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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月30日

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204/531

移動中です(悪役企画)


lllllllllllll

夜勤明け

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「放して、お願い、鈴木さん、ああっ」

「どんな不細工な女でも、内蔵は綺麗だ。さあ、バラバラになるのと俺の奴隷になるのはどちらが良い?」

 彼の出したカードで前者を選ぶ者はいない。大抵後者で。どんなに反抗しても次のターンで大人しくなる。

「ふふふ。良い子だ」

 言う事を聞かない女の子はこうやってお仕置きして、皆、奴隷にしてやる。どうしても言う事を聞かない場合は……

 男はそう思いながら、凶悪な表情で目の前の女を虐げ、その心を喰いつくして行った。



 男はリーゼントで、ブラブラとうろなの町中を歩いて行く。

 平和な町、中学も高校も、良い先生達や生徒が多い。更に来年度から夜間高校も始まると言う。

 だが心に隙間のある女生徒はどこにでもいる。平和であれば平和であるほど、暗闇は入口が狭く、奥は深い。深い奥に落ちている女子は男の恰好のターゲットだ。

 彼の守備は小学生から高校までと、ロリ路線である。

 そして彼のアンテナに目の前に立っている少女が引っ掛かった。



 北の森、その近くにあるスーパーの前。

 そこに立っていたのは信じられないほど真っ白な髪をした少女、赤い目はどう見ても日本人として異質。上品な感じのワンピースに身を包み、そこに立っていた。年の頃は高校、もしかすると中学くらいかと目を走らせた。今時分、学校は給食も前の二時間目。こんな姿の女の子が、こんな時刻に街中をふら付いている、それだけで充分に捕獲対象だ。服装的にそれなりに良い家の子だろうが、こんな時刻に学校にも行っていないとすれば、何等か問題のある生徒には違いない。

 彼は動いた。

「君、退屈?」






「ちょ、ユキさんが動き出した?」

 賀川は車を駐車場に入れながら、アラートが鳴ってその動きに気付いた。



 今日、賀川は夜勤明けだった。いつもなら鍛錬の時間である早朝に戻るのだが、足の負傷が八雲と古本屋の主の手で早急に癒されつつあるとはいえ、鍛錬については大事を取って休みを言い渡されている。

 だが仕事については軽いものに回してはもらったが、きちんと働いていた。

 夜勤前は、

「今日は森で絵が描きたいのです。出来れば一人で」

 そう言ったユキを森に送って賀川は仕事に出ていた。攫われたのはたった数日前の事で、保護者であるタカも賀川も反対した。だが、彼女はどことなく落ち着きがなく、家に縛るのは精神的に得策とは思えなかった。ユキも考える所があるのだろうと結局は納得し、彼女は夜、一人で森で過ごしていた。

 森のアトリエまで彼女を送り届けはしたものの、携帯は絶対に身に付けるよう約束し。

 夜勤の合間、ユキの携帯の動向に釘付けだった賀川。だが彼の心配を余所に何事もなく朝を迎え、夜勤明けにユキからの電話が鳴った。何か悪い知らせでないと良いがと思ったが、

「どうしたの、ユキさん?」

『と、取るの早くて驚きました』

 今まで君がどこかに行かないか心配で情報を眺めていたとは言えない賀川は沈黙した。ユキはそれ以上は特に気にした様子もなく、声も至って普通に、

『今まで起きていたので、少し寝る予定なのですが。もし良かったら今日、商店街に買い物に行きたいのです。絵の具が足りなくて。付き合ってもらえますか?』

「もともと、森まで行くつもりだったから早めに迎えに行こうか? それか絵具を買って届ける?」

 賀川がそう聞くと、首を振るような間があって、

『今日はうろな北東にある大きなスーパーにも行ってみようかと思ってます。森を一人で歩きながら考え事もしたいし、そこで待ち合わせしてはダメ?』

 ユキが言っているスーパーは、いつも森に入る時に使う、うろな家と言う名のバス停よりも海寄りにある。それでも彼女が道に迷う事はないだろう。

 ただ本当は森に入ってユキを迎えてから、スーパー、商店街と回ったほうが、賀川的には安心だったが。一人で考え事をしたいと言われると彼にはそれも憚られた。それでも声をかけて来る所を見ると、彼女も数日前に攫われた事を重く感じているのだろう。足は完治していなかったが、賀川はそれを良しとして、ユキと約束する。

「わかったよ、使うルートを教えて。時間は何時にする?」

 十時頃……その時、まだ朝五時だったから賀川はユキのGPSが指定範囲とはあまりに違う道を通った際や、急にそれが消えた場合にはアラートが鳴る設定にして、会社の詰め所で仮眠を取った。



 九時、目が覚めると賀川は急いでユキの現在地を確認する。約束には一時間もあるのに、もう約束のスーパー近くにユキの反応があった。

「ユキさん、余り眠れなかったのか?」

 シャワーを浴びて、洗っていた包帯のような布を腕や足に巻き付けて着替えると急いで白の軽車に乗る。

 基本賀川は服を二種類しか持っていない。

 会社の制服と、私服の二つ。それも私服は判子を押したように無地ポロシャツにジーンズ。時期によってコートかジャケットを羽織る程度の差しかない。

 夜寝る時も上着なしの私服のままだ。きちんと風呂に入って着替えてはいるが。

 ごく幼い頃はピアノの発表会に着飾ったり、寝間着も着ていた賀川だが。攫われてからは誰も彼にそんな習慣(TPO)を教えなかった。商品として小奇麗にされる事はあったが、大概夜も昼も同じ服。

 エンジェルズシールドでいつ呼び出しがかかるかわからなくなると、更にそのやり方は根強くなり、いつ何が起きても良いように靴や上着も側において放さないようになっていた。ズボンのポケットの中には運送屋として持っていておかしくない小道具と、会社の帽子が入っている。

「よかった。ユキさん、偉いな、ちゃんと携帯も持ってるし」

 そう思いながら郊外店だからこその広めの駐車場に車を停める。駐車場に入れる一瞬に、ユキさんの姿を見つけた。その前にガタイの良いリーゼントの男が一人いたのが気にかかり……そして動き出したGPS。

 アラートが鳴ったのだ。

 もしかしたら自分の白い車を見つけて、動き出したのかと思ったが、駐車場に向かってくる気配はなく、それはスーパーを離れていく。スピード的に歩きだ。この辺は一軒家が多く、車では入り込めない場所が多い。その為、賀川は車をそのまま乗り捨て、後を追った。

 足はまだ完全ではない、それでもだいぶ癒されている事を感謝し、出来るだけ急ぐ。

「自転車でも拾えればいいけれど」

 だがこないだの件で懲りているから、勝手に借りる事は出来ない。

 電話を鳴らそうと思うが、ユキさんの携帯に気付いて電源が落とされたらそれこそ跡が追えない。発信機まで持たせたくはないと思っていたが……舌打ちをしながらタクシーなどに連れ込まれない事を祈り、その姿を必死で追った。




「こ、ココは……」

 辿り着いた場所に賀川は唖然とした。

 運送屋の賀川でも知らないような小道を抜け、遠回りに辿り着いたうろな北の駅寄りの場所。

 その場所自体は、賀川がこの頃知っている場所だった。



『八雲医院』



 先日、古本屋の主に足の回復を促してもらい、昨日などは夜勤前にユキを森に届けた後、薬をもらいに来た場所でもあった。



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『以下1名:悪役キャラ提供企画より』


リーゼントの彼。

名前は明日。

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