表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
8月28日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

124/531

抵抗中です(紅と白)

更新があいた為、お忘れの方の為にあらすじを……



うろな町、その北にある森に、母に置き去りにされた少女、雪姫はふとした事から死にかけ、それを町の中学の先生に救われる。

彼女はうろな工務店の養女として迎えられ、絵描きとして筆をとりながら、森の家とうろな裾野にある家にも住む様になる。

その中、自分が巫女というモノの血を引いている事を知る。

ゆったりと流れる町の時間に乗りながら町は夏祭りを迎える。

彼女が森の中に居た時から集配に来ていた『賀川』にどこか惹かれながら、赤いネジは二人の間を少しずつ繋いでいく。

剣道大会中に起きた人外の波は、裏で『うろ夏の陣』を引き起こし、巫女の力を狙った小角に雪姫は攫われ、友人である猫夜叉に救われた。が、雪姫は『呪い』を受けたまま日常に戻った。

そんな八月の終わり頃、ユキは海の家ARIKAで時を過ごし、同日、賀川に連れられた堕天使ベル、そして翌日には彼女を先輩と慕うリズと出会う。

ベルに叱咤され、覚悟を固める賀川。彼と雪姫は、森でARIKAの娘である汐と時を過ごし、夜輝石を手に微笑みあった。

バザーの日、事情によりうろなを去った賀川の知らぬ所で、彼の姉である冴は雪姫を憎む。

堕天使ベルに撃退された冴だったが、憎みが募る余りに、悪魔『アラストール』と共謀し、その命と力を狙い、呪いに苦しむ雪姫を連れ去った。




 





 私は体の震えを堪えてから、冴お姉様に手を差し出しました。

「お願いです。私が言う事を聞いたら。私を差し出したら、お願いを聞いてくれませんか?」

「何かしら? 今更、命乞い? もう少し早かったらよかったのにね」

私は首を振ります。

「いいえ。そうではなくて。賀川さ……いえ、玲さんには何もしないでほしいのです」

 こんな事しか思いつかなくて。でも思いを込めてそう言います。

「私は勝手に死んだのだと伝えて下さい。だって、お姉様がこんな事するの、賀……玲さんに見せたくないんです」

 今、自分がここから逃げられないのなら。出来る事はこれしか思いつかなくて。戦う力なんて私にはないから。

 自分を渡してはいけないってわかっていたけれど、それが逃れられないならせめて。何故思い通りに自分の『生』を求められないのか、苦悩しながら。



 私が死んだら、ベル姉様やリズちゃんは嘆くのかな?

 タカおじ様や葉子さんビックリする?

 手袋ちゃんは鳴いてくれる?

 無白花ちゃんや斬無斗君は許してくれる?

 司先生や清水先生は怒るのかな?

 ねえ、汐ちゃん、どうしたらいい?

 ね……賀川さん……貴方は、泣くの?



「お願い、賀川さんには……」

 お姉様の表情が驚きからすぐに怒りにそれが変わると、

「今更、貴女だけいい子ぶる気なのね。この期に及んで何て子なの!」

 頬を打たれ、体があり得ない力で数メーターほどふっ飛びます。顎が外れたかと思いましたが、それはなかったです。何とか手をついて起き上がります、

 口の横が切れたようでつっっと血が落ちました。その血が、吹っ飛んだ時にポケットから転げた、犬のぬいぐるみ、黒軍手君を汚します。



 これだけは側に置いておきたい、血を拭ったその手で黒軍手君を握りしめた途端、

『ネジを。てに、穿ちなさい』

 そんな声が響きました。

「ネジ?」

『はやく』

「さあ、その生意気な口から、悲鳴しか漏れないようにしてあげる『さあ、喰わせろ、巫女よ! その血肉をわけよ』」

 冴お姉様の口から、同時に二つの声が溢れます。

 急かす声が脳裏に響きます。

『はやく!』

 私は……

 黒軍手君の首に巻いていた布に、タカおじ様から頂いた赤いネジをお守りとして入れていたのです。何故それを知っているのか、疑問を投げている暇はありません。お守りとしていたそれを取り出し、右手に握って左手の掌を撃ち抜くように叩きます。



