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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
8月29日

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歓迎中です(海外にて)


えーと、皆飲んでるな~

 









 とりあえずあの後も探し物をし、それ以上は殆ど成果がなかったので、俺は仲間達の歓迎会? に出てやった。それが本来の目的だから仕方ない。

 皆にまとめて頭を下げられて。その上、これが最新版の日本スタイルだとか言って、土下座しようとしだしたので、それは流石に止めた。どこで調べてきたのやら。

 アリスが大笑いしてたから、その辺かも知れない。

 ただこの後、何で真実を話さなかったと問い詰められ、またも黙っていたので、皆に呆れられた。でも彼らは極力、裏切った仲間の悪口は言わなかったのが有難かった。



 浴びるように飲まされたけど、タカさんと飲んだ時ほど酔わなかった。みんな非番だから飲み過ぎだと思うが、飲んでないとやっていけない職業であるから仕方ない。俺の時のように全滅なんて事は少ないにしろ、一人の裏切りが全部を壊す、薄氷の上を渡るような仕事だからこそ、繋がりが命なのだ。と、そんな理由で飲んでいる。

 途中でこっそりソフトドリンクに切り替えていた俺は、酔いが抜けるまで、ポリポリとアーモンドやツマミを食べていた。ピザはそれなりに美味しかったけど、葉子さんの飯が食いたい。

「葉子さん、か。息子が土御門……高馬、だったか。まさか……」

 俺は図書館にあったあの写真や見つけた本を思い出しながら一人呟く。どこから当たっていくべきだろう? そう考えながら。

『ねーマスター、アイスある? アイスクリーム……何か赤いのかけて』

 そう言ったら冷たい白のアイスに、チェリーのリキュールだかブランデーだかをかけた物を出された。味は違うけど、森の家で出されたイチゴのアイスのようで。



挿絵(By みてみん)



 白い髪に赤い瞳、……彼女を彷彿とさせるこれ、いいな。

 いつかユキさんが酒を飲める年になったら、こんなのを食べさせたい。でも酒には弱そうだ。一口でも飲んだら、きっと白い肌に、さっと桜色を帯びて綺麗だろうな。

 その頃には綺麗な大き目の胸ももっと成長してたりして。それがそんな色に染まっているだろうから、さぞかし目のやり場に……困らないけど。見る所、ほぼ決まってるだろう、あんなだと。見てくれって言ってはないけども。あんまり見てたら恥ずかしがるか、怒るかなユキさん。そんな顔も可愛いけれど、などと思った。

 酒がかかっているので酔い覚ましになったかはわからないが、食べ終わった時に、ふとピアノが目に入ったので、借りてみる。ユキさんに出来るだけいい音が聞かせてあげたいから。



 即興でジャズっぽく曲を弾くと皆、喜んでくれた。そんな特技があったと知らなかったと笑われて。俺は曲を変え、聞き慣れたこっちのポップスや、日本の曲を耳コピしたモノを弾いていく。

 楽譜を見ると、色々見入ってしまって弾きにくいが、耳で覚えたモノは編曲がしやすくていい。

 だが弾かなかった、そして弾けなかったと知っていた、アリサの妹アリスが酔っていたのか絡んでくる。

『トキ、どんな風の吹き回し?』

『うーん、指カタいな』

『そんなに楽しそうに弾けるようになったのね、ピアノ?』

『なあ、……『アリサ』に会っても良い?』

 僅かに間があった。

『墓参りでしょ? 勝手に行けばいいわ』

『篠生が皆を説得したのか?』

 そう言うと暫く考えた後で、

『あの後、篠生の仲介で逃がした組織を掴まえる事に成功したのよ。そこで姉さんが死んだ日の事がわかって。皆トキに疑いをかけた事を後悔したわ』

 言わなかった俺が悪かったんだけどなと付け加えながら、首を振った。

『すぐに篠生に連絡したけど、聞く耳持ってくれないって』



あの頃は頑なに篠生の言葉にも耳を貸さず、姉の暴力を受け入れる事でなにがしらに縋って生きていた。母も居なくなって、ただ人と人に渡す品物の橋である事が支えで。その中でユキさんと知り合い、あの白さと赤さに一気に心は流れた……

『色々あって受け入れるまでに時間がかかった。ゴメンな』

『戻って来てくれないの?』

『ごめんな……もう俺には』

『sacrifice……』

 彼女の口から溢れた言葉に驚く。それは生贄、神に捧げられる生贄をさす。それで思いつく人物と言えば俺には一人しかいない。言語を日本語にし、俺はアリスに話す。

「ユキさんの事、知っている?」

「ちがうわ……sacrifice……生贄、それは貴方でしょう?」

「俺?」

「幼い頃攫われた貴方は親からまず生贄にされて」

「ありす?」

「ここでもそうだった。自分達が裏切った者を事前に察知できずにいたのを棚に上げて、全滅は貴方のせいだと押し付けて追い出した」

「アリス」

「次の所でも身内に傷つけられて、今もあの白い彼女に……」

「アリス! やめろ」

 俺は彼女の口から溢れる言葉を止めた。

「俺はここにある事、そしてユキさんに出会えたこと、全ては必然だと思っている」

 そう言ってから、図書館で見つけた写真のコピーが入ったポケットをそっと撫でる。

 この剣を見た時、俺は運命だと思ったのだ。そして俺はこの剣を『知っている』。レプリカだ、だが本物と変わらないと言って笑った少年の詰襟姿は朧げだったが……

「今まで人生が狂っているって思った事もあったけれど、今は違う」

「と、き」

「俺、幸せなんだよ」

 少しだけ残っていたアイスが解けてしまっていた。それをカクテルのように煽る。すると下に濃い酒が仕込んだあったようで、体がまた気持ちよく酒を帯びた。




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