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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月30日

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206/531

宣伝中です(謎の配達人)(うろなの平和を守る者)

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10月30日と11月4日の賀川目線ダイジェストになります。

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 憤り……何故、そう言う事になったのか、そんな事は知らない。





 夜勤明け、ユキさんが鈴木という男に攫われたのではないかと焦って追った日の事だ。



 電話が鳴ったのだ。……会社からだ。



 その後の労働基準を無視するように会社に呼び出され、そのまま仕事に出された俺。結局、ユキさんは八雲さんに送られ、絵具は家に戻った後に夕方タカさんと買いに行ったと聞いてホッとする。

 ただ、別れ際に不安そうな影を一瞬だけ俺は感じていた。『会社なんか休むから』と、言いかけた俺に先回りするように、『賀川さん、私は良いです。気をつけて下さい、行ってらっしゃい』そう言われ、踵を返されて、俺にはもう言葉が紡げなかった。



 そして会社に出た俺は、足を酷使しない様に勤務を終えた。

 夜勤後に休んでいたとはいえ疲れの中、『明日は又、夜勤だから。今から帰ればユキさんが起きているかもしれない。少し話してからでも、ゆっくり昼まで寝れるだろう』。



 そんな甘い事を考えながら会社を解放された俺の耳に届く『怪音』。



 近くは太陽があれば砂浜と海が見える場所。

 だが今は人影のない暗い夜半、見回すと目の前に不気味な一団を見つける事が出来た。白い仮面に黒い服。闇夜に仮面だけが浮いているようにも見えた。

 それは世界に誇るべき日本の某アニメ映画の、『物の怪』が、集団で湧いたかのようだ。黄金でもくれるかと思えば、その一人が袋を担いでいた。

 俺の視界に入ったそれに『予感』が襲って、見逃す事が出来なかった。

 三日前に負傷した足を見やって。

 車の扉を開け、道路を軽く蹴って。やっと本調子である事に感謝しながら走り始める。

 予感めいたモノが俺の足を突き動かす。皇さんや八雲さんに治してもらった事に感謝しながら。



「おいお前ら! 一体何やってるんだ!?」

「賀川のお兄ちゃん?」

「その声、(うしお)ちゃんか!?」



 そして当たらなくていい感がビンゴする。その中に入っていたのは人だった。

 この平和な日本の、それも『うろな』に、こうも堂々と人攫い? 数日前のユキさんの件と言い、冗談じゃない。自分の予感が当たった事に熱が上がる。

 それも……中身は知り合い……夏に浜辺で海の家ARIKAを開く家族、五人姉妹一番下の『汐ちゃん』だった。俺は夏の森で出会い、貰った石を胸に下げている。その石が見せた不思議な『幻想』を思い出す。



 舞い上がる風、光、イルカの鳴き声に導かれた『姉』の幼き声。



 俺は、神も悪魔も信じない。



 俺が願い叫んでも、救ってくれなかった神の存在など知らない。

 そして悪魔より怖いのは、人間の心に巣食う欲望だと知っている。

 笑いながら人の爪を剥がし、平気で飢えや苦痛を与えて。他人の体も心も支配するような闇を作るのは、生き物の中で唯一人間だけだ。その闇を何度も味わい、何年もいろんな場所で揺蕩っていた自分だからわかる、目の前のそいつらはソコの生物にんげんだという事に。

 物の怪の方がよほど夢があって可愛いのに。

 ただココに居る奴らはそれなりに本物の『暗殺者』か『仕事人』のようだったが、実行部隊であって、主犯格はいないように感じた。



 首から下げる青い石が見せた何らかは、ユキさんが虫と会話するようなおかしな現象に続いているのだろう。それをくれた汐ちゃんはそれに繋がっているというならば、彼女を攫う理由はその辺にあるのは何となくわかる。

 不可思議……理解は俺には不可能だが、きっと何らかの因果や法則があって、彼女達にはそれが自然と動かせる。動かせない者にとって、彼女達はきっとそれを働かせるための『鍵』に見えるのだろう。

 そんな事が出来る前に、彼女達はただの人間であるというのに。



 俺は飢餓感により振るわれる本能的な暴力や、無理矢理に身に付けさせられ得たスキルに、庇護集団エンジェルズシールドでは磨きをかけ、必要に応じて振るった。しかし事情により三年半前に折れた牙。それを再び研ぎだしたのは、ユキさんが攫われるかもしれない、更にその前に自分が生きている事が盾になると知ったからだ。

