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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
9月4日

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136/531

一別中です(紅と白)

私の作品は現在朝陽さんとコラボを深くさせていただいております。


ですが、朝陽さんサイドの更新を楽しみにしている方には当方『ネタバレ』だという話があるようです。


これはネタバレではなくコラボ作品です、お間違えなきよう閲覧ください。


また、できましたら朝陽さんサイドのお話を重点おいて、お読みになりたい方は、当方の話をお読みになる時は、

(紅と白)

が付いたお話はお読みにならない事を推奨します。

 






 ベル姉様とリズちゃんは体調が回復してからは、お出かけをしてうろなを走り回っていました。

 私はお家でお留守番。たまにリズちゃんと散歩に行ったりしました。

 首の傷が癒えて、食事が出来るようにはなりましたが、たまに左手の傷のせいか熱が出て、家で過ごす事が多かったのです。

 そう言えば八月の終わりの頃に『宇宙人』さんと会いました。お名前は院部 団蔵さんと言うそうです。

 彼を連れて来たのは、葉子さんやタカおじ様、工務店の皆とは知り合いの可愛い小学生である鸚屋千草ちゃんと、来年の受験で大学を目指している井筆菜 伸太郎さんの二人。

 冴ちゃん、千草ちゃんと仲良くなるかなっと思ったら、すぐ隠れていました。後から聞いたら『私の魚沼様に色目を使うので嫌いですわ』だ、そうです。魚沼先生、冴ちゃんに大層気に入られているようです。先生自体は『ぅぬ』っと言うだけで、それ以上は言いません。

 それからいろいろと院部さんに話を聞いたのですが。何だか訳がわからなくて、楽しいのですが疲れた所、葉子さんがにっこりとお風呂攻撃で院部さんを言い負かせて退散させてしまいました。






 そして確か一日だったか……

「無白花ちゃん! 斬無斗君!」

 久しぶりに猫夜叉の二人に会えました。二人共、離れの部屋の屋根からブランとぶら下がって覗いていたので、ちょっとびっくりしましたけど。

「よくなったんだな、雪姫」

 外に出ると、そう言って無白花ちゃんは私をふうわり抱きしめてくれます。

「対神用の呪いだったから、どうにもできず済まなかった」

「対神用? よくわからないけれど、良いんです、無白花ちゃん。斬無斗君、来てくれてありがとう」

 照れているのか、斬無斗君は無言でソッポ向いてます。



 その時、いつの間に来たのか、ベル姉様とリズちゃんが側に居ました。

「では今日は二人と出かけてくる。今日は遠くまで行くから……帰れないかもしれないが心配するな」

「え?」

 その台詞に驚いている私を尻目に、リズちゃんが手を振ります。

「じゃあっスよ!」

「雪姫、行ってくる」

 私はいつものように出かけていく『堕天使』の二人、その後ろに続く、猫夜叉の二人を見送るしかできませんでした。


 その背に不安が過ぎります。


 その夜、眠れずに私は遅くまで筆を取っていました。




挿絵(By みてみん)




 ベル姉様がこの町を出て帰宅したら、宅配で送り届けようと思っている絵に筆を走らせます。

「喜んでくれるかな?」

 そう思いながらも今日はなんだかソワソワします。

 私は電気を消して、カーテンを開けました。

 低い位置にかかる半月よりも細い月を眺めながら、私は膝を付き、祈る様にそっと左手の甲を覆うチョーカーの赤い勾玉に触れます。




「お願い、四人とも……無事でいて下さい」



 きらっと勾玉は答える様に輝くと、月の光を吸い込んだように淡く輝き出します。


『そのいのり、とどけましょうか、巫女よ』


 凛とした女性の声が私に響きます。

「水羽さん?」

『わたしはアナタ、アナタはわたし。血がつないだ者よ』

 意味わかりません。けれども違和感はないです。彼女は私、私は彼女だと自然に思えるのです。

『さあ……』



 勾玉は赤い光を放ち始め、自分の体から『力』がそちらに流れるのがわかりました。その光は部屋を埋め、真白の髪がふわふわと空を浮きます。

「ベル姉様に、リズちゃん、無白花ちゃん、斬無斗君……皆に。……届けて」

 光に発色したのか、ベル姉様の絵がスプレーを吹きかけたように鮮やかな色へと変化します。



挿絵(By みてみん)



 光が満ち、最大になったと感じた瞬間、勾玉は鈴のような音を残し割れてしまいます。

 細かくなった紅い欠片はまるでいつか見た赤い雪のように降り、幻のようにどこかへ消えてゆきます。それが全て消えた瞬間、部屋も静寂を取り戻し、出来上がった絵と私が残されていました。



 ベル姉様とリズちゃんは程なく明け方と共に戻ってきました。

 葉子さんが悲鳴を上げるくらい、ボロボロになっていましたけど。

 無白花ちゃんと斬無斗君も無事だと聞いて、安心しました。



 この後……数日をこの家やうろなで楽しみ、ベル姉様が無事に『彼』の元へと戻ったのは四日の事。

「賀川が戻るのは明日だったか。タイミングの悪い奴だ」

「そうねぇ、ベルさんも探し物が終わってしまったのでは引き留められないしね……と言うか、さっき電話が入って賀川君、怪我したから、帰宅が遅れるっぽいの……」

「え、そうなんですか、葉子さん!」

「まあ、賀川のも男だからな、どんな理由で怪我をしたのやら知れたもんじゃないけどな……」

「ど、どういう意味ですか、タカおじ様!」

「………………一応、ベルも心配していたと伝えておいてくれ」

「きっと大した事ないっスよ。あんなに臭うのに生きてるヤツっスから。先輩荷物持つっス」

 リズちゃんはベル姉様を駅まで送っていくそうです。タカおじ様が車で送っていくと言いましたが、最後にうろなを歩きたいと断っていました。

 賀川さんは居ませんが、タカおじ様も葉子さんも、隠れながら冴ちゃんも、非番のお兄様達も、前田家総出でお見送りです。

 ベル姉様はいつものように変わらず、赤いドレスを揺らして前田家の玄関を出て行きます。




 すぐにでも戻って来そうな調子で。

 と、……本当に戻ってきて。

 握っていたモノを私の手に返してくれます。

 それは……赤いネジでした。




「無理をするなよ、私の可愛い妹よ」

「くふふ、その言葉はそのままお姉様にお返しします」

「笑い方をマスターしたようだな、くふふ」

「……また、お会いしましょう。お姉様」

「ああ、必ず!」



 赤いドレスの後ろに、ポニーテールの少女が引っ付いて門を出て行きます。

 軽く右手をあげながら、後ろを振り返る事がないベル姉様。(泣いてる?)

 使命を果たし無事にうろなを離れ、大好きな人が住む町へ帰っていく後ろ姿。悲しい事ではないのに、別れはやはり辛くて私の目からは涙が溢れてしまいます。

 ベル姉様との長くて短かった二週間。

 本当に、本当にありがとうございました、ベル姉様。そんな思いを込めて、私は頭を下げたのでした。



挿絵(By みてみん)




朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん


妃羅様『うろな町 思議ノ石碑』より、無白花ちゃん、斬無斗君

出汁殻ニボシ様『不法滞在宇宙人』より、井筆菜 伸太郎さん、院部 団蔵君(何処へ…涙)、鸚屋 千草ちゃん

問題があればお知らせください

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