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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
6月24日

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続・説明中です


やっとよばれたな、おい。

 






  窓が割れた室内には爽やかすぎる風が吹いていたが、それだけに寒い空気が漂っているとも言える。

  そんな中、小梅ちゃんの言葉に清水の先生が頷いた。

「確かに何故タカさんが、そこが一番腑に落ちない。だけど梅原先生、待ってくれ。何で抜田先生がいるんですか?」

「抜田? 顔見た事がある……」

 それでやっと小梅ちゃんは奥にいた男に注目した。清水の先生は怪訝そうに、

「抜田 一元代議士ですよね?」

「代議士って衆議院の議員? そういえばうろな出身の議員がいるとか、いないとか」

 今まで沈黙して、壊れた椅子に座っていたバッタが動く。認めたくないが無駄に威厳があるな、やっぱり。奴は重く、だが口調は親しみやすく、口を開いた。



「抜田 一だ。他所から出馬したから。知っていてくれてうれしいね。まあ元だから、今はただの宅地建設取扱いのオヤジだよ。「うろ南不動産」、殆ど他に任せていたが、うろなに戻って来たんで宜しく。中学の先生達だそうだね」

「う……梅原 司です」

「梅原さんか、小梅ちゃんだね。前田が世話になっている」

 内容はさして無いのだが、人のよさそうな笑顔と作ったとは思えない口調、さりげない握手を両手で小梅ちゃんに振る。不遜な筈のその顔が仏のようじゃないか、政治家はこうやって人を騙すんだろうな。

「良い手だね。前田と魚沼、後数人で俺達はガキの頃からつるんでて。馴染みに『便宜』を図りに来ただけだよ。そういえば清水……渉君だったね、結局先生になったんだね?」

 気安く触れるんじゃねー……恨めし気にバッタを睨んでいた清水の先生がその台詞に驚いた。



「……オレの事、覚えてるんですか?」

「二度ほど会ってるよね?」

「二度?」

「ああ、一度目は海江田高校、確か生徒会会長として挨拶してくれただろう? その後、実は地震で被災した土地のボランティアでも見かけたんだよ。君、あっちの方の、年齢的に言うなら大学にでも居たのかな?」

「は、北東大学に在学してましたけど、よくわかりましたね」

「女性はすぐに綺麗に変わってしまうし、変装とかされたら流石にわからないけれど。元職業柄、一度会った人は忘れないよ? 特に君は印象深かったしね」

 バッタは清水の先生ともしっかり握手した。小梅ちゃんは一体何をやらかして覚えられているんだと言う目をしている。




「よいのみや ゆき さんは我々が責任を持って見守るよ。先生達にも無論、そうして欲しい」

 小梅ちゃんはその隣で強く頷き、更に聞いてくる。

「で、ユキは?」

「仮退院の手続きを取らせてもらった、後は通院でも良いそうだ」

 ぎょぎょは話は終わったとばかりに、資料をまとめはじめた。

「そんな急に……」

 不安げに心配する小梅ちゃんに、オレは言葉を投げる。

「今は賀川の、と、いるんだが」

「そう言ってたけど、どうしてユキを」

「ユキが海に行きたいと言って、連れて行ってるそうだ」

「海?」

 清水の先生は、ユキを説得する時に使った鍵として、小梅ちゃんは見舞いに来た時にでも時折聞いていたか、どちらも思い当たる節がある様だった。



「この部屋の状態については、詳しくは賀川のが知っていると思ってる」

 オレは奴に『病院に戻るな』と言った。賀川のはそこで『何故』と聞かなかった……

 それはココに戻りたくない、戻せない、ないし、戻したくないのだ。

 まだ死にそうだった彼女の体は完全に回復したわけじゃねぇ。それを押して海を見に連れて行く、可能性がないわけではない。

 が、用事が住めば逸早く戻したいと言うだろう。それを言わなかった。俺が怒っている理由も、ただ連れ出しただけにしてはキツかったのに、それに抗議もしなかった。

 彼女に危害を加える為に攫った、それはあり得ねぇ。あいつがユキに本気なのは、火を見るより明らかだ。ユキ本人には届いちゃないが。



「先生二人も、ここは内密に頼む」

「だけど」

「オレ達はうろなで嬢ち……ユキが安全に暮らせるように最大限やるから、ちいっと待っててくれや」

 小梅ちゃんはまだ納得いかない顔のまま、オレを見ると、

「何でユキの為にそこまでする? 私は中学の先生、彼女は高校生だし、学校に来てはいない。だがそれでも私達は教師だ、まだ未成年の彼女を導くのは当然だ」

 そんな殊勝な先生は少ない。先生の鏡、いや大人の鏡とも言えるだろう。清水の先生もそう思っているのだろう、それを公言する上司を持った事に誇らしげですらある。

 彼女はしっかりとした視線でオレを捉え、

「だがタカさんもコロッケ甚平も、抜田さんも。……貴方達は違う。ただ偶然に助けただけの女の子に何故?」



 人が良い、それだけで、見ず知らずの子供の親になろうとするなど流石に考えられないだろう。

 だがオレにはそうするだけの理由がある。

「偶然は必然だ。あの子を助けるのは息子の。刀流が最後に口にした望み……遺言だからだ」

 小梅ちゃんの言葉に答えて振り返ると、悪友の中年男二人が笑った。



赤いネジネジ回るネジ。


引き続き、先生二人、お借りしました。YL様、ありがとうございます。



後数話、24日、25日、28日がありますが。

この後、一時夏祭りに飛ぶかもしれません。

かも、で、未定です。

どっちがいいだろう?

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