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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
8月28日

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133/531

遅起床中です(紅と白)

私の作品は現在朝陽さんとコラボを深くさせていただいております。


ですが、朝陽さんサイドの更新を楽しみにしている方には当方『ネタバレ』だという話があるようです。


これはネタバレではなくコラボ作品です、お間違えなきよう閲覧ください。


朝陽さんサイドのお話を重点おいて、お読みになりたい方は、当方の話をお読みになる時は、

(紅と白)

が付いたお話はお読みにならない事を推奨します。

lllllllllllllllll


幸せ~♪


 










「ふぁ…………」

 良い匂いがします。そう、ずっと、どこか安心できる匂いで包まれていました。今ちょっと、遠い所に居るあの人の匂い。

 どのくらい、遠いのかな?

 バスで行ったら会えるのかな?

 飛行機が良いのかな?

 でも船で行くのは酔いそうで嫌です。



 それにしてもこの頃、寝ると網膜に焼き付いたように再生されていた血の海の記憶を見る事もなく、私は穏やかに目を開けます。

 カーテンから漏れる光は強く明るいので、朝ではなくもう昼すぎているのでしょう。

 夢に見なかったからと言って、ヒトを傷つけた事が無くなるわけではないのです。けれどもずぅーーーーと夢見て感じていると、魂までおかしくなっていくから。

 こうやって安眠できた事に喜びを感じます。

「ここ、賀川さんの部屋……」

 私は左の掌をグルグル巻きにされているのに気付き、骨まで響くような鈍痛で顔を歪めます。それでも疲れているのかな?

 黒犬のぬいぐるみを握り締めながら、また少し眠りに落ちたり、目が覚めたりしているうちに、目の前にベル姉様の顔が!



「あ、れ? ベル姉様おはようございます、リズちゃん……って何時ですかね?」



 そう言いながら気付くとベル姉様と、唇が触れそうなほどの近さだったので、恥ずかしくなって飛び退きます。そこでふと異変に気が付いて見回すと、ココは離れの私の部屋……いつの間に移動したのでしょうか?

