抵抗中です(紅と白)
更新があいた為、お忘れの方の為にあらすじを……
うろな町、その北にある森に、母に置き去りにされた少女、雪姫はふとした事から死にかけ、それを町の中学の先生に救われる。
彼女はうろな工務店の養女として迎えられ、絵描きとして筆をとりながら、森の家とうろな裾野にある家にも住む様になる。
その中、自分が巫女というモノの血を引いている事を知る。
ゆったりと流れる町の時間に乗りながら町は夏祭りを迎える。
彼女が森の中に居た時から集配に来ていた『賀川』にどこか惹かれながら、赤いネジは二人の間を少しずつ繋いでいく。
剣道大会中に起きた人外の波は、裏で『うろ夏の陣』を引き起こし、巫女の力を狙った小角に雪姫は攫われ、友人である猫夜叉に救われた。が、雪姫は『呪い』を受けたまま日常に戻った。
そんな八月の終わり頃、ユキは海の家ARIKAで時を過ごし、同日、賀川に連れられた堕天使ベル、そして翌日には彼女を先輩と慕うリズと出会う。
ベルに叱咤され、覚悟を固める賀川。彼と雪姫は、森でARIKAの娘である汐と時を過ごし、夜輝石を手に微笑みあった。
バザーの日、事情によりうろなを去った賀川の知らぬ所で、彼の姉である冴は雪姫を憎む。
堕天使ベルに撃退された冴だったが、憎みが募る余りに、悪魔『アラストール』と共謀し、その命と力を狙い、呪いに苦しむ雪姫を連れ去った。
私は体の震えを堪えてから、冴お姉様に手を差し出しました。
「お願いです。私が言う事を聞いたら。私を差し出したら、お願いを聞いてくれませんか?」
「何かしら? 今更、命乞い? もう少し早かったらよかったのにね」
私は首を振ります。
「いいえ。そうではなくて。賀川さ……いえ、玲さんには何もしないでほしいのです」
こんな事しか思いつかなくて。でも思いを込めてそう言います。
「私は勝手に死んだのだと伝えて下さい。だって、お姉様がこんな事するの、賀……玲さんに見せたくないんです」
今、自分がここから逃げられないのなら。出来る事はこれしか思いつかなくて。戦う力なんて私にはないから。
自分を渡してはいけないってわかっていたけれど、それが逃れられないならせめて。何故思い通りに自分の『生』を求められないのか、苦悩しながら。
私が死んだら、ベル姉様やリズちゃんは嘆くのかな?
タカおじ様や葉子さんビックリする?
手袋ちゃんは鳴いてくれる?
無白花ちゃんや斬無斗君は許してくれる?
司先生や清水先生は怒るのかな?
ねえ、汐ちゃん、どうしたらいい?
ね……賀川さん……貴方は、泣くの?
「お願い、賀川さんには……」
お姉様の表情が驚きからすぐに怒りにそれが変わると、
「今更、貴女だけいい子ぶる気なのね。この期に及んで何て子なの!」
頬を打たれ、体があり得ない力で数メーターほどふっ飛びます。顎が外れたかと思いましたが、それはなかったです。何とか手をついて起き上がります、
口の横が切れたようでつっっと血が落ちました。その血が、吹っ飛んだ時にポケットから転げた、犬のぬいぐるみ、黒軍手君を汚します。
これだけは側に置いておきたい、血を拭ったその手で黒軍手君を握りしめた途端、
『ネジを。てに、穿ちなさい』
そんな声が響きました。
「ネジ?」
『はやく』
「さあ、その生意気な口から、悲鳴しか漏れないようにしてあげる『さあ、喰わせろ、巫女よ! その血肉をわけよ』」
冴お姉様の口から、同時に二つの声が溢れます。
急かす声が脳裏に響きます。
『はやく!』
私は……
黒軍手君の首に巻いていた布に、タカおじ様から頂いた赤いネジをお守りとして入れていたのです。何故それを知っているのか、疑問を投げている暇はありません。お守りとしていたそれを取り出し、右手に握って左手の掌を撃ち抜くように叩きます。
激しい痛み。
がががががっっと、何かがぶつかる音に身を竦めます。
「何なのコレは? アラストールっ」
『こ、これは闇御津羽の結界!』
『あんまりながくはもたないけどね。血がついたおかげで、媒介に出来たわ』
赤いガラスで出来たような半円ドーム状の何かが、私を囲んでいます。
