帰宅中です(紅と白)
楽しかったです。
バザーでの食事は海の家ARIKAから海さんと汐ちゃんが来てお店を開いていたので、そこでいただきました。海さんがこないだ起こった事を、また詫びて来てビックリしました。ちゃーんと昨夜の納涼会でも謝ってくれたのに。それも怪しかったのは私だったのです。
でも『ユキっち』と、砕けて呼んでくれてすごく嬉しいのです。汐ちゃんには賀川さんとお揃いでいただいた綺麗な石のお礼を言うと、素敵な笑顔をくれました。
だだ、残念ながら食事は余り食べられなくて。司先生が見ていたし、海さんが作ってくれたものは美味しくて、とってもとっても頑張ったんだけど。
その後は果穂先生の子供さん二人と遊んで、またバザーを回って。
ベル姉様は白くて赤い様な不思議デザートをパクつきながら、先生達とお話していたようです。
色々楽しかったけれど、少し疲れました。
それにしてもベル姉様とお揃いの勾玉のチョーカーがとてもうれしいです。賀川さんとお揃いの青い石も嬉しいし。
お揃いって素敵ですね。うれしくなります。
帰り際。
疲れた私の事に気付いたのか、ベル姉様が私を見ます。
「……あの、ベル姉様?」
「ーー雪姫、何があろうとベルがお前を守ってやるからな」
嬉しくて笑おうとしましたが、首筋が痛んで上手く笑えていたかわかりません。何だかとても痛むのです。
『お前を守る者がどれだけ居ようと、お前は救われない』
でも深く湧き上がる様な炎の瞳は私を真っ直ぐ見据え、私を包むのでそれだけで安心できるのです。
私は無理にでも笑います。
「雪姫、疲れたか?」
「ううん、大丈夫です。むしろ、とっても楽しかったです」
「そうか、それはよかった。声をかけた甲斐があったというものだ」
そう言って買った物を見下ろすベル姉様に声をかけます。
「それはお友達の分?」
「友達……まあ、な」
そうやって話ながら歩いていた私達を人影が遮ります。
「お久しぶりね、ユキさん」
しゃんとした着物姿、怖いまでの笑み。
「そんな格好をして、あきらちゃんを誘惑しようとでもいうのかしら?」
「……あれは誰だ? 雪姫」
「この前話した賀川さんのお姉様……時貞冴さんです」
「姉?」
そう、そこにいたのは賀川さんの姉、冴お姉様でした。
姉弟と言うから何処か賀川さんに似ているでしょうが、私にはわかりません。でも、ああ、彼の頑なさは少し似ているかもしれません。
「ユキさん、その子供さんはどなた?」
「ベルは子供ではない。気安く話しかけるな」
冴お姉様はベル姉様の声は聞いていないようです。私をじっと見据えると、
「この前、お話したの覚えているかしら?」
「あ、でも」
「覚えているなら、何故貴女はあの子と一緒に居ようとするのかしら?」
「別に居ようと何て、その……ただ私、彼が……」
「まさかと思うけれど、軽々しく『好き』なんて言わないでね、あの子は『私』のなの」
私は返答に困ります。
お姉様が賀川さんを愛しているのは分かります。ちょっと、変わっている感じがするけれど。
それを否定する事は出来ません。
けれども私も彼の事が……だけど彼は複雑すぎて、確かに軽々しくその言葉は言えません。だから、うつむくだけしかできなくて。
言葉を失った私に、
「私の方があの子の事をわかっているわ」
くすりと笑うと、
「貴女はあの子に必要ないの。でもあきらちゃん、貴女がいると私の言う事を聞いてくれないから」
お姉様の手元が輝いたような気がしました。
「……消えて」
そう言い切った時、私に何か重いものがずんと乗った気がしました。きりきりと左の首筋に痛みが走ります。今までの痛みとは全く違う、比べ物にもならない程、絶対的な痛み。
「あ、貴女、何をするの!? そこをどいて!」
痛みで身を竦めた私の前に、ベル姉様が一歩踏み出していました。