 ユキさんが自分の知らぬ所で攫われないよう……たった三日前に何とか助けだした矢先。

 まさか別の子が攫われる所に遭遇するとは思わなかった。鈴木の時のように思い違いではないか、そう思うには、人を袋に詰めてある時点でアウトだろう。

 沸騰しかけた気持ちは押さえこむと、静かな怒りと力になる。

 ユキさんのもしもの『その時』が来ぬよう蓄えはじめた力。それがこんな形で役立つなど、全然嬉しくはない。だが力はないより、こんな時はある方が良いのだ。善悪が付かない暴走を帯びる力であろうと。



 三日前に負傷した傷は奇しくも数時間前に癒えていた事に感謝しながら、敵を倒し、汐ちゃんを追って俺は走る。ユキさんではないけれど、ユキさんはたぶん彼女を友と思っているし、俺にとっても夏の一日を楽しく過ごした仲だった。



 たったそれだけの繋がりであっても、笑いあった仲だから、関わらないなんて選択肢はなかった。

 その先に居たのは謎の郵便配達人レディフィルドだった。ヤツは汐ちゃんを連れようとした者を俺と同時に倒した。

 交錯するは、俺の黒とヤツの青。

 語り合う事も無く、汐ちゃんを想う『同志』だと何故か知れた。イヤ同志と言っても『想い』なら彼の方が重い、俺がユキさんを想うくらいに。

 そして汐ちゃんを欲しがる者達は彼女を『七の継承者』と呼んだ。頭と呼ばれ、語る男は手前勝手なくだらない持論を繰り広げる。

 聞くに付けて歯の根が噛みあわない程の怒り、憤りが湧く。

 俺達を盾に取ったつもりで、汐ちゃんの言質を取ろうとする。その中でレディフィルドの台詞が響く。




「悪党ってのは、どーこ行ってもおんなじなのな」



 その唇に浮かぶ、にんやりとした含み笑みに、俺自身の唇にも笑みが浮かぶのを感じた。にたりと。



「そりゃそうだろ。なんたって悪党なんだから。やる事は一緒(同じ)なんだ。そんな奴ら、たかが知れてるだろう?」




 こんなやつらの好きにはさせない。俺の耳には遥か上空の『援軍』を捉えていた。彼が上手く動くまで俺とレディフィルドは無言で『時間稼ぎ』を決める。

 汐ちゃんの栗色の瞳が夜闇の中でも美しく見えた。

「へ……?」

 だが俺達の言い草に意味がわからず、キョトンとしていて可愛らしい彼女。



「大丈夫だから、ね」

「汐(お前)は、目ぇ閉じてそこで待ってろ。こんなん、すぐ終わらせてやる」



 レディフィルドは背中を預けるのに足る者だと、直感で感じつつ同時に同じ言葉が口から溢れる。



『『かかってこいよ。遊ばせてやる』』



 時間稼ぎに受ける傷は深く浅く、俺達を苛みながら反撃の狼煙を上げる冷静さを構築してくれた。



 俺はここから彼女を囲む不可思議、それにまつわる騒動を俺は見る事になるが、それは俺が語るべき事じゃないだろう。見なかった事、知らなかった事、それで良い。

 世の中には不可思議がある。

 例えば、人間が乗って空を飛べ、軽の車を持ち上げるなんて……あり得ない。

 でもそれが『事実』でも、シャボンが見せた『夢』でもどうだって俺にはイイのだ……実は空を飛ぶのはちょっと楽しいと思ったのは秘密だが。



 とにかく汐ちゃんが無事で、ARIKAの母娘達が笑って過ごせるならそれでいい。



 きっとレディフィルドやシャボンの魔法少女や子供のくせに爺さん口調な少年もそう思って動いているのだろうと思う。

 この戦いの中で、俺が何か得たとするならば。

 十月の終わりを一つ前にした日に。

 白髪に青の瞳をしたレディフィルドと言う名の男の一面を少しばかり知り。

 十一月の四日の日に。

 白髪の彼だけではなく、先月に助けをもらった天狗仮面とも再会し。



 そこで再び。手を取り合った仲間として、その繋がりを感じた事だ。



 ただし天狗仮面はやはり変わった出で立ちで、レディフィルドは飄々とした生意気な奴だという印象は変わらなかったけれども。


な。

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キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

汐ちゃん。レディフィルド君、他二人の配達人。獣面の男達



うろな天狗の仮面の秘密  (三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

天狗仮面様


四日分より。

小藍様と打ち合わせた宣伝です!

勝手なネタバレじゃないよ?

詳しく知りたい方は…小藍様宅の更新をお楽しみに!


お借りしています。問題があればお知らせください。


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