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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月30日

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205/531

説明中です(悪役企画)


lllllllllllll

どうなっている?

lllllllllllll

 







 今、賀川の端末には『八雲医院』に、連れ去られたユキの携帯はあると映し出されていた。

「八雲さんが? いや、まさか。タカさんの知り合いだし。連れて行ったのは男だと……」

 そう思った時、賀川の敏感な耳はおかしな言葉を拾った。

『ふふふ、言う事を聞かないとお前をめちゃくちゃにしてやる』

『やめて、いやぁ』

『ほら、こんなに濡れて』

『そんな』

『口を開けろ。俺の……』

 まだ足は完全に治ったとは言えない、違和感が残っている。ココで無理をすれば皇さんに治してもらったのが御和算になるだろう事がわかっていても、賀川はそれ以上、じっとなどしていられなかった。

 八雲医院はそのビルの地下にあるのだが、音は地下からではなく、一階にある別の入り口から漏れ聞こえていた。ただ、女性の声はユキではない気が賀川にはしたが。もう誰が居るのか、戦闘になって足を無くすかもしれないなど考えていられずに、その一階の扉に手をかけた。

「ユキさんを攫ったのはお前か!」

「アホか、俺以外に誰がいる」

 手前のカウンターで賀川に答えた凶悪な顔をした男が、コーヒーを差し出した。

 その後、端末を弄って遊びだす。すると再び怪しげな声や女性の喘ぎ声が……音声については割愛するが、音が漏れているのはイヤフォンからだ。小さくて常人には聞き取れない音。それは怖ろしく極細の音を拾える賀川だから聞こえただけだ。

「と言うか、はっ。攫ったとか、てめぇ、アホか。あんな所に女子を放置する無神経さの方が許せん」

 イカガワシイ何かを聞きながらも、態度だけは鷹揚な男に賀川は何とも言えない気分になる。そこでやっと賀川には回りを見回す余裕が出来る。

 そこは美容室と喫茶店が引っ付いたような感じだった。

 幾つかのテーブルやソファーの向こう側には、壁に取り付けられた大きな鏡に、二台の散髪用の椅子。そして洗髪用椅子も一台別にある。白っぽい清潔な室内は綺麗な淡い造花にレースが飾られ、どこかのウェディング展示場を思わせる華やかさだ。

 その豪華な部屋の白いソファーにユキが座っており、賀川に気付く。

「あ、賀川さん、今ココに居るってメールを送った所だったんですよ?」

「なら、……何で電話くれなかったの」

「だって、運転中かな? っと思って? 駄目でしたか」

 確かに今まで見ていた地図の端に、申し訳程度に輝いた新着メールをクリックして読むと、

『お店の前で立っていると補導されると言われたので、北うろなにある『鈴鳴る』と書いて『シグナル』と読むお店に来ています。わからなかったら電話くださいね』

 そう書いてあった。

 イカガワシイ声の動画を見ている男ではあるが、どうやら……ユキを思って連れて来てくれたらしい。

 だがその男、目つきが鋭くガタイが良く、決まったリーゼントはちょっと見た目に近寄りがたかった。

 しかし、その印象は間違いらしい。

「おはようございます。今日もここに居て良いですか? 鈴木さん……」

 そう言いながら店に女の子が一人入ってくる。

「おはようさん、二番のテーブル使って。わからない所はあった?」

「いいえ、大丈夫です。でも後から数学お願いしまーす」

 彼女が席に座って勉強を始めると、

「そこのアホ! コーヒーが冷めるだろうが。早く飲めっ」

 どうやら女子と男への扱いが全く違うようだ。賀川は言われた通り、席に座り、コーヒーを手に取る。だが飲む事は出来ずにいた。ユキはソファーから移動してその隣に座った。

「ユキちゃん、何度見てもかわいいね。学校行ってなくて暇だったらここに通ったらどう? そこに散髪台とかあるだろ? 週に一回は美容師の講師を呼んで無料授業、髪のカットやセットも俺がやってるし。ここでは高卒認定試験を目指す子もいる。勉強はしなくてもここで寛いで行けばいい……」

「……ユキさんはプロの絵描きなんだよ」

「か、賀川さん、まだ、プロなんてそんな」

「今度、モールに飾られる絵を描くんですよ、彼女」

 賀川は自慢げに目の前の男にそう言い放つと、リーゼントを撫でながら、

「それは凄い。ユキちゃんは画家さんだったかぁ。ごめんね、てっきり補導寸前の女子かと思って。そういう子を見かけたら出来るだけココで過ごさせているんだけどね」

 そこまで優しくユキに言った後、

「そう言うてめぇはアホのフーテンとかいうなよ、おい」

「一応宅配屋に勤めている。賀川だ。今日は夜勤明けで無職じゃない。お前は一体……」

 そこまで言った時、聞いたような声が割り込んでくる。

「トキ、お前が何でここにいるさ?」

「八雲先生!」

「ねーちゃん、このアホの知り合いかよ?」

「珍しく男に声がすると思ったら。あー、そいつは前田の子飼いだよ」

「お、小父貴の? じゃあこいつが例の薬が効かなかったアホかよっ?」

「ユキさん、この女性はタカさんの知り合いで医者の八雲先生」

「は、初めまして。宵乃宮……いや、前田 雪姫です」

「前田に噂には聞いてるよ『王』と言うより、『姫』だね。将棋にはない駒だけれど」

 こてん、と首を傾げるユキさん。

「トキ、こいつは鈴木すずき寿々樹(すずき)。ああ、これ本名だからさ。私の遠縁だわさ」

「お前、今、俺の名前を笑ったろう! アホが。前後で漢字が違ぇんだよっ」

 漢字が違うとはいえ賀川は何故、親も苗字と同じ音の名前など付けたのだろうと思う。

 だが簡単に話を聞くと、元は名字は違っていたが事情に伴って引き取られたのが、八雲の鈴木家。それで名字と名前がダブったとそんな理由だった。ちなみに賀川が八雲の苗字を鈴木と知ったのは今だった。

