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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月27日

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194/531

試合中です(喧嘩もいつか)

llllllllllllll


試合ですよ


llllllllllllllllllll



「『どんな手段を使ってでも』なんて言ったのはそっちだからな!!続けていくぜ!!!」

 剣道かなぁ……あれ。清水先生蹴ってそう言ってますよ。観客の半分以上が唖然としています。審判の三人のうち、魚沼先生は動じた風もなく、何も言いません。


「え、い、いきなり蹴りが入りました! 解説の天狗仮面さん、あんなのありなんですか?」

 そう言って長机を前に座った人と天狗さんがやり取りしています。

「これは剣道の勝負ではなく、無差別試合であるからな。引くと見せかけて攻勢に出たことといい、最初の主導権は渉殿が握ったようだ……」

 などと説明しています。そうか~、確かに『どんな手法を用いても基本OK』って言ってましたから、きっとイイのでしょうね。私も納得しました。ん? 納得していいんですよね? はい。皆、盛り上がっているから良いみたいです。

 それにしても天狗さんと、清水先生、仲が良いのかな? 天狗さんが渉殿って名前で呼んでいるから。



 そう言えば、さっき、ヘンな所に連れられて体を縛られていた時、天狗さんが二人も戦っていました。賀川さん曰く、たくさん天狗さんはいるようですが、ジャージと仮面の感じや、その身に纏う『色』があの時のうちの一人と同じなので、同一の天狗さんだと思います。

 そう言えばもう一人の天狗さんは少し鼻が低くて、色がないし服装が……やはり、うん、賀川さんに似ていた気がします。ただ、初対面だと色を余り感じさせない人は多いし、シンプルな服装なので、誰でも彼っぽく見えるのかも知れませんけど。

 目の前で剣道と蹴りと拳の混ざった戦いが繰り広げられてます。

 寂びれた工場の跡地でも、あんな感じでサラサラと避けていたから、天狗さんって強いのでしょうね。今見ている清水先生と司先生のお父様の試合と同じく、私の目では付いて行けません。早くて。

 清水先生もお父様もちょっと人間離れしてるくらいじゃないかなって思います。



「厳しいな、でも清水先生も気迫で負けちゃいない」



 あれ? 賀川さん、見えてるのかなぁ……時折、呟いたり、叫んだりしているから。清水先生に見入って拳を握っています。彼があの鼻の低い天狗さん? でも、あんな風に戦える? 賀川さんが? それでも何で仮面なんか被る必要があるのでしょう?

 くるりくるり、疑問が舞いますが、答えは出ません。

 賀川さんに見入ってみます。時折、顔を顰め辛そうです。試合、見てるけれど楽しむって言う感じではなく……やっぱり戦うのとかは好きじゃないのかな? 清水先生とはこの頃、仲良さそうでしたから、先生が痛そうなのが嫌なのでしょうか。



 暫く彼を眺めた上で、ま、いいかと思います。考えてもわかりませんから。

 そして競技の方を見やると、清水先生すごくいい感じで飛び込んでいくのですが、

「少々お前のお遊びに付きやってやりすぎたようだ。今度は多少力を入れて打ち込んでいくぞ。避けられるものなら、避けてみるがいい!!」

 司先生のお父様の剣、交わされる剣と息遣い。それを見つめる賀川さんの目が真剣です。



「雨狼名・響命斬!!!!」



 清水先生の声が響きます。ですが、その剣を返したお父様は、絵に描いたような綺麗な立ち姿で剣を振り上げ、



「梅原流奥義・梅香殺(ばいこうさつ)!!!!」



 縦と横、一閃を裂く刀の流れで、叫びながら吹き飛ぶ清水先生。このまま倒れてしまうんではないかと思いました。けれど、拳を握った賀川さんが呟きます。

「そんなもんじゃないでしょう……」

 観客の皆が、息を飲んだような瞬間。

 あんまり思いつめた様に言うので、そっと彼の耳元で、

「……………………賀川さん、清水先生は立ちますよ」

「え?」

「だって、綺麗な色が側で舞っているから」

 私には。

 とても綺麗な、綺麗な風、金にもオレンジにも見える何かが清水先生を包んでいるのが見えました。

 鼓舞するようにピンクの小さな光がフワンと二つ舞って。その側には暖かい透明なオレンジ色がそっと彼の側で漂っているのが見えます。



挿絵(By みてみん)