 激しい痛み。



 がががががっっと、何かがぶつかる音に身を竦めます。

「何なのコレは? アラストールっ」

『こ、これは闇御津羽くらみづはの結界!』

『あんまりながくはもたないけどね。血がついたおかげで、媒介に出来たわ』

 赤いガラスで出来たような半円ドーム状の何かが、私を囲んでいます。

『て、にぎるの。ネジをおとさないで。血をあたえて』

「誰? 誰?」

『……だれって、いま、かんけいある?』

「か、関係ないですけど」

 言われたように傷みを堪えて手を握り、ネジを落とさないようにします。血が、何処かに飲まれて消える感覚がします。少しずつ、ストローで吸い上げられるように。

『もって、じゅっぷん』

「え?」

『しかたないわ。いまのあなたじゃ使えてもそんなもの』

「使える様になれば、どうできますか?」

 混乱しながらもその声に聞いて見ます。そうすると、

『そうね。アレをじゅっかいころせるくらい。でもむり。『巫女』は、いえあなたはそれをのぞまない』

 何か怖い事を聞いた気がします。私はちらりと冴お姉様を見ます。



『何度か当たれば壊れる。任せろ』

 怖ろしいほどの音でそう言うと、お姉様が体当たりして来ます。私には黒い靄の塊に見えて。もはや人の形が私には確認できません。がりがりっと当たる度に削れるような音がします。

 私は膝を抱えて出来るだけ小さくなり、顔を伏せます。

「私は、普通じゃない?」

『そうね、すくなくとも。わたしとふつうに、かいわできるくらいに』

「たまに声を聞いた気がします」

 私にこの頃、聞こえる声は大抵男性で、怖いような恐ろしい事しか言わないのですが、この凛とした声の彼女は違います。何より私に近くて遠い感覚。

『うーん。いそうろうとキス、もう少ししておけばよかった』

「え?」

『ちからをやったりもらったりは、キスが早いわ。それも巫女にもーしんしてるモノ、彼からはもらいやすいのよ。あ、キスよりいいのは……』

「ちょ……」

 そう言えば、夢見が悪くて朦朧としていた時、私、賀川さんにキスした……それを思い出します。

『あ、ごかいしないで。わたしがさせたわけじゃないから。したいとおもったのは巫女だから』

「み、巫女って私の事ですよね? キスしたいと思ったって……」

『したい、でしょ? キスだけじゃなくて、心も体もすべて……』

 も、凄い問題発言を聞いている気がしました。ただ冴お姉様が凄い形相で体当たりしていると言うのに、こんな会話をしていて良いのでしょうか?

『いそうろうは、はなしがどうかとおもうけど、キスはじょう……』

「やぁやぁやめてくだ……さい……」

『てれてる? でもだれとでも、やることはいっしょよ。だしいれするだけ。美味いか不味いかはあるけど』

「……だしっ…………………………はぅぅ……」

『ん? 何かんがえてるの? ホント、巫女なんだから『ちから』のだしいれ、は、じぶんでちゃんとできればいいんだけど』

「あ……そう、ですか……」

 私達がこんなお喋りしている間にリミットが来てしまったようで、音を立ててガラスの壁が崩れてしまいます。

『あらら、しかたないわねぇ。貴女とネジじゃこれがせいぜいね』



「ふふふ……手こずらせてくれるわね」

 何かやっと現実に戻れましたが、事態は最悪に向かっているような……

「『さあ、その血を……我に差し出せ巫女よ』」

 飛び掛かろうとした冴お姉様の前に、突然何かが降り注ぎます。

『でもちょうどよかったかもね』

「何よこれ?」

 それは大量の蝶でした。後ずさった冴お姉様に赤い炎がどこからか投げつけられます。

「誰なの、邪魔するのは!」

「ベルの妹に気安く触るなとあれだけ警告したのに……いい度胸だな、女!」

「べ、ベル姉様!」

 そこに颯爽と立っていたのは赤いドレスに、綺麗なツインテールを揺らしたベル姉様でした。




挿絵(By みてみん)

朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん、そしてアラストール。


妃羅様『うろな町 思議ノ石碑』より、無白花ちゃん、斬無斗君

YL様 "うろな町の教育を考える会" 業務日誌より 司先生。清水先生。

とにあ様 時雨 より、時雨ちゃん(手袋ちゃん)

小藍様 『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より、汐ちゃん


名前お借りしてます。


何か問題があればお知らせください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