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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月27日

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200/531

捜索中です(悪役企画)


lllllllllllll

紡がれる罠。三人称。

lllllllllllll







「こんな場所でも嗅ぎつけられるとは、奴らの検索能力も低くないと言う事か?」

 年の頃は四十くらいの黒いスーツの男は小さな少女に導かれ、呟きながらその場所に入っていく。

 暗い場所だが、近くの工場は夜も稼働しているせいか、その灯りと、天井が酷く壊れており、町明かりが空に反射した様にして入り込んで、その場を照らしている事もあって、歩くには困る暗さではなかった。


 ココは今朝、賀川が天狗仮面と白き鳥のドリーシャの導きで、ユキを攫った男達を見つけた場所だった。何かを結んでいたような縄が柱にかかっているのを少女が笑いながら蹴り、

「どうかなぁ~でもこれだけあるこうじょうから、よくみつけたとおもうって、かおるおねえちゃんも言ってたよ。ほらソコソコ」

「ふ、これは細かくやられたな。これが人力とはな。『恵』……『金剛』を探せ」

「いえす、ますたぁ」

 スーツの男に静かに命令されると、カメラかビデオを起動させるような、微かな金属音をさせながら二人の二歩半後ろを歩いていたセーラー服の少女『恵』が答えた。手にしていた水筒をスーツの男に渡した。

「頭が水没していたのは残念だったな」

「きかいはミズによわいものね」

「恵は違うがな」

 短い紺のスカートを揺らしながら、無表情の女子高生が壊れた廃品だらけの工場を歩んで行く。身長が低いので中学生くらいにも見える無表情な少女。時期的には少し肌寒そうな半袖白セーラーの襟に赤いチーフが揺れて闇に映える。背中にはギターケースの様な何か筒状のものを背負っている。彼女は暫し、ただよう様にその場を歩き回った。

「ひまだよう。かえりたいよう。てづかクン!」

「まあ、少し待ちたまえ、紫雨。ほら、私の入れた緑茶でも飲むといい」

「やだ。りょくちゃなんて、おやじくさいの。それもドク入ってそー」

 少女紫雨に拒否されると、手塚と呼ばれた黒スーツの男は鼻で笑って、近くにあった壊れた椅子を引き寄せ、座ってお茶をさも美味そうに飲み始めた。

 二人の様子も気にせずにフラフラ歩いていた恵。間違う事なく人間に見える。だが彼女は人間ではない様だった。何故ならいくら明るいとはいえ、小さな、小指の爪にも満たない何かを的確に探し当て拾えるのだから。どう見てもゴミにしか見えないソレを彼女は持って、

「いえす、ますたー。あい、ふぁいんど、いっと」

 たどたどしい英語で彼女はそう言い、

「どうだ、使えるか?」

「いえす、ますたー。ぷりーず うぇぃてぃん」

 彼女は手塚にそう答えると手首に着けているのではなく、埋め込まれたようになっている黒い腕時計の様な物に拾ったゴミを差し込んだ。

「金剛、おはよう」

 手塚の声に手首の機械が反応をしめす。恵の差し出された腕を男は眺め、声を投げた。

「おはようございマスではなく、時間的にこんばんわが正しいと思われマス、マスター」

「せっかく回収に来てやったのにやはり廃品ゴミだな、お前は」

「はい、データ収集完了シマシタ」

「まあいい、金剛。それで、巫女の思い人の戦闘映像とデータは撮れたか? さっき顔を見てきた」

 彼女の手首の小さな画面に光が灯る。そこには朝、ユキを攫われた時、車に走り寄る賀川と、車体を殴りつける彼の映像が流れた。その後に鼻の低い天狗面の男が彼の腹に蹴りを、頭にはもう一人の天狗男の傘が食い込む瞬間の映像が写される。

「車に連れ込んだ時のこの男に間違いないが。……金剛、この仮面の男達は何だ?」

「比較して鼻が四十八パーセント低い仮面の男と、車を傷つけた男は百パーセントの確率で同一人物デス」

「……何故この二人は面を付けている? 流行か? まあ、いい。恵、この男の過去データがあったな」

「いえす、ますたー。なう、ろーでぃん」

 手塚は画面に流れる文字を素早く拾い、笑う。それを眺めるおかっぱの少女は退屈そうに側にあったブロックに腰掛けると足をブラブラさせてその様子を見ていた。

「こいつが海外に居た時の……エンジェルズシールドの記録と交友関係を」

「いえす、ま……」

「ストップ! ふふふ、それだ」

 手塚は焦れたように恵の手首に嵌め込まれた画面部分に触れて操作し出す。紫雨は伸びをして、欠伸まで付け足すと、

「ながくなるのお?」

「いや。いいだろう……恵」

「いえす、ますたー」

「お前の名前、『天野 恵』を抹消、今日から『アリス』を名乗るがいい。『アリサ』でもいいがな?」

「ふぃっち? ますたー?」

「よし、アリスとしよう」

「おーけぃ……まい ねーむ いず ありす」

「よかろう。帰ったらその眼球を外して、緑色の物に嵌め変え、髪も長くして少し頬を削いで。ふふふ、苦労してエンジェルズシールドの資料を手に入れた甲斐があったというものだよ。この女の渡航予定があったな?」

「でぃせんばー」

「……十二月か。確保してそのデータをお前に入れてやる」

「せんきゅー ますたー」

 その画面には長い黒髪に緑の目をした少女が二人、そしてその後ろには黒髪に表情の薄い少年が写っていた。少ない表情だったが、手塚はその口角に浮かんだ笑みを捉えていた。

 その少女達の名は『アリサ』と『アリス』。年子の二人は画面で見る限りその違いは分からない。その後ろに写る少年の名は『トキ』。本名を『時貞 玲』。少し幼いその顔は、現在うろなで賀川と呼ばれている男の昔の姿。

『アリサ』は『トキ』の元恋人であり、その妹『アリス』は『トキ』を慕っていた事。『アリサ』の死亡は『トキ』のせいにされた事……そのような資料を見ながら手塚は笑った。ただ近くで座っていた紫雨は面白くなさそうに足をプラプラさせ、

「かえろーよぉ」

 っと、呟いていた。それをやっと聞き届けた手塚が、

「金剛、車はどこだ?」

 そう聞くと恵、いや、アリスと改名されたその少女がツイと動き出し、倉庫の隅にあった鉄板などを軽々と動かして、そこに隠されていた傷色の車を晒した。

「やっとかえれるぅ」

 紫雨は何処からか出したスプレーで側面の傷を荒く塗りつぶした。陽光の元なら目立つ傷も、夜の闇の中で黒い車体なら特に問題はなかった。逆に不審がられそうなナンバープレートを普通の位置に戻している手塚。アリスはその間に信じられないほどの跳躍力で、建物の上部に隠されていた車の鍵を手にし、何誇る事もなく無表情のまま、手塚にそれを渡した。



llllllllll


『以下4名:悪役キャラ提供企画より』


紫雨しう』とにあ様より

手塚てづか』『金剛こんごう』『天野 恵(以降アリス)』弥塚泉様より


多少設定変わった『恵』……

『金剛』に合わせました。『兄妹機』とします。


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