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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
10月27日

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177/531

面接中です(悪役企画)

清水の先生、三日も山籠もりしたらしい。

本日が決闘。

仕上がりが気になるな。おい。


 







 商店街の事務所、オレの目の前に一人の少女が座っている。

 足元まで伸びた黒髪は、地面に付くんじゃないかってくらい長い。癖があるのか軽くウェーブしていた。ユキのように不自然なまでの色白を見慣れているせいもあってか、とても健康的な感じ肌色。身長は低く、一緒に連れて来ている小学生の子と、間違えば同い年に見えかねなかった。

「ん、松葉まつば 奈保なほ ちゃんか。十九、っとな、年は誤魔化してないんだな?」

「はい、姉のかおるは働いていますが、私と紫雨しう、三人が食べていくには私も働かなきゃって思って。でもなかなか……」

 交通事故で両親を亡くし、三姉妹で何とか食っているという。

 ……交通事故、その言葉だけで、オレは苦い思いをしていた。思い出しもできないアイツの笑顔に、地面に広がる赤い命が今も鮮明に過ぎる。

 安いアパートを求めて辿り着いたのが、うろなだったらしい。一番下の紫雨ちゃんも奈保ちゃんも学校もまともには行けてないという。工場経営だった両親が死んだのを見て、従業員が金を持ち逃げ。聞けば聞くほど救いがない話だ。

「借金はだいぶ落ち着いて。ここで働かせてもらって、姉の収入と合わせて安定した収入と、お金がたまったら、来年には紫雨もランドセル買って、……小学校に通わせたいんです」

「昼の三時間くらいでちょっとした伝票整理だ、たくさんは出せねぇ。日曜に伝票整理の都合で、それも朝の出勤を頼む事がある、それで今日はこの時間に来れるかって試しもあって来てもらったが。朝は大丈夫なようだな」

「朝早くても来れます。姉の薫が朝なら見れる日もありますし。でも日中は紫雨の面倒と、私自身の勉強もあるので、時間は長すぎないのがいいです」

「わかった。ココに通う時に心配なら彼女も連れて来ればいいじゃねぇか。何ならうちの裾野の方に宿舎みてぇなオレの自宅がある。そこで預かっても構わねぇ」

 そう言うと、嬉しそうに、けれども思慮深く彼女は遠慮する。

「預かりなんてとても。連れて来ていいだけで十分です。来年度に学校に行き出せばご迷惑かけなくなると思います。それまで、ね? 大人しく出来るわよね?」

「うん、しう、いいこ」

 しうちゃんは、見た目は今のさえちゃんと同い年くらいだ。

 黒のおかっぱがとても似合う、つぶらな瞳の少女だった。可愛らしい丸顔にキラキラと大きな目を輝かせ見上げられたら、大抵の大人は参ってしまうだろう。どこかの出来過ぎた子役よりも子供らしく愛くるしい。

 さえちゃんは可愛いが、取り澄ました感じが上品に感じる半面、オレの様な下町の人間にはお高く感じる事がある。だが、しうちゃんは元気な上に子犬のようなかわいらしさがある。強面のオレを見て泣き出す子がいるくらいなのに、初めから膝に乗ってくるくらいだ。

 しうちゃんに『ねえねえ、おぃちゃん。おなまえは?』なんて聞かれて嬉しかったが、面接で緊張した感じだった、なほちゃんは顔を赤くして『降りなさい、しう。お仕事の話なのよ』っと言って、その後オレに弁明していた。

 やっぱり事情もあるし、ココで雇ってやるしかあるまい。

「よし。じゃあ、来週から来れる時をこの表に書いてくれや。週三くらいだな。もっと条件が良い所が見付かったら辞めてもいいが、早く職がある方が良いだろう?」

 そう言って紙を渡すと、採用になったとわかったせいかパァっと二人の顔が明るくなった。

「ありがとうございます、一生懸命やらせていただきます」

「あ、その髪は三つ編みなり、束ねるなりしとけや。資材置き場で引っかけてもいけねぇからな」

「はい、わかりました」

「おねえちゃんのかみは、わたしがあんであげるよ」

「偉いな、しうちゃん。これやろう」

 俺が引き出しにしまっていた飴玉を渡すと、不思議そうに受け取って、その後ニッコリと笑ってお礼を言った。






 工務店の古扉の前でなほちゃんが頭を下げ、しうちゃんが『タカちゃん、バイバイ』と手を振って、がらがらと扉を閉める。タカちゃん、タカのおっちゃんの略らしいが照れるな、おい。

 手を繋いで仲良く帰っている後姿を見ながら、時計を確認すると八時だ。今日は清水先生の決闘の日となる。昼までには仕事を終わらせなきゃなんねぇ。約束の図面の仕上げや仕事の配置を決めながら、オレは仕事に勤しんだ。

 一週間前、賀川のがおかしいからとユキを行かせて、戻ってこなかった。慌てるオレに葉子さんは『あの子達は、いずれ幸せに結ばれる。そうでしょう? それが今日だろうと、何年先だろうと、私達はこの空の下にある限り見守るのが務めなのよ』強く、静かにそう言って、オレに放置させた。