「……雪姫に大体聞いてはいたが、思った以上に『歪』だな」
冴お姉様の手をベル姉様が掴んでいます。何が起こったかよく見えません。
ただ、何かがパキリと砕ける音がしました。聞きなれない硬質な音はガラスが割れるよりもっと鋭かったように思います。
「……何、何でっ! 貴女、邪魔しないで」
「黙って聞いていれば自分の言い分ばかりだな、お前。何が『私の方があの子の事をわかっている』だ? 確かに過ごした時間はお前の方が長いだろうさ。しかし、心の距離はどうだ? お前は口では賀川を気遣っているようだが、実はあいつを恐れ、自分から拒絶しているだけだ。その一方で雪姫には嫉妬か? まったくいい身分だな。そんな奴に、二人の何がわかる? お前の言い分は、欲しい物が手に入らないからといってわがままを言う餓鬼にも劣る」
「ベル姉様!」
私が立ち入ろうとしましたが、ベル姉様はすっと手を挙げて制し、
「雪姫も賀川も、自分の意志で互いの側にいたいと考えている。身分や立場など、そんな瑣末な事は捨て置いてな。それを何故、お前に指図されなければならない?」
ベル姉様の顔は見えません。ですが、冴お姉様の表情が変わります。
「……そうだな。目玉の一つくらいえぐり取った方が、あいつの痛みを理解できるかもな」
私が立ち入る暇も、お姉様が逃げる暇もなく、ベル姉様は信じられないスピードで彼女を押さえ込みます。ベル姉様の逆の手が後ろに引かれ、勢いよく伸び、お姉様の顔が引きつります。悲鳴を上げる事もできません。
いけない、止めなきゃと思いますが、驚きの為か、痛みの為か私は上手く動けません。
ダメ!
その時、ベル姉様の手が止まります。あと少しでも伸ばすと爪の先が眼球に達する寸前で……
「……やはりやめた」
ベル姉様は続けます。
「お前にはそのような価値などない。他人の痛みを理解できない奴に、自分の痛みが理解できるはずもないからな」
そう言い切ると、ベル姉様はすらりと立ち上がります。
「ーー失せろ」
ベル姉様は凄い目で冴お姉様を睨んだ後、冷たく言い放ち、私の手を引いてその場を立ち去ります。
「雪姫、大丈夫か? 行くぞ」
「えっ? あ、あのっ」
この後、放置した冴お姉様に『何』があったかなど、私には知る由もありませんでした。
手を引かれ、暫く歩いた所で、私は声を掛けます。
「待って、ベル姉様」
「……説教なら聞かないぞ。ベルは間違った事は言っていな……雪姫、どうした?」
「お姉様と話しているうちに何だか気分が悪くなってきて」
せっかく買ってきた荷物を落としてしまいます。あまりかかない汗が頬を伝います。
何でしょう、力がうまく入らないし、歩いてるのか座っているのか、何だかわからないくらい、素敵に混乱してます。地面から糸が括り付けてあって、それを引きずっているようです。暫く動けそうになくて、
「少し休んだら大丈夫だから」
「そうは言うが……雪姫、そこに座れ」
言われるままにベンチに座ると、ベル姉様は私に何か声をかけながら、チョーカーを外し、治りきらない傷を見ると、
「……くそっ、あの女の放つ悪意にあてられたか」
と、呟いて居ました。
朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃんとリズちゃん。
小藍様 『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』より、汐ちゃんと海さん。『夜輝石』を。
YL様 『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 』より 司先生、清水先生、果穂先生、子供ちゃん二人を。
何か不都合がありましたらお知らせください。
皆さま、コラボの件で色々感謝です。
また追ってメッセ等送ります。
宜しくお願いいたします。




