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101回目の異世界転生!  作者: 絢野悠
五章:ドッラゴンを退治しろ!
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三話

 屋台で買い食いをしたり、お茶を買ったり、大道芸を見たりしながら街の中を歩いた。そしてブティックが立ち並ぶ「洋服街」へとやってきた。


 王都は基本的にカテゴリーごとに区画が設けられている。レストラン、アクセサリー、洋服、靴、食材、陶芸、芸術備品など様々である。区画の大きさはそれぞれで、田舎者の俺がすべてを把握しているはずもない。一年も経たずに区画整理されたり、あたらしいカテゴリーの区画が増えたりするのだから当然だ。


「スピカはどこがいい?」

「んーと、私は――」


 スピカは洋服街を見回した後で一軒の店を指差した。


「あそこがいい」


 何年も外装が変わらない店。たしか前回もこの店で服を買った記憶がある。王都では値段が安く、老若男女誰が入っても問題ない店だ。お財布には優しいし男女の区別もないので困った時はありがたい、そんな店。


「そこでいいのか?」

「いつもあそこだから」


 ちらっと、スピカが別の店を見た。ような気がした。


 この子は昔から強めに上から物を言ったり、意見を主張するときはちゃんと声を上げる。しかしながら空気を読みすぎるというか、変なところで遠慮をするきらいがあるのだ。


 判断基準はわかっている。彼女が「正しいと思うか思わないか」だ。


 いじめっ子からいじめられっ子を守る。それは正しいことだ。


 教師が一人の生徒だけを叱責したが弁護した。それは正しいことだ。


 食事中に口を開いて咀嚼している人に注意をした。それは正しいことだ。


 そう、いわゆる「一般論」のようなものが幼い頃から強く根付いていたのだ。だから今も「俺に迷惑をかけないように」と安い店を選んだ。彼女が「それは正しいことだ」と思ったからに違いなかった。


 俺は何回も人生を繰り返しているせいで、価値観やら倫理観やらが最初から存在している。しかしスピカはそうではない。にも関わらずキチンとした「正しさ」を持ち、突き通そうとしている。


 こんな窮屈な生き方を、いったいどこで学んできたのだろう。もう少し子供らしく、伸び伸びと育ってもいいはずなのに。


 俺はスピカの頭に右手を乗せてそっと、二回ほど撫でた。


「いいや、俺はあそこがいい」


 左手で別の店を指差す。


「でも、あそこは……」


 おそらくだが、洋服街の中でも上位に位置するブティックだ。キラキラと派手はわけではないし、無駄にひらひらしているわけでも、容赦なく装飾が施されているわけではない。ただ、見ただけでおしゃれだとわかるような服が多いのだ。派手な色合いを僅かに使いながら、基本的には白黒茶や原色よりも深い色が多い。なによりも生地が丈夫で何度洗濯してもよれたりしない。高等部を卒業するときに一着だけ買ってもらったからそれはよくわかっている。


「大丈夫だ。お兄ちゃんに任せろ」

「任せろって言われても……」


 嬉しさ半分、罪悪感がもう半分。そういった顔だ。


「多少高くても問題ない。さあ行くぞ」


 スピカの手を取り歩き出す。最初は抵抗していたスピカだが、俺の腕力にはかなわないと思ったのか途中からはされるがままだった。


 店の中に入るといい匂いがした。花の匂いだろうか、甘さの中にも柑橘系の匂いが混ざっているようだ。


「さあ、好きなのを選べ。上下下着靴下に靴、一式揃えよう」

「でもそんなことしたら――」

「お兄ちゃんに任せろと言ったはずだ」


 俺はスピカの前に立った。


「いいかスピカ。俺はお前より早く産まれて、お前が産まれる姿も、育つ姿も見てきたんだ。たしかに俺はお前の親じゃないかもしれないが、お前が産まれたときからお前を知ってるんだよ。俺にとっては可愛い可愛い妹なんだ。お前が喜ぶ顔が見たいし、お前にはおしゃれして欲しいし、そんな可愛い妹をたくさんの人に見て欲しいんだよ。いずれあの家から巣立っていくかもしれないけど、お前が俺の妹であることは一生変わらないんだ。明日俺がいなくなる可能性も、お前がいなくなる可能性もゼロじゃない。だからこういう時くらいは俺がしたいようにさせてくれよ」


 俺がそう言うと、スピカは「うー」と小さく唸ったあとで頷いた。


「お兄ちゃんが、そう言うなら」


 顔を赤くして目を伏せてしまった。が、それがスピカのいいところでもある。強気なところはあるが素直で物分りがいい。


 それからスピカと二人で店の中を歩き、いくつかの服をチョイスし、試着し、買うまでに至った。二時間くらいかかったがスピカのファッションショーを見られただけでも二時間の価値があった。いや、それ以上の価値だ。


 そのへんのサラリーマンの月給が軽く飛びそうな額だったが、今までの貯金から考えるとハエが止まったくらいの痛さでしかない。つまり俺はそれだけ溜め込んでいるのだ。


 結局、家に帰って来たのは日が暮れる直前だった。夕日を眺めながら走らせる馬はそれはそれは気持ちよかった。

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