「俺はマゾ清水だーーーーーー!!!! これぐらい気持ちいいくらいだーーーーー!!!!!」



 ただそんな事を言って立ち上がるとは思っていなかったので、ソレには驚きましたが。清水先生、マゾって……えっと、ここに来てよく聞くんですけど、……………………そうなのですね。今度からそう呼んだ方が良いのでしょうか。そんなお名前だったとは知りませんでした。

 立ち上がったマゾ清水先生に

「渉、無事か!?」

 私からは少し離れた二階席にいた司先生が問いかけます。

「ピンピンしてますよ、司さん。無問題です!」

 そう言い切った、マゾ清水先生……言いにくいのでやっぱり清水先生でいいかな? それとも渉先生って呼んじゃおうかな?

 そう思った時、清水先生の手が動きます。



「問答無用! これでも喰らえ!!」



 そう言いながら清水先生が何処から取り出したのか何かを放り投げます。

 ばらばらと舞い散るそれは写真のようで。一階で見ていた人達がその写真を拾い、二階席にも何枚か飛び込んだそれら。瞬く間に人の手を経て、会場全体に回り、チラチラと見せ合いになります。

 私も見てみると、それは司先生の写真、それも何だか裸に近いようなモノやら、ブルマや、水着やら、見てるこっちが恥ずかしく感じる様な物ばかりで、

「わーーーたーーーーるーーーーーーー!!! 試合が終わったらどうなるか分かっているんだろうなーーーーーーーーー!!!!!」

「司ちゃん、落ちる落ちる! 妊婦がなに二階から飛び降りようとしているのよ!!」

 果穂先生が暴走寸前の司先生を止めていますよ。

「この男、やはり生かしてはおけぬ!! 改めて刀の錆にしてくれるわ!!!」

 お父様も怒ってますけれど、ちょっと恥ずかしい感じですけれど、司先生可愛いですよ?

 賀川さんは写真を見て、私を見て、何か思い出したのか顔を伏せてしまいます。



 そして交わされる竹刀。少し先ほどより遅いけれど、それでも捉えるのには苦労します。汗が飛び散り、竹刀が音を鳴らします。

「それで隙を付いたつもりか!! 片腹痛いわ!!!」

 清水先生何とかこらえているみたいです。

「これで終わりだ!!」

「それを受けるのかっ!」

 賀川さんが口にする言葉で、清水先生が『受け』に回る事を知ります。

「貴様ではこの一撃を受け止めることは不可能だ!! 成仏せい、クソ婿!!!」

「清水先生、無理だ!」

 賀川さんはそう言いながらもグッと両手を組んで、その場の成り行きを見ています。他の人からも口々に清水先生を呼ぶ声。

 その時微かに清水先生の口角が上がって気がしたのは私の気のせいだったでしょうか?



 今まで動かなかった審判達の旗が順に上がり、その色は三本とも……白。清水先生の勝ち?

 何が起こったのか私にはわかりませんでした。ココに居合わせた人の殆どが驚いて『えっ!』っと声が上がりました。

 道場の中心ではお父様の竹刀は面ではなく肩を捕えており、清水先生の竹刀は喉元を突いていました。

 お父様の竹刀が清水先生の頭に早く届くと思ったのに、何故、先に喉元に?

 その後、私には何を話しているか聞こえませんでしたが、清水先生とお父様が暫し何か言葉を交わしていました。それから気が抜けたように、お父様の方が後ろに崩れて倒れました。


「勝者、清水渉!!」


 何があったのか、私にはわかりませんでした。たぶん会場の殆どがどうしてそうなったのか、逆転劇がどうやって起こったのか……わからなかったのではないかと思います。けれど、清水先生は勝ちました。いや、勝った以上に何か大切な物を手に入れたのかも知れません。

 笑ったまま。

 にこやかに。

 清水先生はやり遂げた感、満載で、その場に倒れてしまったのですから。


lllllllllllllllllllll

明日は賀川目線でもう一度試合を眺めてみます。

lllllllllllllllllllll

"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生、決闘の日会場内、試合!

梅原勝也氏 司先生 果穂先生


うろな天狗の仮面の秘密  (三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

天狗仮面様


うろラジ!(菊夜 様)

http://book1.adouzi.eu.org/n0936bv/

東野夏香さん

試合中実況を



お借りしました。

問題があればお知らせください。


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