「あれ? 私、賀川さんの部屋で寝ていた気がしたのです……ぁ……べ、ベル姉様?」

 突然ベル姉様が飛びついて来て、私の胸に顔をうずめます。

「ゆ、雪姫……本当に雪姫だよな? ああ、このボリュームと柔らかさは間違いなく雪姫だ」

「どこで確認してるんっスか!」

「く、くすぐったいです、あれ? ベル姉様?」

「怪我は? ああ、手、痛くないか……よかった、消えている……」

 ベル姉様は私の服とチョーカーを引き下げ、首筋を確認し、安堵の笑みを浮かべます。

 呪い……近くの鏡で確認すると、首の傷が綺麗に無くなっていました。そして確かに始終体に纏わりついた痛みが消えています。

 ああ、微笑みながら、ベル姉様が泣いていて、私はその頬にそっと触れ、

「べ、ベル姉様、泣かないで下さい。私はもう大丈夫です」

「泣く? 誰が? ……私が、か?」

 ベル姉様、私に言われるまで自分が泣いている事に気付かなかったようです。その横でリズちゃんが、

「あおーん! ベル先輩も雪姫ちゃんも無事でよかったっス。一時はどうなるかと思ったっスよ。でも先輩も雪姫ちゃんも信じてい…………先ぱ……」

「二人共、無事でよかった。私は……嬉しいのだ」

 そう言いながらベル姉様は私とリズちゃんを抱き抱えてポロポロと涙をこぼします。

「私の不注意で、連れて行かれたりしてごめんなさい」

 私が泣きながら謝ると、ベル姉様が、

「ちゃんと声をかける様に言ったのに、この妹は心配をかける……何だ、雪姫もリズも泣いて……」

「はは、先輩もヒトの事言えないっスよぉーー」

 何だかみんなでもらい泣きしてしまって、無事で嬉しいのに、暫く笑い泣きしながら過ごしました。



「で、お前のおごりだろ?」



 その一言でリズちゃんがハッとします。

「え、割り勘って言ったっスよ! まあ大丈夫っス。葉子さんにお金はもらったっス!」

「リズ、貰ったって……」

「タダで貰ったわけじゃないっスよ? 前に山のキノコや山菜、川で釣った鮎と交換したっス」

「い、いつの間に……」

「すっごいです! 鮎釣れるのですか?」

「そうっスよ! よかったら今度お教えするっスー!」

 そう言うと寄り添ってくるので、リズちゃんの頭をなでなでします。何だか幸せです。

「本当にユキちゃんは柔らかいっス!」

「えと、えっと。何かくすぐったいですけどっ!」

「で、先輩、何が食べたいっスか?」

 そう言った途端、ベルちゃんは考え込んだように、

「血は『三分の二』だったか」

 そう言った後、

「血液を回復させるのには、タンパク、ビタミンB1、ビタミンB2……そしてしじみに造血作用があるそうだ。魚介類や豆も良いと聞いた……」

「誰に、何をっスか!」

「………………水羽に、血を増やす食べ物だ」

「水羽様、ですか?」

「何で様付なんだ?」

「一応神様みたいだったんで……」

 暫く二人の間に沈黙が落ちます。

「水羽って誰ですか?」

 私が聞くと二人とも顔を見合わせ、ぴたっと私を指差します。

「わ? お二人共、なんですか?」

「……雪姫、お前自身なのか、何なのか正確には解釈しかねるが、ヒト知れない力に助けられたのは間違いない」



 そこまでベル姉様が言った時、

「おう、声がするが、起きたのか? ベル嬢ちゃん」

「ああ、おかげさまでな。迷惑と心配をかけてしまったな」

「わ、私は葉子さんに何が良いか聞いて買い出しに行ってくるっス!」

 タカおじ様の声を聴いた途端、びくっっとして、扉を開けるとタカおじ様に会釈をして逃げるリズちゃん。私はたぶん迷惑をかけたのだろうと思い、

「タカおじ様! ごめんなさい」

「ん? ユキ、お前、いつの間にこっちへ来ていたんだ? と言うか、水羽じゃなくユキ、だな?」

「え、あ、はい?」

 皆、私を『水羽さん』と重ねているようです。そう言えば私もちょっと不思議な誰かと喋って、ネジを掌に刺したような。

「痛い……」

 思い出すと疼く傷に顔を歪めます。

「そうか。まあいい。だいたいはリズ嬢ちゃんに聞いたが。風呂に入れそうなら入っておけ、煤けているぞ。その後に居間に来い。ユキ、怪我が酷いから、左手は濡らすなよ」



 言われた通り、濡らさないように左手をビニールに包んでから二人でお風呂に入りました。

「しばらく不自由するな、水羽の奴、雪姫も治していってくれればいいモノを」

 そう言いながら、疲れているでしょうに、ベル姉様は私の世話を焼こうとします。私も片手で不器用ながら背中を洗ってあげて。肌に一つの傷もないのに安堵します。

 この前のようにキャーキャー騒いだりする余裕はなかったのですが、私の首筋を見て、

「本当に良かった。呪いが消えて……」

 と、ベル姉様は改めて言います。余程、私は良くない状態だったのでしょうか?

「難しいモノだったのですか?」

「今だから言うが、お前には二つの呪いがかけられていた。一つは対象者をネガティブにさせる呪い、もう一つは徐々に生命力を奪う呪いだ。相乗効果で最悪な組み合わせとなる。本当に腹の立つ……それも通常は呪いをかけた奴を潰せば解けるモノだと言うのに、猫夜叉の二人が術者は『死んだ』というし。どうなる事かと思ったが。まさか『呪い』自体に自分の思念を残し、復活を図ろうとしていたとは……」

「あの老人や鬼が居た……あれは、ただの夢ではなかったのですね」

 複雑な構造は良く理解できませんが、いろいろ考えさせられる話で、湯船でプクプクお湯をいわせながら色々思い出してみます。

「うーん、私にはわかりません」

 そう言うと、ベル姉様は私の隣により添いながら湯船から手を出すと、そっと肩に手を回して、

「雪姫はそのままで良いって事だろう。きっと時期が来ればわかる。今は無事を喜べばいい」

 と、言ってくれました。



 風呂から上がった私達をタカおじ様は掴まえると、居間へ連れてきます。

「ぁーーーーベル嬢ちゃん、こいつは魚沼。一応弁護士だ」

 と、ウトウトと寝ている小さい女の子を膝に乗せた、ぎょぎょのオジサマが座っていました。見た途端、ベル姉様は少しギョッとした顔をして、

「ベルだ。ここで世話になっている」

 と、言いながら、

「あれはカッパと言う生き物なのか、それも子供を抱いているぞ。カッパは子煩悩なのか?」

「カッパが子煩悩かは知りませんけれど、ぎょぎょのオジサマは優しい方ですよ? でもあの女の子は……あの、タカおじ様?」

「わかるか?」

「そんな、何でお姉様が小さいんですか?」

「何?」

 私は驚きます。だってぎょぎょのオジサマが抱っこしていたのは、賀川さんの姉、冴お姉様の雰囲気だったから。前のような禍々しさではなく、柔らかい屈託のない子供のそれで、夢だか幻だかであったその頃の彼女の姿。

