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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
9月10日

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猛省中です


……たぶん赤面してます、私








 

 溢れるような思いで私を抱きしめてくれるから、止めどない思いが零れて『好き』と告げてしまいます。

 私のそれに、慌てて更にそれに応えようと言葉を紡ごうと必死になる賀川さんを見ていると、色も見えないのに彼が苦しみをも私に晒そうと努力してる様が見えて。

 今、こんな形で吐き出されても、賀川さんの事を知ったとは言えない。そう思って。手で塞ぐよりも、思いが走ってキスをして……

 気になって仕方がないけれど、聞くのならもっと貴方が語りたいと思った時でいいのだと、そんな思いを込めて。

 でも賀川さんは大人だし、慣れてるのでしょうか。

 急にキスを深くし、どうしていいかわからない私は為されるがままで。それなのに、彼は、

「ねぇ、ココ玄関先だよ?」

「は! ……あぅ」

 完全に言葉を失った私に、

「急ぐ事ないから、またね……」

 冴ちゃんが来た事で話が途切れてしまいましたが、また、って何? そんな事言われたら、恥ずかしくて。



 その後、小さくなった冴ちゃんに混乱気味の賀川さんでしたが、お兄様達の歓迎を受けたり、冴ちゃんに甘えられてまんざらでもない様子で話していました。葉子さんの食事を、まるで飢えた様に食べ、その後は部屋に戻って眠ってしまいます。食事の後、こっそりとでしたが、大量の薬を飲んでいたのが気になりましたが。

「どこかに行く時に一人だったら、声かけて。休みを合わせて付き合うよ。何より君の側に居たいから」

 賀川さんがとても優しくそう言って部屋に戻って行ったのを思い出して嬉しくなります。

「ユキさん、本当に幸せそうね」

 魚沼先生と冴ちゃんは法廷に行くと出てしまい、タカおじ様とお兄様もお仕事に行ったり商店街の事務所に行ったりしてしまい。非番のお兄様達は部屋に戻ったので、残った葉子さんは私のお茶を入れてくれて。

 にこやかにそう言います。

 賀川さんにふんわりと抱きしめられて、零れた思いに赤くなって、俯いてしまいました。

 約三週間ほど会わなかった事で、つい突っ走ってしまった感が満載です。それに対して賀川さんは落ち着いた感じで優しく扱ってくれる事に心が弾むけれど、恥ずかしくて。

「恥ずかしがる事ないわよ、やる事なんてみんな同じよ」

 そう笑いながらの言葉に、水羽さんにも同じような台詞を言われたのを思い出します。私はまだ残っていた左の掌の痛みが薄くなって、さっきまでまだよく塞がっていなかった傷がほぼ治っているのに気付きます。不思議に思いながら、手を開いたり閉じたりしてみます。

「もしかして、力……吸い取ってる感じ? なのでしょうか?」



 そう言えば、最初に森の家で倒れていた時、お水を含ませてくれた後も、暫く元気でした……っけ。

「力を吸い取る? 何を言ってるの? ユキさんったら、吸血鬼じゃないんだから」

『いそうろうから出てるのが、かってに入ってくるだけ。しつれいねぇ』

「え、あ、み、水羽さん?」

 独り言みたいになってしまうので、お茶を飲み切ると食堂を出て、離れに籠ります。

「ずーっと、見てるんですか?」

『ストーカーみたいにいわないでぇ~、わたしだってそんなに暇じゃないわ』

「じゃ、何してるんですか?」

『ねて、おきて、てんきを見て。またねるの』

「……それって大半、寝てませんか?」

『わたしのようなのは、ねていられるのが、みなの幸せなの』

 そこまで聞いた所で、黒軍手君からネジを出して、

「どうして……結界とか言うのを出したり、鎖を出したり出来るんですか? これ、関係あるんですよね?」

『うーん。もともとは『ジャミング』の為なのよ』

「ジャミングって、何を……」

『巫女の力をあんていさせるのは、ふくさんぶつよ。じゅうびょうくらいなら血がなくても出せるかも。でもたぶん巫女はぶっ倒れるとおもうのよぉ。ちからのだし方もいれ方もヘタすぎて』

 何だか私は巫女としてダメな子のようです。だってそんなのわからないです。がっくりうな垂れながらも、

「お母さん、どうしているか、知っていますか?」

『何故?』

「だって……」

『わたしたちには『きそく』があるの。しってるから、できるから、そんなりゆうでモノはかたらない』

 そして寝てしまったのか、もう語りかけても返事はありません。

 確かに何でもは語れないでしょうが、無事だって一言欲しかったのに。



 机の上には赤いネジ。

 不思議な赤いネジ。

 何でタカおじ様の息子さんである、刀流さんが作ったネジがそんな力を持っているのでしょう? 母と好き同志だった、それが何か関係あるのでしょうか?

 飾られた写真の意志の強そうな若い男性の顔を思い出し、母を重ねて心の中で並べてみます。

「キスとか、したのかな? お父さん、なのかな?」

 さっき賀川さんが入ってきた、暖かい感覚だけでゾクっとしたのに、葉子さんが言った『やる事同じ』と言ったそれはもう未知すぎて。顔を赤くしながら、絵を描く準備に入ります。

「そう言えば、今年の冬は森の家にコタツやコートも欲しいなぁ」

 まだまだ残暑のきつい九月頭、買い物に行くのはいつ頃が良いかな? そんな事を考えながら筆を持ち、ペタペタ始めます。

 赤い絵の具を走らせた時、賀川さんが泣いている夢を見たのを思い出します。あのキスしてた女性の事、聞きそびれました。

 賀川さんと一緒に居る時に、変なヒトが襲ってきたら、きっと彼は私を逃がそうとしてくれるでしょうが。彼は配送員だから力はあると思うのです、けれども戦ったりするようには見えません。それも私の所に来るのはその辺に居る様なヒトじゃなくて、強い猫夜叉や堕天使の二人でも手こずるような相手。

 お母さんが消えたのだって、きっと私のせいが少なからずあるでしょう。私と居る事で彼を渦中に巻き込んでしまうのではないか。近付いたのを喜びながらも、そんな不安が私の中で影を作るのでした。





朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん

妃羅様『うろな町 思議ノ石碑』より、無白花ちゃん、斬無斗君


話題としてお借りしてます。

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