十五話
なんというか、ここまでちゃんとしたキャラクターになるとは思わなかった。いい感じに悪役っぽいポジションに収まった気がする。
いや待て、別に悪役がやりたいわけではなかったような気もするがまあそれはおいおい考えよう。
「どうして……こんなことを……!」
偉そうな兵士が苦しそうにしながらもそう言った。
「お前が知る必要はない」
さらに風を強くした。兵士たちは必死に地面にしがみついているが、強風で顔が変形してしまっている。
「ばべばべばごんばぼぼにぶっじばいぞ!」
案の定なにを言ってるかわからない。
ちょっとだけ風を弱めてやるか。
「今なんて?」
「我々はこんなことには屈しないぞ!」
「そっすか」
これでまた風の勢いを強くすると会話ができないし、電気とか流しても同じことになるだろうし、でもコイツらが諦めるようにも見えないんだよな。さてどうやって退かせたらいいんだろう。
「お前たちは王からの命でここにいるのか?」
「当たり前だろう」
「お前たちが追っている男がなにをしたのかも聞いているか?」
「王に不敬を働いたという話だ。そして呪術をかけられた」
コイツの見た目からすると五十近いと思われる。となると父さんののことを知っている可能性は十分ありえる。それになんとなくだが落とし所がありそうだ。やり方次第ではあるが、この一件を収束させられるかもしれない。
風を弱め、手招きした。
「私に来いと?」
「ああ、一人で来い」
「断る!」
「もうそういうのいいから話進まないやつだから。元軍人の男が本当はなにをしたのか、お前は知っているのではないか?」
「どうしてそのことを……」
「そんなことはどうでもいい。とにかくこっちに来い」
男は槍を構えながら、ジリジリとこっちに近づいてきた。
「大丈夫だから、話するだけだから」
つったって信じられるわけねーわな。
でもちゃんと来るあたりが律儀なんだろうな。
そうして、男と俺の距離が五メートルほどまでに縮まった。。
「お前、エルゲバルのことを知っているのか」
「呪いの対象だ、知っていて当然だろう。エルゲバルがアルメイサを攫ったという話も理解している」
「死神っていうのはなんでもお見通しなのか?」
「対象者のことならば大体わかっているつもりだ。それでだ、つまるところエルゲバルの死体があればお前は納得する、ということでいいのか?」
「死体があれば、まあ、王も納得するだろう」
「そうかそうか」
コイツさえ取り込めばなんとかなる。おそらくは一番位が高いんだろうし、コイツさえ納得させてしまえば兵たちは退く。
「もしも私がエルゲバルの死体を持ってきたのならばお前たちはここから退くのか?」
「死体があれば退いてもいい。だがなにかしらエルゲバルであるという証拠がなければならん」
「別にミンチにして持ってこようってわけじゃない。心臓を一突きにして差し出す。それならば問題なかろう?」
「問題はないがお前はそれでいいのか? エルゲバルを守る死神なんだろう?」
「守っているわけではない。ようは私がこの手で命を奪えればいい。今からエルゲバルの命を奪う。体の方はお前たちに渡す。それでいいのならば、少しばかり時間をもらいたい」
男は顎に指を当て、小さくため息をついた。
「このままでは埒が明かないな。それで手を打とう」
「私も無用な争いはしたくないからな。それでは進行を止め、ここで待っていろ」
背を向けて町へと向かおうとした。が、これで約束を無碍にされても困る。ただの口約束だからな、裏切られても文句は言えない。
「もしも私の言いつけを破り進行した場合、ここにいるすべての兵の魂を奪うことになる」
「どうしてそこまであの男にこだわるのだ?」
「契約外の五千人の魂よりも、契約中の一人の魂の方が価値があるということだ」
んなわけあるか。と思いながらも町の方に向かって跳躍した。




