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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月27日

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189/531

終結中です(うろなの平和を守る者)

『現在小藍様の所で汐ちゃん奪還戦(30日付)に賀川参加中。当方現在27日『ユキ奪還戦』は『汐ちゃん奪還戦』より少し前の話になります。混乱するかもしれませんが各々別日の話になります。お楽しみくださいませ』


lllllllllllllllllllllll



 









 ラッシーを放ち終えた時、そこには銀色に砕け、プスプスと煙を上げた、ただの鉄屑が目の前にあった。もはや人の形はなかった。服は焦げて焼き消えた。いつの間に見ていたのか、天狗仮面が傘を片手に、近くに落ちていた鞄を拾う。ユキさんの鞄だ。

「終わったか。賀三郎の敵は大きいと見える」

 そう呟いているのを聞いた。少し離れた場所で先程の二人が柱に縛られているのが見えた。たぶん、それなりに前から彼は二人を拘束していたのだろうが。これは俺の戦いだと察して、見守ると言う加勢をしてくれていたのだろう。彼も何かあったのかかなり煤けている。

 何発かおかしな音と爆発を聞いた気がするが、自分の戦いの音に集中していた為、何が起こったか詳細はわからなった。

「ユキさん!」

 俺はハッとして駆け寄ろうとする。だが、天狗仮面がそのマントの裾を引っ張り、俺の動きを制する。たったそれだけで、俺の足はもう歩けないほどおかしくなっていた。

「今日は見事であった。賀三郎」

「なんとか勝った、の間違いだろう? 天狗仮面は見事だったよ」

 そう言い返す俺の首からするりと、やっと見慣れてきた緑地に白の模様の布を外した。

 俺は面を上げてそれを返そうとした時、ふと手が止まる。以降もこんな事は起こるだろう。その時の為にこの面は…………

 俺が返す事を躊躇ったのに気付いたのか、天狗仮面は言う。

「賀三郎……町を守る私と、その娘を守る貴殿の間に違いは無い。誰かを『守る心』は同じである。貴賎などあるはずもない。しかし、真に進むべき道とは自らの心が指し示すものであるぞ。己が本心を隠したままではいつしか道を見失うであろう」

「…………君は天狗仮面、だから、だったよな」

 俺が守るのはユキさんであって、うろなの町を……なんて言えない。たった一人の女神、俺の大切な少女以外は、その後について来るモノだ。

「天狗仮面、君は強い。だから俺ではそんなに頼りにはならないけれど、必要な時があれば呼んでくれ。今日は助かった。短い間だったけれど、天狗として過ごした時間は貴重だった。……ありがとう」

「仲間の窮地には必ず駆けつけるのである。私の力が必要ならばいつでも呼ぶのだ」

 俺は彼より鼻の低い面を返し、握手を交わした。傘がバサッと揺れた気がしたのは気のせいではないかもしれない。

 お面と引き換えに鞄を受け取った俺は、ユキさんの体を起こして後ろ手に縛った縄を外してやる。ズタズタに引き裂かれた服、外傷は掌に軽い血の跡。爪に何か毛のようなモノがついているのは嫌がって地面に敷かれた汚い毛布を掻いたためか。天狗仮面はチラリとユキさんの顔を見て、

「この白髪の少女は…………さ、これをかけてやるがいい。賀三郎の温もりが一番であろう」

 街中でユキさんを見かけた事でもあったのか、そう呟いて。先程まで俺が付けていたマントを貸してくれた。ユキさんには似合わないと思ったが、それは天狗仮面の矜持を傷つけるだろうから、口にせず、

「いいのか?」

「なに、天狗として当然の振る舞いである」

 そう天狗仮面が言い切った時、悲鳴が響いた。

「や、やめてくれっ!」

「な、ごめん。失敗の一つや二つ、いいだろ? な? ごめんよ」

 天狗仮面に拘束されて身動きが取れなくなっていた青い髪と茶色のツンツン髪の男の前に、気付かぬうちに一人の女が立っていた。

 長身である彼女の瞳も髪も、そして爪の色もすべて美しい桜色だった。その髪を押さえるヘアバンドには触角の様な飾りがあり、色っぽい肩出しの服装も違和感なく彼女の桜色を美しくみせる。ただ、手に握られた身の丈半分ほどのトンファが険悪を漂わせるが、艶めく桜色の唇をチラリと嘗めたその表情は官能的とも言えた。

 その女が、車の初動を止めようとした俺の行く手を遮った者と同じだと悟った瞬間、

「あなたが欲しいんです」

 優しくそう言いながらそっと振り上げられる武器が鈍く緑に光る。鈍器に可愛らしく結ばれた玉飾り二つが動きに合わせて揺らりと揺れて。着物の衿合わせになったその和衣装もピンク色で、目を凝らすように見ると刺繍で桜の花弁が浮いていた。