 あれから、誰も何も、あの日の事は言わない。

「どうなったか? オレは聞けねぇ……聞けるかってそんな、よ」

 バリバリと頭を掻いて、思考を仕事に移す。働いてねぇ様に見えるかもしれねぇが、水道トラブルなどで、深夜に駆り出し組もいて、それ熟しながらだと結構やりくり大変なのさ。

「可愛い姉妹だったなぁ……」

 よりによって自動車事故なんて、こんな可愛い子達を残して両親も辛かったろう……なんてな、まさか、工務店を出て行った二人が商店街を歩き抜けながら、こんな会話をしているとは知る由もなく。






「ねぇ? しう、がっこうにいくの?」

「ばかね。その前に終わらせるわ」

 繋いでいた手を紫雨が振り払った。

「なほはきらい。かおるおねえちゃんがイイ」

「もう! こんなに可愛がってあげてるのに、どうして薫がいいのよ」

 奈保が髪を揺らして紫雨を後ろから抱きすくめ、ぷっくりとした頬にキスを降らせる。

「やだぁ~だって、なほはすぐキスするもの。二十六なのに、ロリッ子だし。かおるおねえちゃんはパリッとおとこもののスーツで。でもおんならしいし」

「そんな事言ったら、ケーキをもう作ってあげないから」

 ぷいっと奈保が拗ねる。そう彼女は逆の意味で年を誤魔化していた、十九でも小学生でもなく、もう二十歳も半ばを超えていた。紫雨は拗ねてしまった奈保に、『ごめんなさい』と謝る。

 この二人にも、姉の薫にも、血縁などない、ただの義姉妹でしかなかった。自動車事故なんて嘘だった。だが奈保は紫雨がとてもお気に入りだったから、またキスをして抱きしめる。

「可愛いんだから、紫雨」

「くるしいよぅ」

 じたばたして紫雨が逃げる。

「ね、あのタカちゃん、ころすの?」

「ええ、巫女を攫うにはあの男も障害だから」

「いたくしてころす? ながくながくいたくしたら、タカちゃんはよろこぶ?」

「それはお任せするわ」

 その返事に紫雨はおかっぱを揺らして笑う。奈保はその顔を見ながら、

「その前に決着がつけば、その心配は要らないかもね。私もあんな所で働かなくてもいいし。『まなぎ』と『撫子』が、うろなに入る前に軽い挨拶に行くんだって『治』が。確かにほら、今日は何だか町のイベント事だから浮ついてる……いい機会かも」

 二人の少し前に、黒いワゴンが止まっていた。スモークのせいで見えにくかったが、中には三人の男の姿がある。

 一人は二十歳にもいかない感じの若者、健康的でない蒼白な肌に、人当たりのよさそうな眉下がりの男だった。どちらかと言うと今風のイケメンの部類に入るはずであるのに、どこか自信なさげな目つきをしている。名は『雫』と呼ばれており、その隣に居る男が連れてきた新参者だ。

 その隣にいるのは『治』、年は三十を超えているようだった。黒縁に薄い茶のかかった眼鏡装着しており、茶色の髪はツンツンしており、普通のサラリーマンと言うより、チャラい男に見えた。

 奥に居る白服の隙が無さそうな男は無表情で、まるで人形のようだった。美を絵に描いたような男だが、『金剛』という厳めしい名で呼ばれていた。

 車は奈保と紫雨の二人を確認しただけで、乗せる事も無く、走り去る。

「おもしろそう」

「紫雨、見に行く?」

「うん、かおるおねえちゃんにどうなったか、おしえてあげるとよろこぶよね?」

「また薫? むぅ。まあいいわ。先に帰っているからね?」

 紫雨は無邪気に姉の元を離れて行った。




悪役企画始動中です。

でも結構ダラダラ下準備する(用意周到?)方々から、単発の方など盛り込んで行こうと思ってます。よろしくお願いいたします。

参加者募集は今までに手をあげて下さった方と、町外の方に限らせていただきます。

lllllllll

(尚、『悪役』表記の方と絡む場合は当方に『コラボ申請』を。彼らには『死』が絡む事、又ぽつっと町から居なくなる事があります。それを取り立てて騒いだコラボ話などは基本遠慮させていただきます。大切なお子様としてお預かりさせていただいておりますので、事前にメッセないコラボも基本ご遠慮させていただきたいと思います。ご注意ください。)


"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 (YL様)

http://book1.adouzi.eu.org/n6479bq/

清水先生、決闘の日、当日。

そちら側から見ると『裏』の話になります。




『以下八名:悪役キャラ提供企画より』


松葉(まつば) 奈保(なほ)パッセロ様より

松葉まつば 紫雨しうとにあ様より


車内の男三人

しずく』『なお』パッセロ様より

金剛こんごう』弥塚泉様より



『まなぎ』と『なでしこ』、『松葉 薫』は名前のみでしたので紹介はご本人登場時に。


次回もお二人ほど初登場していただきます。


宜しくお願いいたします。


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