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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
8月28日

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祝勝中です(紅と白)

私の作品は現在朝陽さんとコラボを深くさせていただいております。


ですが、朝陽さんサイドの更新を楽しみにしている方には当方『ネタバレ』だという話があるようです。


これはネタバレではなくコラボ作品です、お間違えなきよう閲覧ください。


また、できましたら朝陽さんサイドのお話を重点おいて、お読みになりたい方は、当方の話をお読みになる時は、

(紅と白)

が付いたお話はお読みにならない事を推奨します。








 山のようなご飯にオカズ、美味しそうなものがいっぱいです。



 錦糸卵やエビ、ホタテなどで飾られたひじき入りご飯に、更にウナギを載せた、豪華に彩られたひつまぶし。

 ホウレン草やアルファルファなどのスプラウト、ブロッコリーなど野菜とワカメなど海藻の上に、マグロやカツオにブリやサケなどの刺身を乗せた、色鮮やかなカルパッチョ。

 あさりやしじみやなどの貝がたくさん入った香り豊かなクラムチャウダー、それからこれも匂いが良い豚や鳥などレバーのオイスターソース炒め。

 ぱりっと揚げたゴボウやチーズなど、手で摘まめるようにしてある簡単の一皿もあれば、生クリームを添えた大豆で作ったふんわりパウンドケーキに、小豆入りバニラアイスまで。



「豆類にレバー、牛乳に乳製品、卵、うなぎにひじき、お刺身や貝に海藻……栄養素的に和食な感じの食材が多かったけど。少し洋風、中華な感じも取り入れてみたわ。こんなメニューでよかったかしら?」

 葉子さんはちょっと伺いながら、私達がにっこりすると、ホッとした顔をします。

「これは凄いな」

「美味しそうっス」

「わーい。久しぶりに食べられそうな気がします。アイスは一度冷凍庫に入れてー……」



「皆で楽しんでね。足りなければ追加で作るから、早く言って」

「ばいばーい。そのときは、はこんでくるから」

 葉子さんと冴ちゃんは私達三人に飲み物を渡すと母屋に帰ります。あちらでも同メニューだそうですが、私達は三人で、ゆっくりする事にしました。足りない時は携帯で注文、何だかカラオケボックスみたい。

 皆でジュースのカップを盛大に打ち鳴らします。本来のマナーでは乾杯は杯をあげるだけで、合わせてはいけないのですけれどもね。何だかうれしい気持ちがそうさせます。

「メニューは葉子が?」

「そうっス。ベル先輩が言った栄養素を聞いて、『じゃ、これを買ってきなさい』ってメモをくれて、後は何も理由も聞かず拵えてくれたっス」

「ありがたいな。おお、こうして食べている間にも、血が出来ていくのがわかる気がするぞ。雪姫も美味しいか」

「はい。結構食べられてます」

 ただ、二人の勢いには到底追いつきません。だって、山盛りする度に口の中に消えていくのですから。でも私も山と積まれた一皿目をちゃんと完食出来そうです。

「うん。この刺身、うまいぞ。ほら雪姫、あーん」

 そう言ってベル姉様が差し出してくれるのでパックンして笑うと、

「ずるいっス。先輩、私にもしてくれて良いと思うっス」

「だっ……何かお前とは恥ずかしい」

「何でっスか!」

「じゃあ、リズちゃん、私からはーい」

「ん、美味し~っス。ユキちゃんマジ天使。あの男には勿体無いっス」



 そう言われた所でパタっと私は固まり、二人をじーっと見ました。

 天使……

「あの……『堕天使』って、何ですか?」

 さっきタカおじ様に言いかけていたのを思い出して聞いてみます。

 冴お姉様に入ってしまった『悪魔』と戦っていた二人は、人間とは思えない動きでした。別に二人が何者でもいいのですが、『真の姿』と言うのがあれば、ゆっくり見てみたかったのです。

 二人は少し考えてから、

「私達は、と、ある空間の『天使』と呼ばれる存在だったのだ。それからまあ色々あってだな、神に従わない天使となった。それが私達『堕天使』と言う存在なわけだ」

「私達は堕天使のほんの一部なんスけどね」

「……ベル達は、人間ではない。神に牙を剥き、その果てにヒトを、世界を滅ぼした大罪人だ」

「……やっぱり天使の親戚なんですね?」

「「…………え?」」

 私は嬉しくて二人をしげしげ眺めて、尋ねます。

「いや、その」

「つまり変身少女みたいなものですよね! せ、背中に翼が出るんですか? 見せて下さい!」

 私が二人に迫ると、その勢いに負けたのか、リズちゃんが、

「しょ、しょうがないっスねぇ。雪姫ちゃんの頼みとあらば……変……身ッ!」

 そう言った途端、一番最初、この家に来た時に見えた黒い翼の生えたワンちゃんになりました。頭が三つあって一個ずつ撫でるのがとっても大変です。

『私の名はナベリウス。ソロモン七二柱が一柱、序列二四位を戴く堕天使っス! もっと本当は大きいんスけど、部屋に合せたサイズだとこのくらいっスかね』

「うわーリズちゃん、可愛いーーカッコイイ!」

『か、可愛いっスか?』

「……リズ、お前、そんなコンパクトな姿になれたのか?」

 今までは、小さくなれなかったのでしょうか? リズちゃんは三つ首をブンっと一斉に頷くと、

『はい、水羽様が力を分けてくれたおかげで』

『魔力の制御が上手くできるようになって』

『ご覧のように、ここまでコンパクトな姿になる事ができるようになったっス!』

 その様子を見て、ベル姉様は、くふふと笑うと、

「ベリアル。それが私の真名だ」

 ベル姉様の体が炎に包まれ、パジャマ姿がいつもの赤いドレスへ変化します。その激しい炎は部屋の中いっぱいになりますが、私達の体や部屋のモノを焼いたりはしません。加減が出来るようです。