「綺麗に散って下さいね」

 彼女の美しさと対照的にその手を振り上げる残忍な行為は、抵抗も出来ぬままそれを与えられる二人の者に更なる恐怖のコントラストとなり脳内を埋め尽くす。

「止めよ!」

 天狗仮面の声が鋭く飛んだが、二つの命は軽く吹き消え、ぐったりとして生気がなくなる。

 今まで戦っていたとはいえ。

 ユキさんを攫った者だとはいえ。

 それは『自業自得だ』と一笑に付す事が出来ない、一方的な命の搾取に俺と天狗仮面は息を飲んだ。

 その時、小さく『くるっくぅ』とドリーシャが鳴くのを聞いた。どこか鋭く、まるで何かを咎めるようで、今までにない声に俺は注意を辺りに払う。

 その声がなければ俺達の意識は削がれたままだったろうが、その意識は隠すように狙って穿たれた何がしかを捕えるのに役立った。

 ただそれはとても素早く、音だけで俺は、その行き先がユキさんの胸を狙っているモノであると判断した。何かを確かめる間などなく、ただそれに対し俺は身を呈す。

「ユキさん!」

 飛んできた『何か』が体を貫く衝撃を覚悟したが、甲高い硬質な音がキンっっと、俺の耳に届いた。

「天狗仮面!」

「何者であるかっ!」

 俺の背後は天狗仮面の大きく開かれた傘に守られていた。瞬時に畳まれて見えたのは、細い鎖に繋がれたウチワだった。いや、変わった半円状をしていたからウチワではないのかも知れないが。

 それは弧を描き、その工場の高い部分に取り付けられた柵の上に座った女の手元に引き寄せられた。その女は逆手に長細い紙切れを靡かせていた。その紙は淡い光を放ち、赤い霧の様な物を吸い込んでいる。

「これは……」

 その霧の源は、命を失くした二つの体。人間の形がなくなり、それはさらさらと赤い塵となる。あたかもそこに居なかったかのように服までが消え、縄だけがパサッとその場に残る。赤い塵は細い糸のように紡がれ、舞い上がって、紙切れに全て吸い込まれてしまう。

「ああ、たった数文字にしかならないわ」

 天狗仮面の言葉に応じる気もないのだろう、彼女は一人呟いた。

 その女の服も撲殺を行った女と同じような肩が出た、和衣装をまとっていた。だがその色は対照的な青色で、銀糸で雲がかかれている。片目を隠すようにのばされた髪。変わったとしか言いようがない髪型から覗くその瞳は、今そこにいた者の死を悼むわけではない。その死を目の当たりにして喜んでいるようでしかなかった。

「やはりその巫女のような、力ある者でないとダメね。そこの天狗面の男も美味しそうだけれど……」

「手塚が『顔』は持って帰って来て欲しいと言ったから。素っ飛んで行った方を探したけれど見付かりませんでしたわ」

「そう、残念ね。桜嵐。あれば恩が売れたのに」

 いつの間にか高い位置に二人は並んで、何事もなかったかのように微笑みあっている。俺も天狗仮面も殺気立つ。

「貴様ら……」

「名残惜しいけど……今日は『回収』だけ。この扇子で巫女を奪えたら、それはそれでもよかったけれど。ふふ、せっかくだから巫女はただ殺すだけではなく、よりたくさんの力を絞るのに陣の上で暫く苦しみ喘いでもらいたいわ……」

 紙切れが彼女の手の中でスルスルとまとまると、天井に空いた穴へ、恐ろしい跳躍力で飛び上がる。桜色と空色、二人がひらりと姿を消す。

 追わねば、そう思ったが天狗仮面が俺の肩に手を置いた。

「逸るではない。扇子の一撃を防いだことで、あやつらにそれ以上の攻撃の意思はないようだ」

「だけど!」

「今の状況を見よ。今はその娘御の介抱が先であろう? 己が足の状態を回復させよ。腹は立つが……今は事を構える時ではない」

 俺は腕の中の彼女を見た。確かに今の俺の足で、あの二人は追えない。しかし、だけど……鼻の長い赤い面の男を見やる。彼は仮面の向こうの瞳を光らせ、強く頷く。

「今回は深追いせぬ方がよいだろう。では私もこれにて。これから幾つかする事があるのでな」

「……いろいろ、ありがとう……天狗仮面」

 俺は彼女の細い肩を抱きしめながら。

 さらりとマントを揺らし、立ち去る天狗仮面のその背を見送った。



llllllllllllll


うろな天狗の仮面の秘密  (三衣 千月様)

http://book1.adouzi.eu.org/n9558bq/

天狗仮面様、傘次郎君。そして鼻の低い天狗……


キラキラを探して〜うろな町散歩〜 (小藍様)

http://book1.adouzi.eu.org/n7439br/

マメ鳥ちゃん(ドリーシャ)


お借りしました。長くありがとうございます。

明日で細かい点について拾いますので、もう少しお借りします。

何かあればお知らせください。


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『以下6名:悪役キャラ提供企画より』


桜嵐さくらん』呂彪 弥欷助様より

余波なごり教授』 アッキ様より

金剛こんごう』弥塚泉様より

しずく』『なお』パッセロ様より


手塚てづか』名前のみ

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