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うろな町の森に住んでみた、ちょっと緩い少女のお話  作者: 桜月りま
8月22日

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102/531

初対面です(紅と白)


ばっしゃーん……

何だろう?????












 だるーぅい、ねーむぅい……

 でもベル姉様がさっきから騒いでます、まるで巨大魚でも釣ったのか、ばっちゃんばっちゃんと水音がして。葉子さんが絞めてるのかな?

 今日の夕飯はお刺身かもしれません。

 でも水音が止んで、暫くしても誰も呼びに来てくれません。

 お腹、空かないから良いけどね。でもおっきいお魚がいるなら見たいです。あ、生きてるうちに見に行けばよかったなー……

 私はよろっと立ち上がって離れを出て、母屋の方に向かいます。

 そこにはベル姉様と……う…わぁ……



「ーーベル姉様? それに、その子は……」

「雪姫、起きたのか。具合はどうだ?」

 そうベルお姉様が声をかけてくれましたが、そんな事より一大事です!

 赤いベル姉様の横には、その影かと思うほど真っ黒いものがいました。

 そこにはとってもかわいい、それも大きなわんちゃんがいるのです。更に、更にですよ? おっきな翼が付いていて、とてもとーってもカッコいいのです。

 お目目なんて黒に映える、夕日のオレンジです。金にも見えるその橙色の美しさに見とれてしまいます。



 カワカッコイイ!!!!!!



「ーーああ、今まで水音がしていたのはお魚ではなくて、そのわんちゃんを洗っていたのですか? 言ってくれればお手伝いしたのにぃ。翼付きのわんちゃんは初めて見ました!」

「え、何? わんちゃん? ゆ? 雪姫?」

 私はベル姉様の横にいるその子に歩み寄ると、にっこりしてペタンと座って目線を合わせると、

「お手、してくれますかね? お手っ!」

「ワンッ!」

「よしよし、いい子いい子」

 か、可愛すぎますよ!私が撫でてあげると、

「くぅん、くぅん♪」

 嬉しそうにすり寄って来てくれるんです!

 ベル姉様は何か言っているようですが、こ、これは、言ってみるしかありません。私はワンちゃんのオレンジ色の瞳をしっかり見て、

「お座り!」

「ワンッ!」

 凄い! 礼儀正しい子です。優秀です、今まで見たワンちゃんの中で一番反応早いです。

「……雪姫、何をやっているんだ?」

「え? ここにいる大きなわんちゃんの頭を撫でて……あれ?」

 お手にお座りまでしてくれたので、頭を撫でてあげて、あれ? 犬が『……って、あれ? 私、なんで言う事聞いてしまうんっスか、先輩……』などと喋っている事に気づきます。

 可笑しいなっと思ってよく見ると、そこには真っ黒な濡れ髪をおろした、かわいらしい女性が座っていました。

 目の色は明るいオレンジ、顔立ちは日本人だけじゃなくて外国の血が混じっているようです。その方は私の目の前で臣下の礼と言うのでしょうか? 傅くような綺麗な格好で片膝を付き、頭を私に撫でられていました。



 私はさぁーーーーーーーーーーっと、顔が赤くなっていくのを感じました。

「ええええええっ、い、犬が人間になりましたっ! てか私、と、とんでもない事を……ごごごめんなさいっ!」

 オロオロします。色で視界が埋まる事はあるのですが、イメージでその本人が完全に見えなくなるのは初めてで驚きます。ベル姉様はもう耐えきれないと言った感じで、声をあげて笑いだします。

「ごめんなさい、私ちょっと、そのその……」

「雪姫、大丈夫だ。こいつはそのくらいで怒りはしない。そうだろ?」

「こいつ? そういえば、まだお互いの名前を知りませんでしたね。あの、私はユキ、前田……雪姫です。お名前を聞いて良いですか?」

 そう聞いた途端、びくっと背筋を伸ばして彼女は、

「わ、わたしはひな……ひ、痛っ!」

 な、名前を言おうとして舌噛んじゃったみたいです。可愛い人です。

「……おい、お前の名はそんなに噛むような名前なのか?」

 ベル姉様に突っ込まれながら、改めて、

緋辺ひなべ(アンジェ)・エリザベスっス、よろしくっス、雪姫ちゃん」

 テーブルに打たんばかりの勢いで……いや頭を打ってますから!