『て、にぎるの。ネジをおとさないで。血をあたえて』
「誰? 誰?」
『……だれって、いま、かんけいある?』
「か、関係ないですけど」
言われたように傷みを堪えて手を握り、ネジを落とさないようにします。血が、何処かに飲まれて消える感覚がします。少しずつ、ストローで吸い上げられるように。
『もって、じゅっぷん』
「え?」
『しかたないわ。いまのあなたじゃ使えてもそんなもの』
「使える様になれば、どうできますか?」
混乱しながらもその声に聞いて見ます。そうすると、
『そうね。アレをじゅっかいころせるくらい。でもむり。『巫女』は、いえあなたはそれをのぞまない』
何か怖い事を聞いた気がします。私はちらりと冴お姉様を見ます。
『何度か当たれば壊れる。任せろ』
怖ろしいほどの音でそう言うと、お姉様が体当たりして来ます。私には黒い靄の塊に見えて。もはや人の形が私には確認できません。がりがりっと当たる度に削れるような音がします。
私は膝を抱えて出来るだけ小さくなり、顔を伏せます。
「私は、普通じゃない?」
『そうね、すくなくとも。わたしとふつうに、かいわできるくらいに』
「たまに声を聞いた気がします」
私にこの頃、聞こえる声は大抵男性で、怖いような恐ろしい事しか言わないのですが、この凛とした声の彼女は違います。何より私に近くて遠い感覚。
『うーん。いそうろうとキス、もう少ししておけばよかった』
「え?」
『ちからをやったりもらったりは、キスが早いわ。それも巫女にもーしんしてるモノ、彼からはもらいやすいのよ。あ、キスよりいいのは……』
「ちょ……」
そう言えば、夢見が悪くて朦朧としていた時、私、賀川さんにキスした……それを思い出します。
『あ、ごかいしないで。わたしがさせたわけじゃないから。したいとおもったのは巫女だから』
「み、巫女って私の事ですよね? キスしたいと思ったって……」
『したい、でしょ? キスだけじゃなくて、心も体もすべて……』
も、凄い問題発言を聞いている気がしました。ただ冴お姉様が凄い形相で体当たりしていると言うのに、こんな会話をしていて良いのでしょうか?
『いそうろうは、はなしがどうかとおもうけど、キスはじょう……』
「やぁやぁやめてくだ……さい……」
『てれてる? でもだれとでも、やることはいっしょよ。だしいれするだけ。美味いか不味いかはあるけど』
「……だしっ…………………………はぅぅ……」
『ん? 何かんがえてるの? ホント、巫女なんだから『ちから』のだしいれ、は、じぶんでちゃんとできればいいんだけど』
「あ……そう、ですか……」
私達がこんなお喋りしている間にリミットが来てしまったようで、音を立ててガラスの壁が崩れてしまいます。
『あらら、しかたないわねぇ。貴女とネジじゃこれがせいぜいね』
「ふふふ……手こずらせてくれるわね」
何かやっと現実に戻れましたが、事態は最悪に向かっているような……
「『さあ、その血を……我に差し出せ巫女よ』」
飛び掛かろうとした冴お姉様の前に、突然何かが降り注ぎます。
『でもちょうどよかったかもね』
「何よこれ?」
それは大量の蝶でした。後ずさった冴お姉様に赤い炎がどこからか投げつけられます。
「誰なの、邪魔するのは!」
「ベルの妹に気安く触るなとあれだけ警告したのに……いい度胸だな、女!」
「べ、ベル姉様!」
そこに颯爽と立っていたのは赤いドレスに、綺麗なツインテールを揺らしたベル姉様でした。
朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん、そしてアラストール。
妃羅様『うろな町 思議ノ石碑』より、無白花ちゃん、斬無斗君
YL様 "うろな町の教育を考える会" 業務日誌より 司先生。清水先生。
とにあ様 時雨 より、時雨ちゃん(手袋ちゃん)
小藍様 『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より、汐ちゃん
名前お借りしてます。
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