「鈴木の前の苗字は?」

「山田……」

 興味本位で聞いた苗字、鈴木にしろ山田にしろ日本の大代表的な名字ではないかと思う。ただ代表的な苗字にあっても、それが二回続くとかなり珍しい名前になるのだなと考え、ついニヤリとした賀川に鈴木が鉄拳を握った。その時、

「鈴木さーん、数学お願いしますぅ」

「ジュース持って行くね、待ってて」

 賀川に向けた凶悪な表情とは打って変わった優しい口調で、端末を閉じた。そしてさっき入ってきた女の子にジュースを持って行き、勉強を教え始めた。

「賀川さん、ここフリースクールなんですって」

「フリースクール……」

 不登校の子供が通う施設で、学校認可はない。

 だがいじめやいろんな理由で不登校になった子供達の居場所になっているのは間違いないようだ。

「っと言っても、ココは女の子限定さ。本当は美容室なんだしさ」

 また二人ほど女の子が入って来て、スズキは楽しそうに勉強を教えている。超凶悪そうな顔をしているが根は優しいようだ、女子限定で。

「髪切り本業そっちのけでやってるわけだ」

「鈴木さん美容師なんですね?」

 そう言うと、八雲は微妙な声で、

「いや、本当の本業は薬剤師なんだけどさ。ああ、美容師免許も持ってるけどさ」

「ええ??」

「まあ、私が働かないから薬剤師もほぼ要らないんだけれどさね」

「じゃあ、俺が飲んでた薬は……」

「寿々樹の調合だわさ。うちは既製品より色々変わっているから。私も薬剤師は持っているけれど、日本ではあの子がやってくれるので、任せてるんだわさ」

 ユキが微妙な顔をしたのに賀川も八雲も気付かなかった。何の薬を鈴木が調合して賀川が飲んでいたのだろうかと。

「ね、ユキちゃん、こっちおいでよ」

 鈴木に呼ばれ、ユキが席を離れたのを見計らって。賀川は先程まで鈴木が扱っていた端末を引き寄せ、覗いた。

「ああ、それ」

「…………え、えろげー、か」

 賀川が見ている事に気付き、慌てて鈴木が戻ってくる。

 そのゲームは猟奇要素の入ったエロカードゲームだ。掴まえてきた子を奴隷にしたり、嫌がる子にはお仕置きしたりする。手持ちは課金するか、やり込むかしないと三人以上枠が増やせないので、自分に合わない子は処分したり。

 そのゲームを賀川はプレイした事はなかったが、工務店の者がやっていたので、基本は知っていた。さっき漏れ聞こえたのはその会話ゲームだったのだ。

「プレイネーム、鈴木ってそのままだし。わ、枠……人って……事は重課金者か、相当やり込んでる?」

「アホかっ! 課金なんかするか! 人のゲームに触るな。やっとレベ上げしてモーションゲットしたんだぞ、アホが!」

「リアルじゃ、血が嫌だって医者を諦めたくせにさ、何でこんなゲームが好きかねぇ……」

「うるせーぇ! 何が悲しくて、汚ぇヤローの血塗れを見なきゃなんねーんだよ。可愛い娘の血塗れだから良いんだろうが、アホが! その前にうちの子は怪我させたりしネーし」

「鈴木、あんた調子に乗って私をアホって言ったさねっ!」

 八雲が文句を言おうとした所に、ユキがこっちを見たので、鈴木は追求から逃げる為に、

「ユキちゃん、せっかく来たんだから、毛先のカットか、髪を洗ってあげよう」

「え、そんな、ええっと」

「ほら、遠慮しないで。髪の泥パックもおススメだよ。そこのアホは何か得意な科目は?」

「俺、勉強はダメかな」

「はっ! 脳筋かよ、使えねぇ~」

「いや、トキは英会話なら使えるかもね」

「おお、英語か、じゃアホ賀川、そこの子の英単語頼んだ。じゃ、ユキちゃんはシャンプー台にどうぞ」

「ええっ? どっちにしてもアホは取れないのか」

 こういう流れでユキが髪を洗って、カットする間、賀川はそこに来ていた子の英単語チェックに励んだ。その後に、二人はスーパーに戻り、商店街で買い物をする予定だったが、その時、賀川の電話が鳴った。

 

lllllllllllll


『以下1名:悪役キャラ提供企画より』


『鈴木 寿々樹』吉夫(victor)様より。


彼は『昇格』組となります。リーゼントのエロゲーマー。

(ゲームだと男側の声は入ってない事が多いですが、

演出なので突っ込みはなしで)

強面で、腕っぷしもそれなり。悪い人ではない、はず。

北うろな『鈴鳴る』でフリースクールをやっている、善良? な町民でした。

賀川の誤解……失礼いたしました。

彼については死亡などはありませんので、折りがあれば……

新しいうろな町民を、よろしくお願いいたします。


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