 そこにちょうど葉子さんが部屋に入ってくると、

「えー……えっと、エリザベスさんっていうの? 長くて呼びにくいわねぇ、日本人には……でも緋辺さんって感じじゃぁ……ベルちゃんは何て呼んでいるのかしら」

「そ、そうだな、普通にエリザベスって……」



「…………………………………………リズ、またはべス、が一般的だ」



 急に低い声が聞こえて一同振り返ると、そこには賀川さんが居ました。

 帰宅、早い、です。この頃、朝に出て、まだ日がある時間に戻ってくる事は少なかったのに。

「お帰りなさい、気付かなかったわ、賀川君」

「リズさん、どうも、賀川です。……葉子さん、今からちょっと出てくるから。夕飯には戻ります」

 荷物を置きに帰って来たみたいで、無愛想にそう言うと出て行きます。

「あの男、臭うっス」

「さっきまでのお前の方が臭っていたけどな、リズ」

「え、ベル先輩、あの男が付けた名前で決定っスか!? っていうか、女の子に対してその言い種はあんまりじゃないっスか!?」

「リズちゃん、可愛いじゃないの。おばさんはそう呼ぶわね? あ、ベルさんと同じで結構お年が上なのかしら? サン付けの方がいいかしら?」

「私はベル姉様に合わせて、リズ姉様とお呼びして……」

 そう言いかけると、ぶるぶるっとして、

「わわわわん! ちょっと待つっスよ。なんか話が進んでるっスけど、そんな姉様とかサンとか、おこがましいっス。その、私の事は『ちゃん』付けでいいっすよ」

「じゃあ、リズちゃんってお呼びしますね?」

 そう言うと、落ち着いたようでコクコク頷きます。リズちゃんの方がベル姉様より私に歳が近い感じがするので、リズちゃんって呼ぶのは新しい友達が増えたみたいで嬉しいです。

 葉子さんは笑ってからパンパンっと、手を打ち、

「さあさ、そろそろ晩御飯の用意をするわ。昨日は急な事だったから材料があれだったけど、今日はイイ鯛が二匹も手に入ったの。一匹はお刺身、もう一匹で鯛めしにしましょう?」

「メデタイ、か。いいな、実に日本らしい」

 ベル姉様がうれしそうです。

「大きい鯛だけど、何しろうちは人数が多いから、一品は鯛めしとかしないと全員の口に入らないのよねぇ。火の方任せていいかしら、ベルちゃん」

「任せておけ。腕が鳴るというものだ」

「だ、台所までやるんっスか?? ベル先輩が?」

「ん? ああ。さて、じゃあやろうか」

 さっと立ち上がると、何の違和感も感じさせずに台所に入るベル姉様。

「わ、私も手伝うっスよー!」

「うーーーー私も……」

 何とか台所に付いて行き、人参の皮むきなどを手伝いましたが、うまく力が入らなくて。あんまり戦力にならなかったです。

 でもリズちゃんはそんな私に気を使って、いっぱいいろんな所を旅行してきた話をしてくれて、とても楽しかったです。

 この町に来てお財布を無くしたけれど、ベル姉様に会えてよかったと本当に嬉しそうで。

 それに私の事も少し話して、お母さんが何処に行ったか分からないって言ったら、我が事のように泣いてくれて。そんな泣かせるつもりはなかったのですけれど、とっても優しい方なのだなと思いました。






朝陽 真夜 様『悪魔で、天使ですから。inうろな町』より、ベルちゃん、リズちゃん。


リズちゃん、うちのユキが失礼いたしました。

緩すぎだよ……ユキ……



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