「ベル先輩――ベリアル先輩はソロモン七二柱が一員で六八位の序列を戴く堕天使で、七大罪「憤怒」の称号を持つ堕天使っすよ! 簡単に言うと、堕天使達の中でもとーっても偉く、強い方っス!」

「…………ベル姉様は翼がないんですか?」

 期待した顔でそう言うと、ベル姉様はふっと息を吐き、

「堕天使に翼が生えているとは限らないのだがな、ベルはこんな事もできるぞ?」

 ざわっと炎が揺れたかと思うと、ベル姉様の背中から生えて、火の鳥のように美しい炎の翼になります。

「凄いです、二人共……」



 ただその後、二人はその後、慌てて姿を元に戻すと、また食べ始めます。すごい勢いで。

「うーーーー体力回復させるっスーー」

「しまった、血液が、血が足りん……調子乗り過ぎた……」

 そう言いながらバクバクと食べ物を平らげ、冴ちゃんがまた? っと、呆れるほど何回も料理を運ばせます。ベル姉様が苦手なようで、受け取るのが姉様だとビクビクしています。



「失礼な奴め。ちょっと目を抉ってやろうかと脅しただけじゃないか」

「それ、充分っスよ」

「それでも悪魔と契約して襲ってきたのだから、骨があるって言えばあるのか。賀川がよほど好きなんだな」

「……二人が戦っていた冴お姉様に憑いていた『悪魔』、逃げちゃったんですよね」

 二人が食べるのを見ながら沈みます。

 あのアラストールという名をもらった子は、『宵乃宮』を恨んでいるようでした。そして賀川さんを奪ったと怒った冴お姉様と組み、私の『巫女』の『力』を求めたのでした。

「でも呪いの根源は絶ててよかったっス」

「その通りだ……」


 聞くと、呪いの根源の一つはベル姉様が、もう一つは急に私から出て行こうとした所をリズちゃんが取り押さえて消してくれたそうです。

「リズも怪我をしていたのに、本当によくやってくれた。感謝する」

「私は、雪姫ちゃんが傷付いていたのが耐えられなかったんス。そして、その元凶が雪姫ちゃんをなおも苦しめていたのが許せなかったんス。でも、本当に雪姫ちゃんが、先輩が無事に帰ってきてくれてよかったっス!」

 私はがっくり項垂れます。

「何だか……迷惑かけてばかり。『巫女』って言っても私は何もできないのに」

「そんなことないっスよ? ベル先輩と私を回復させてくれたのはユキちゃんっス……」

「リズの言う通りだ。ベルが力尽きようとしていた時に、ベルはお前の声を聞いた。それがベルに力を与え、雪姫を助ける事ができたんだ。もう十分すぎるぐらいに、雪姫はよく頑張ったよ」

「回復? ……それは『水羽』さん? の、おかげですよね?」

 私は自分がした覚えも、それ以前に出来るわけもないそれに首を振ります。リズちゃんは難しい顔をしながら、

「水羽様は治癒の力は『ちーと』ではない、巫女の命を削る、そして管理していると言っていたっス。たぶんそれはユキちゃんが助けようとするヒトをいかに大切に思っているか、そんなのが基準じゃないかと思うっス」

「つまり、水羽が私達を癒してくれたのは、雪姫がいかに私達を愛してくれているかの証明と言うわけだな」

 ベル姉様は私の目を見てから、諭すように、

「雪姫、お前は素晴らしい絵が描けて、皆に優しく、愛しむことが出来る。それだけで充分だ。あの悪魔がお前にまた牙を剥くなら、このベルがお前を守る」

「ベル姉様、もう危ない事は……」

「……どちらにしても、あいつとは、またどこかで決着をつけねばいけない時が来る気がする」

 私はどこか、遠い所を見つめるベル姉様が心配です。



「先輩、本も探さないといけないっスよ」

「期限も間近だ、体力が回復次第、全力でかからねば」

「早く、体が良くなります様に。そして何事もありませんように」

 そう言うと、首に付けなくてよくなったチョーカーを、怪我した左手の甲に巻きつけます。

 ベル姉様もお揃いを自分の手の甲に巻くと私の手に重ねます。

「お前は人間だ、呪いが解けたからとて、堕天使の私達ほど急激に体調が治るわけでもない。左手も痛みも退くまで相応にかかるだろう。だから……ユキはここで祈っていてくれ」

「はい」

「私もしっかり働くっス」

「お願い、ベル姉様も、リズちゃんも怪我しないように」

 私はそう祈ります。



「っと、言うわけで、今日は食べて飲んで、楽しい話するっス」

「そうだ、飲め!」

「そんなにたくさん炭酸飲めませんよっ、ベル姉様っ」

「じゃあ、食べろ。しっかり体を治して、賀川の帰りを待つんだろう? 帰ってきたらキスでもしてやれ。奴にとっては挨拶なんだろう?」

「ちょ、恥ずかしいです。ベル姉様」

「あの男にユキちゃんやっていいんスか? 私は反対っス。ピアノってキザっす。生意気っス!」

「あ、ベル姉様の『彼』は楽器とかしないんですか?」

「か、かかか彼だなんて照れるじゃないか……コホン、あいつは料理が得意でだな……料理といえば、ベルの火が無くて困っていないといいが……」

「べ、『ベル姉様の彼』??????? 何っスか? 先輩、私に内緒で……二人共、リア充なんっスね!」

 この後、三人で、ワアワアと疲れるまで喋り、食べて、夜を超す頃には皆でゴロゴロ寝てしまいました。


朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん

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