「ベルお姉様、あの子、冴お姉様です」

「なにぃ」

「水羽というそれは『やり直すべきだから、小さくした』のだと言っていた」

「めちゃくちゃだな、あいつは……」

 そう言いながらベル姉様が近寄って行った途端、パチッと冴お姉様の目が開き、二人の目が合った途端、

「き、」

「き?」

「きゃああああああああああああああっ!!!!!! 怖ぃっ、魚沼様ぁーー」

「と、突然何なんだっ」

 ベル姉様は数歩引き、冴お姉様はぎょぎょのオジサマの背後に隠れます。

「冴、失礼だぞ。挨拶をしなさい。それが礼儀と言うモノだ」

 涙目になりながら、その言葉に応えておずおずと、

「ごめんなさい、私、ときさだ さえ、です。お姉さんはすっごい顔で爪伸ばしたお化けに似ていたの」

「……ベルだ」

「ユキです。ベル姉様は怖いヒトじゃないですよ? 冴おねえ……冴ちゃん」

「は、はい、ユキちゃん。ごめんなさいベルちゃん」

 そう言ってもビクビクしている冴お姉様、もとい冴ちゃんに、台所から、

「冴ちゃん、こちらにいらっしゃい。料理教えるから」

「は、はい。じゃあまた遊んで下さいね、魚沼様」

「うぬ」

 葉子さんの言葉に良かったと言わんばかりに、冴ちゃんは部屋を飛び出していきます。

「冴ちゃんって、会社のトップなんですよね?」

「その辺はだいたい片付けて、後はバッタに任せてきた。法律上は……」

「権利など父親に戻したり引き継ぎいだりはあったが、さして問題ない。冴自身の筆跡で病気療養の届けなど出し、自分の融通が利く者を手配し、関係各所に抜かりなく本人が手を回していた。全く、知識はそこいらの大人以上だ。姿を見せなくていいならば、そのままでもやっていけるだろう。だが……」

「どうも賀川の酷い目にあった事などは忘れて、攫われた辺りで記憶が止まっているようだ。さえちゃんは暫くこの家に預かる。今、ココでどう過ごすかであの子の人生が変わるはず。今、あんな大人の私怨渦巻く所に置いていれば、また同じ人生を歩む、それだけは避けてやりたい。とにかく賀川のに会いたいようだ」

「でも、大きくなった賀川さんで納得するでしょうか?」

「その辺は奴が帰ってから、また考えよう。その間は葉子さんが相手をしてくれる。ユキも様子を見てやってくれ。ベル嬢ちゃんは……嫌われていた、な」

「やり合った時の記憶が深層意識に焼き付いているのかもしれないな」

 ベル姉様がニヤリと笑います。

「やり合った話は聞いたが。冴ちゃんに憑いたっていう、悪魔に対抗できるとはすげぇ力だ。ちょっと尾ひれ背びれが付いているとは思うが」

 ベル姉様達と冴ちゃんに憑いていた者との戦いを、タカおじ様は聞いたようです。でもあれは、本当に目にしたモノでなければ信じられないでしょう。

「我々は『堕天使』だからな」

 ベル姉様の言葉に首を傾げます。『堕天使』って何でしょう? 天使の親戚でしょうか? 何か排他的な雰囲気でカッコいい響きではありますけど。タカおじ様も戸惑ったように、

「だ、だてんし? うーん……天使と堕天使の違いが解らんが。そんなの聞かされても、うちの大切なユキを守ってくれた、可愛い嬢ちゃん達って認識以上でも以下でもないがな。対価に魂とかいるならこの老いぼれのだけにしてくれよ。とにかく感謝する」

「はははっ、魂なんかに興味はないし、報酬は断ったはずだ。私はユキが守りたいと思い、その心に従ったまで。鷹槍達と意志が同じで、私達が一番近くに居たから行動に出て、戦ったまでだ」

「うぬ、素晴らしき戦士の心だ」

 ぎょぎょのオジサマがそう言った時、リズちゃんがそこに入ってきます。



「今日の夕飯は葉子さんが三人分、離れに持って行けるようにしてくれるっス」

 その後ろから追いかけてくる葉子さんが、その首根っこに手を伸ばしました。

「ちょっとお待ちなさい、リズちゃん……!」

「何っスか!」

「何だか凄く汚れてるわ、風呂、入りなさい!」

「今、買い物前に山行って、ちゃんと川で入っ……」

「かわぁ~ですって! ダメよ、即入りなさい! 冴ちゃん、手伝って」

「はーい」

「ひっ! そ、それはシャンプーするぞって事っスよね! せ、先輩、助けてっス!」

「……逝ってこい」

「ひ、酷いっスーーわおーーん!」

 その後、一騒動しながら葉子さんと冴ちゃんで、リズちゃんをお風呂に入れたようです。



朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん

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