五話
野を超え山を超え、たまに森の中を抜けて王都までやってきた。当初は空を飛んでいく予定だったが、飛行は魔力の消費が激しく月が出ているのでやはり目立つという理由からやめた。
しかし王都には一時間もかからずに到着した。夜中なので眠い目をこすりながら王都の中へと侵入。ここでアクシデントが発生した。
「アル」
「なんだよ急に名前なんか呼んで」
「眠いわ」
「そういやお前はそういうやつだったな」
お互いに忘れていたがコイツは早寝早起きの良い子ちゃんだった。
「眠いって言われてもな……」
開いている宿の一つや二つはありそうなものだが、その宿というのが割と問題だったりするのだ。
「どこでもいいから今日はもう寝ましょう。術者が私たちに気づいてるっていうことはないだろうし、別に明日でも問題ないわ」
「問題は術者の方じゃないんだよなあ」
「じゃあなにが問題なのよ」
「入れる宿があるとすればあそこくらいなもんだってこと」
俺が指差した先には宿屋の看板。ピンク色の光に縁取られた看板だ。ちなみにこのへんではこういうピンクの看板の宿屋が多く存在する。
「じゃああそこでいいわよ。行きましょう」
スタスタとシアが歩いていってしまう。当然宿屋の中に入るのだって躊躇しない。
俺はため息を吐きながらもシアの後を追って宿屋に入った。店内も怪しげな光で満たされている。
「部屋、開いてるかしら」
カウンターに座るばあさんにシアが声を掛けた。ばあさんはニヤァっと笑いながら鍵を出す。
「一泊五千だよ」
「アル、お金」
「俺が払うんかい」
いかん、ここで渋っていたらシアがどこで寝始めるかわかったものではない。
仕方なく五千ウェン払って鍵を受け取った。
「そこの突き当りだからの、楽しんでおいで」
ばあさんはまた歯を見せてニヤァっと笑った。ところどころ歯がないせいか薄気味悪くて困る。
部屋に入り鍵をかけた。シアは思いっきりベッドに飛び込み、ベッドの弾力を確かめるように全身を使ってで飛び跳ねていた。
「いいベッドね」
「まあそりゃね。どんな衝撃でも吸収できるようにできてるからね」
「どんな衝撃? ここで戦ったりするの?」
「戦い?! んー、まあ、なんだ、その、戦いと言えば戦いだな。男女の」
「言っている意味がよくわからないわ」
「マジでここがどんな場所なのかわからないのか……」
入る時はちょっとヒヤヒヤしたがシアがこの調子ならへんな緊張はしなくても良さそうだ。
「でもお前二部屋って言わなかったな」
「どうせ寝るだけなんだから一部屋でいいでしょ」
「ベッドも一つだけど」
「いつもの行いを思い返しなさい」
「確かに?」
シアをベッドに引き込んで抱き枕代わりにしたことは数え切れない。さすがにコイツももう慣れたって感じか。
というかシアが魔王である以上俺はコイツに手出しできないじゃないか。こんな場所だというのに本当にただ寝るだけになるとは。
「それじゃあおやすみ。電気お願いね」
「はーい」
電気を消してベッドに潜り込んだ。せめて気分だけでも味わっておこう。
「触らないでよ」
シアを後ろから抱きしめて目蓋を閉じた。しかし眠るとはまだ言っていない。
「触らないでってば」
最初の頃よりはましだがもうちょっと肉質が欲しいな。胸とか脚とか。
「もういいわ」
反応がなくなったところで俺も寝ることにしよう。シアが抵抗してくれないとなにも面白くないからな。
以後、夜に突発的に動くのはやめようと誓った、そんな夜だ。




