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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月27日

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196/531

続々・試合中です(喧嘩もいつか)

llllllllllll


痛みでふら付く中。観戦中。


llllllllllll

 







 込み上げてくる痛みで伏せていた眼をあげるとちょうど先生の姿が目に入る。

「清水先生!!」

 当たる! 相手の竹刀が! そう思ったがその体はどうやってか別の場所に居た。



「銀集気!!」



 続く『雨狼名・響命斬!!!!』と叫ぶ声に、凄まじい音。俺は足からの痛みを堪えながら道場を見た。そこにあったのは、清水先生の痛烈な剣筋を捌いた鬼神の如き男の姿だった。



「梅原流奥義・梅香殺(ばいこうさつ)!!!!」



 その声と共に吹き飛ぶ清水先生。

 まるで自分が戦っているかのように拳を握って呟く。痛みなんかどうでも良くなって、彼が立ち上がるのを待つ。その一瞬が……とてつもなく長い。

「そんなもんじゃないでしょう……」

 俺が呟くと、

「……………………賀川さん、清水先生は立ちますよ」

 その耳元で、ユキさんが囁く。

「え?」

「だって、綺麗な色が側で舞っているから」

 不思議な事を言う子だと改めて思う。俺には光など見えない。

 ぐったりと壁にもたれ、指一本動かせないと言った暗い表情の清水先生がそこにいるだけだ。凍りつく様な道場の空気。ここは彼の為の『場』だから、やはり勝って欲しい、そう望む者がたくさんいるのだ。だが彼は動かない。



挿絵(By みてみん)



 が、光が見えると言って、俺を見返す彼女の赤い瞳はキラキラしていて。

 俺には……見えない何かが本当にそこにあって見えているような気がした。それはココに居る清水先生の頑張りや何がしに触れて、温かい思いをした人達の『想い』かも知れない。

 ……それにしてもユキさん、俺を見てた?

 そう考えていると動き出す彼の気配を感じて、俺は一階に広がる戦いの場に視線を戻す。彼が固まっていた長い様な短い様な『時』を切り裂くように、清水先生の声が響く。



「俺はマゾ清水だーーーーーー!!!! これぐらい気持ちいいくらいだーーーーー!!!!!」



 ちょ……何を言ってるんですか……清水先生。立ち上がった事よりもその台詞にコケかける。驚く義理の父親が『あれを喰らってまだ立っていられるというのか……』と、言っているのを尻目に、



「問答無用! これでも喰らえ!!」



 そう言いながら清水先生から何かがばら撒かれる。

 何故かその紙切れは勢いよく風に乗る。まるで『面白がった誰か』が意図したかのような軽い風。実況席で少し前に『天狗風』という話があったのだが、それの名残だろうか? ともかく広く拡散され、人々の手から手を経て行く。

「何だぁ、これはっ。小梅ちゃんがっ……」

 ちょうど舞い込んだそれを手にしたタカさんが赤くなって、どうしようもなかったのか俺と抜田先生に渡してくれた。それはかなりきわどい司先生の写真。俺は何気にユキさんを見て、ちょっと想像する。

 そう言えばユキさんの体操服姿自体見た事ないよな。水着もないな。海には行ったけれど。

 ワンピースが潮風に揺れる。抜けるような白い肌をした足首の細さを思い出して笑いかける。

 さっきの服をズタズタにされた姿は笑えなかったが、色っぽくなかったのかと言われれば嘘だ。そんな事を考えていたら足の痛みなんかホントに消えた気がする。

「わーーーたーーーーるーーーーーーー!!! 試合が終わったらどうなるか分かっているんだろうなーーーーーーーーー!!!!!」

 梅原先生の怒声に続き、

「この男、やはり生かしてはおけぬ!! 改めて刀の錆にしてくれるわ!!!」

 相手の父親の怒りを含んだ言葉を聞いて、清水先生の意図が透ける。

 流石に可愛い娘のこれを見て、冷静でいられる男親は少ないだろう。離れて見ている母親らしい女性は意にも介していないのか、それとも後々清水先生に突っ込むつもりなのか、意味深な笑みを浮かべているけれど。

