのにと言いながら『お義父さんの所覗いてくれたんだってね、ありがとう』と言われました。早く栞が届けばいいのにと思います。何か、手伝いになったでしょうか? ……もしかしたら要らないお世話だったかもしれません。でも重みのある表情の司先生のお父様が、額に皺寄せながら『何にしようか』と考えて唸っているのを思い浮かべたら笑ってしまいます。

「良い知らせが来ますように」

 そう言うと清水先生は首を傾げながら、何となく頷いてくれます。私は笑いながらその場を離れると、

「まぁ、お義父さんに認められたし、双子の赤ちゃんが生まれてくれて良いこと尽くめ、と言う事にしておこうか? うん、Win-Winだな」

 そんな事を他の男の子と喋っているのが聞こえます。

「でもまぁ、武闘派のお義父さんに認められたって事は、しばらくは会った時に勝負の相手でもさせられるんじゃないんですか?」

 っと、突っ込まれていましたけれど。

 戻ってから司先生のお腹を触らせてもらったり、写真を撮って貰ったりしながら、楽しい時間を過ごしたのでした。






 会場であるARIKAはそこここで盛り上がっていました。

 私は誰にも気づかれぬ様にそっと外に出ます。

 砂浜に走って行く風。

 海が。

 同じリズムで波を刻むのです、きっと、ずっと。私が居ても、居なくても、海はずっと昔から、そしてそれより先も、見果てぬ未来まで同じように。



 私は知りません。

 昨夜、この浜で繰り広げられた戦いを。

 今日この会場で普通に笑っていた汐ちゃんが、攫われそうになった事。

 その時、賀川さんに『花』を届けてくれた白髪の郵便屋の少年と、やっと癒えた足で賀川さんが、彼女の為に走り、シャボンの少女がその者達を閉じこめて回ったり、少年に見えるお爺さん口調の御仁がその剣を振るったりした事も。信じられないほど大きな鳥がそこを飛んだ事も。

 その裏で『水羽』さんが、『千里』さんと、『夏』の事を穏便に済ませ、邂逅していた事も。それでタカおじ様が眠りに落されて、玄関口で倒れていた事も。

 私は何も、何も、知りません。



『あかちゃんいるの?』そう聞かれた小さな子供の声を思い出すと気持ち悪くなります。



 モールで買い物を終え、賀川さんを待っていた時に聞こえたあの声はやはり同じだった気がします。

 その時の賀川さんの体がおかしなほど熱を帯びていた事を思い出して。

 聞きたいのに聞けない、私は知らない事が多すぎて。

 もし、私が知らなくていいのなら。私は自分の得意な事を……そう絵を描こう、そう思っているのですが。絵が……

「どうして?」

「何が『どうして』だ?」

 何の気配もなかったのに、後ろに司先生がいました。葉子さんに持って行くように言われたコートを肩からかけてくれます。

「司先生、体を冷やしちゃダメですよ? 妊婦さんなんですから」

「大丈夫だ。妊婦になって暑がりになってしまってな。それでも気をつけてはいるがな」

 魔女服に似合う黒の大きなストールを自分にかけながらそう言います。司先生小さいから、すっぽり隠れる様な感じで、確かに暖かそうです。

「どうか、したのか?」

「いいえ」

「何もないようには見えなかったんだが。配送に来た賀川の様子も何か……おかしかったしな」

「賀川さんが?」

「動きにキレがないというか、何だろうな」

 司先生はテラスにあった長椅子に腰かけます。無言で隣を示されてそこに私も座りました。

「どうしたんだ? 思いつめた顔をしてるぞ」

「そんな事ない、です」

 司先生は優しく笑うだけ。否定も肯定もせずただじっと私の言葉を待ってくれます。どんなに誤魔化しても、まるで見透かされているようで。それでいて嫌な気持ちがしないから、つい口が緩み、

「いいえ、ただ……」

 私はさっき触らせてもらったお腹をじっと見ます。

「この子達、愛されていてイイなって」

 ああ、と返事しかけた司先生が何かを考えた様に首を傾げ、

「ゆき? お前もお母さんのお腹で育って、育てられて。今はタカさんも賀川も、工務店の人達も。私だっているぞ? 夏にはベルさんから、お前への凄い『愛』を感じたが?」

 優しくそう言ってくれるので、わかっていますと頷きます。

「で、その子達のお父さん、清水先生、ですよね?」

「あ、当たり前だろう?」

 サッと司先生の顔に朱が走ります。その顔が可愛らしくて私は笑いながらも、溜息を付くように、

「ねえ、司先生? 私の父は誰でしょう?」

「それは……」

「ねえ、誰なんでしょう?」

 やっと、口に出来た疑問。

 母が好きだったのはたぶん、タカおじ様の息子さんです。



 でも、私は、彼の、本当の、娘では、ない。

 だれも、そう、言ってくれないもの。

 タカおじ様は娘とは言ってくれるけれど、孫と呼んだ事は、ないの、です。



「母は、誰と? どうして?」

 子供の声で『あかちゃんいるの? いないんならだれのあかちゃんをうむの? ないんだ。なら、つくるところ、みててあげる』そんな言葉が胸に突き刺さって……

「母の家系は巫女と言う職業で、娘の私をそれに無理矢理でも付けたいそうです。それは母の娘である事が重要で、基本誰が父でも……たぶん、いいのだと思います。なら私が、子供を生んだらその子もそう言われるのでしょう。誰が、父親でも」

 司先生が鼻白むのがわかりました。

 天狗さん達が来てくれなかったら、私は何をされていたのでしょうか。

 夏に見た鬼のお兄様も『子供』を望んでいたように思いました。

「お母さんも巫女にさせられそうだったなら、どこで誰と?」

 これ以上は……言っちゃだめ。こんなの、妊婦の司先生には胎教によくないし、特にタカおじ様や賀川さんに言えない、知られたくない。これ以上は口にしちゃダメなのです。

 答えは母しか、知らないのに。考えだしたら急に足元が崩れる様な感覚がして、自分の体の震えを押さえるように両手を握りしめていたのでした。



llllllllll

数日経ってやっと『怖い』事に気付いたユキ。

緩すぎ。

慌ただしかった十月が明日で終わる予定です。

明日はYL様に司先生の返事をいただいています。お楽しみに。

llllllllll

"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生、司先生、梅原勝也氏



キラキラを探して〜うろな町散歩〜

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

で、10月30日付、『汐ちゃん奪還戦』

レディフィルド君、汐ちゃん、他の配達人、海の家ARIKAを。



うろな天狗の仮面の秘密  (三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

千里さん





悪魔で、天使ですから。inうろな町(朝陽 真夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6199bt/

ベルお姉様お名前を。


うろな高校駄弁り部 (アッキ様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7660bq/

ハロウィンの章『10月31日』のパーティ内台詞と席順を少々。




『以下1名:悪役キャラ提供企画より』

『紫雨』台詞。とにあ様より



話題としてお借りしております。

問題があればお知らせください。



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