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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
七章:お見舞いは突然に
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四話

 そんなシアを病室の端っこに連れていく。


「どうだ、なんかわかったか?」

「一応ね。ただこれは、ここで治すのは難しいわね」

「なにが難しい? 術式が難解だとか、魔法に使われている魔力が大きいとか」

「あの魔法自体は割とありふれた呪術だと思う。疾病を増幅させたり痛覚を鋭敏にしたりその程度の魔法。だけどその呪術が解かれないようにって何重にも鍵が掛けられてるのよ」

「わかってても解けないってか」

「そうね。呪術よりも鍵の方がずっと強烈だから、私一人で解くには膨大な時間が必要になるわ」

「例えばどれくらい?」

「数ヶ月つきっきりとか」

「じゃあ頼むわ」

「絶対イヤ」

「俺の父さんだぞ……?」

「アンタの父親でもずっとここにいるのはイヤよ。それに数ヶ月っていうのは希望的観測に過ぎない。実際はもっとかかるだろうし、鍵の構造を全部把握したわけじゃないから途中でもっと強固な魔法が仕掛けられてるかもしれないのよ」

「それにね」とシアが続ける。

「この魔法は誰かがかけたわけじゃないと思うわ」

「誰かじゃなかったらなにか? 自然に発症したって?」

「複数の人間が絡んでる。アナタのお父さん、相当恨まれてるんじゃない? 私が長い時間をかけなきゃ解けないような魔法をかけるなんて上級魔法師じゃないとできないわ。それも何人もの上級魔法師ね」

「恨みを買うような人には見えないけどな。身内の贔屓目とか抜きにしてもさ」

「確かにそれは同感だけど、例えばアナタが生まれるよりも前のこととかが関係してるかもしれないでしょ?」

「そういや生まれる前のこととかはよく知らないな。父さんと母さんの馴れ初めとかはしょっちゅう聞かされてたけど。父さんは元々農家で、母さんは行商の娘でお互いに惹かれ合って結婚したとかなんとか」

「ただの農夫があんな魔法掛けられるもんですかって」

「魔法の性質を分解して、魔法をかけた主を特定するとかってできないのか?」

「できないこともないけど、それも一日くらいかかるわ」

「わかった。じゃあ俺たちは帰るからあとはよろしくな」

「おい!」


 腹を殴られた。


「冗談だ。まあでも一日くらいなら付き合ってくれよ。俺も残るから」


 シアは酷く嫌そうな顔をしていたが、やがてため息をついて「仕方ないわね」と承諾してくれた。やはりちょろい女。


 とは少しばかり思うが、ちゃんと俺のお願いを利いてくれるのはありがたい。自分にしかできないことだとわかっているから、妙な責任感が首を縦に振らせたんだろう。ただ正直、罪悪感がないわけではない。了承してもらったのではなく了承させたようなものだからだ。


 でも最終的に決めるのはシアなので俺は関係ない。


 父さんたちのところに戻り、今日一日だけここにいることを伝えた。父さんは涙ぐんで喜んでいたが、さすがにそこまで喜ばれると困る。というかちょっと怖い。


「そうか、これで俺も退院できるのか……」

「いえ、退院できると決まったわけではありません。魔法をかけた人間を特定できるかもしれない程度なので。特定できればその人のところに行って解除をお願いする。そこからスタートです」

「じゃあまだしばらくはこのままということか」

「それは辛抱してもらうかしないですね」


 父さんがしょぼくれてしまった。身体はデカいのにどうして心はこんなに弱いのか。


「早くスピカを抱っこできるようになりたいなあ」

「私はもうそんな年じゃないから!」


 スピカは若干怒っているようだが俺は知っている。この歳になって父さんに抱き上げられていたときのことを嬉しそうに語るスピカのことを。それにスピカの身体は確かに大きくなったが、父さんがデカいので抱き上げることくらい造作もないだろう。


 それから持ってきたお菓子や果物を食べつつ雑談し、スピカと母さんを家に返してからさらに馬でまたピッポウの町へ。つまり俺は一日で二度ピッポウに来たことになる。


 夕食後、父さんをうつ伏せに寝かせてスリープをかけた。これで明日の朝までぐっすり眠っててくれるだろう。こうでもしないと俺とシアの会話を聞かれてしまう。父さんは俺が魔法を使えることを知らないので、面倒事を避けるためにはこうするしかなかったのだ。


 シアが父さんの腰を触診しながら魔法の配分を変えていく。一応鍵を外せるかどうかも確認しているようだ。


 かれこれ二時間くらいそうしていただろうか。シアが大きく息を吐きながら触診をやめた


「もう終わったのか。結構速かったな」

「私ももっと時間がかかると思ってた。でも以外と術者が痕跡を残しておいてくれたから助かったわ」

「ってことは術者がわかったのか」

「ええ。でもなんというか……」


 シアは口ごもってしまった。


「なんかおかしかったか?」

「それがね、術者の反応はどうやら王都みたいなのよ」

「王都の術者がなんで父さんに呪術なんか?」

「それがわかったら苦労しないでしょ。とりあえず、その術者に会いに行きましょう」

「は? これから?」

「魔法で飛んでいけば問題ないでしょ? 私だってさっさと解決したいのよ」

「それは同感だが」


 王都の術者か。なんだか嫌な予感がするが、行ってみないことには始まらなさそうだ。


 父さんには置き手紙を残し、俺とシアは王都に向かうことにした。馬だと数時間かかる距離だが空を飛べばそこまで時間もかからない。夜ということもあって誰かに発見されることもないだろう。

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