 ココで冷静さを奪って何を仕掛ける気なのか、そう考えた時ちょうどユキさんと視線があってしまい。ふとブルマ姿を想像してしまい、顔を背ける。体操服ってシンプルだから、胸が大きいと目立つよな。

 さっきまで辛かったのに笑っていたら忘れていて、こんな真剣な場で、何を考えてこんな笑いを持ってくるかと腹が立つ様な、でも堪えきれない思いに俺は笑う。



 交わされる竹刀の激しさは急に増し、恐ろしいほどの気迫を込めたそれが清水先生に襲い掛かる。

「それを受けるのかっ!」

 つい、呟いてしまう。その一撃は激しく、必中を目指し、相手も、

「貴様ではこの一撃を受け止めることは不可能だ!! 成仏せい、クソ婿!!!」

 轟く怒声に『清水先生、無理だ!』と叫んだ気がする。

 だが、その一瞬『何か』が動いたのを俺もとらえた。が、何がは極細すぎてわからなかった。ただ何かの歯車が動いて……

「今、伸びたか?」

 タカさんはちらりと呟き、重く抜田先生が頷いた。

「まやかし程度に」

 そう返す。どうやら二人には確実な何かが見えたらしい。



 戦いの場の真ん中で清水先生の竹刀は『喉』を、先生の頭を捉えたと思った竹刀は『肩』を打っていた。



 そして清水先生の勝ち旗である白が順を追って、しっかり三本上がる。

 何が起こったのかわからない者が大半を占めた。俺も良くはわからなかった方に入るだろう。

 タカさんの『伸びたか?』という言葉で、清水先生が手元の竹刀を持ちかえて今までのリーチを変えたか何か、細工をして届かせたのだろうかと見当を付けたぐらいだ。真実は俺にはわからない。



「全くふざけた技だ。そんな一か八かのことをしていて本当に司を守れるのか。儂の持っているのが真剣なら貴様の左手は吹っ飛んどるぞ」

「なら右手で守るさ。いや違うね、右手で司さんと手を繋ぎ、お腹の子達を抱き上げてやるさ。首なし遺体が適当なことを言うんじゃない」

「屁理屈を。とにかく浮気でもしようものなら、次こそ両断してやるから覚悟しておけ」

「そっちこそ孫に嫌われない様に笑顔の練習でもしておくんだな」

「大馬鹿もの。だが笑顔か、なるほどな。それがお前と儂の『差』か。……見事だ」

 俺の鋭い耳は二人の会話をしっかり捉えていた。そして義理の父親の方が先に倒れ、

「勝者、清水渉!!」

 魚沼先生の口に勝者の名がコールされる。

 歓喜に沸く会場。余りに大きな歓声は、最後の技を解説をしていただろう天狗仮面の台詞を、俺の耳に届かせなかった程、その場を埋め尽くした。



 ほぼ二時間、試合制限いっぱいまでかかった試合は、清水先生の勝利で幕を閉じ。清水先生は気を失った。

 その後、すぐに起き上がった義理の父親が『結納の品』を投げて行くと言う珍事が起こり、それはそれで会場を騒がせたのだが、面を取ってもらった清水先生は気を失ったまま幸せそうに笑っていた。

「さて。今日をやり直さなきゃだな」

 俺は俺の舞台に立たなきゃならないよな。

 そう思いながら隣にいるユキさんを見て笑いかける。

「賀川の? おめぇ、何考えてやがる?」

 タカさんが低い声で言ったのも、半ば無視して俺はユキさんに話しかけた。




lllllllllllllllllllll

ユキとの目線の違いをイラストと共に、お楽しみいただければ幸いです。

同じ物を見ても二人の違いは歴然。

これにて観戦終了となりますが、まだこの日のお話は続きます。

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"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生、決闘の日会場内、試合終了!

梅原勝也氏 司先生

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/90/

(決闘編10話の頭↑。詳細知りたい方はここから是非)


うろな天狗の仮面の秘密  (三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

天狗仮面様 天狗風?



お借りしました。

問題があればお知らせください。

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