バザー中です(紅と白)
イイものあるかなー?
「ユキ、疲れたか?」
「ううん、大丈夫です。むしろ、とっても楽しかったです」
納涼会、ベル姉様は一緒に行けなかったので、今日のバザーは誘っていただき、一緒に行きました。リズちゃんは別行動だそうです。
いろんなものを見てちょこちょこ買い物をしましたよ。
そうそう、納涼会で一緒の組だった小林果穂先生にも会いました。来てねって言われていましたし。
「昨夜はビックリしたよねー蜘蛛いっぱいだったんだもの。ところで、その子は?」
「ベル姉様です。うちの家にお泊りしてるんです」
「雪姫の所で世話になっている、ベル・イグニスだ。よろしく頼む」
ベル姉様がそういうと、果穂先生の目がきらりと光りました。
「か! かわいい――ツインテにティアラ! 低めの身長に真っ赤で鮮烈な完璧すぎるこの姿こそ、ゴスロリの頂点、ここに極まってるわっ。しゃしゃしゃ、写真撮っていい!?」
「う、うむ。ベルとしては不本意だが、そこまで頼まれたら断るのも悪いしな。特別に許可する」
「ええええええっ! しかもツンデレ系! レベル高すぎるわーっ! 燃えるーっ、萌えるわーっ! よーし、お姉さん張り切っちゃうわよーっ!」
しばらく落ち着くまで私は果穂先生のお店を覗きます。優しそうな男性が店番をしています。果穂先生の旦那様のようです。同じく学校の先生だとか。子供さんが二人いる筈ですが、塗り絵やおもちゃはありますが、姿がありません。
このブースには子供服や大人の少し派手目な服があります。いろんな……でもナース服とか飛行機のお姉さんの服とか誰が買うんだろう?
「たまにはこんな服はどう? 振り向かせたい人がいるのは梅原から聞いてるわよ」
「ち、違います」
いつの間にか背後に居た果穂先生に囁かれたので、否定します。
「ほら、ベルちゃんに合わせてこれなんかどう? お安くしとくわ」
白や黒のベル姉様の服に似たそれを見せられます。こ、こんなの着たら少しは見てくれるかな? でも首が見えるのは今はダメです。
「雪姫、チョーカーがある。この幅の広いのなら大丈夫だろう」
「え?」
そう言って、ベル姉様が唸りながら吟味始めてしまいました。
ベル姉様と果穂先生が選んでくれたのは白を基調としたふりふりしたミニスカートに、黒のレースやリボンが沢山あしらわれたもの。いつもワンピースだけれども丈は長いし、こんなゴージャスな服は初めてです。恥ずかしいので断ろうとしましたが、
「これをもらおう。会計を頼む」
「ありがとうございます♪」
何故かベル姉様が支払いを……いやいや、買うならお金出しますよぅ……
「いや、いいよ。ベルからのプレゼントだ。それにな雪姫、賀川も始め、このベルの姿に釘付けになっていたからな。きっと、雪姫が同じような格好をしてもまんざらではないはずだぞ?」
「あ、あう……」
何か褒められた、です。嬉しい様な、照れる様な。
ベル姉様は何事か果穂先生に頼みます。『任せといて』と言う感じで針と糸を出してちょいちょいと仕事をやっつけた先生。ベル姉様は縫いあがったチョーカーをツッと渡してくれます。
「ほら雪姫、お前にはこの紅い勾玉のチョーカーを渡そう」
紅い勾玉……さっき別のお店で買ったそれが縫い付けてある、白地のチョーカーがそこにはありました。
私はてっきり白地のチョーカーには白い勾玉が縫いつけられると思っていましたが。
「あの、ベル姉様、どうして紅なんですか?」
「ああ、白の中の紅ってとても映えるだろ? それに、逆もまた然り。紅の中に白があるだけでも目立つものさ」
確かに赤い地に白い勾玉を付けたベル姉様用のそれ、白い勾玉が引き立って、とても素敵です。
「それに……」
「それに?」
私はベル姉様の口にする言葉に傾聴しながら、首を傾げます。
「雪姫の『白』にベルの『紅』。ベルの『紅』に雪姫の『白』で、互いの色が互いの側にいる。そうは思えないか?」
その一言に嬉しくなって、自然と笑みが零れます。
「ベル姉様、ありがとうございます。これ、大切にさせていただきますね!」
「……ああ」
会話の合間を縫って、果穂先生がソツなく声を掛けてきます。
「いやー、ベルちゃんいいセンスしてるわねー。で、ユキちゃん、もちろんこれ着て帰るわよね。すぐ着替えるわよね? というわけで拓人さん、店番よろしくねー」
「あのあのあのっ」
「ほら、雪姫。着てみようじゃないか」
「あ、ちょっとベル姉様……ああああ~」
何故か二人に背中を押される様にして、更衣室へ押し込まれてしまいました。
そして気恥ずかしい様な恰好のまま、二人で手作りのぬいぐるみや小物を買って。
司先生と清水先生にも会いましたよ。私がデザインした妊婦さんのバッチを付けてくれてました。
それは妊婦さんになったらつけるバッチ。何種類かデザインした中の一つ。
うろなでは傷病者や老人、妊婦さんに席を譲ったり、気にかけたりする様子が見えるので、良いですが。
他の町では、席に座っているどう見ても健康的な人が、弱者を気にせず、寝たフリをするのです。
私も席がなく、席を譲ってもらえなかったある妊婦さんに『大丈夫ですか』と声をかけると、
『大丈夫、この子を気にかけてくれてありがとう』
そう言い、更にマタニティバッチの事を、
『これを付けているのはただ『席を譲れ』って言う意味だって勘違いしている人が居るけれど。違うの、私は妊婦でも悪阻も少なくて、元気だし席なんか良いの。でも本当に具合の悪い時、間違った対処をされないでしょう? でも無論、席を譲ってもらえたら嬉しくてずっと覚えてる程よ』
そう教えてくれたのです。
その言葉を受けて、私のデザインしたそれ。
これも、先生や他の妊婦さんの役に立つ事があるかもしれない。
そう思うと嬉しくて。
自分が生きている意味が少し見出せて、そして生きていて良いのだと思えて、心が温かくなるのです。
ベル姉様が言わないのに私の作品だと気付いた事も驚いたけれど、何より姉様が褒めてくれてうれしかったです。
朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃんとリズちゃん。
YL様 『"うろな町の教育を考える会" 業務日誌 』より、清水先生、司先生、果穂先生家族
問題ありましたらお知らせを。
次はお昼ご飯の辺りから…




