十話
と思っていたのは俺だけだったのか。
現在、俺たちはピルの背中に乗って空を飛んでいた。地上からどれくらいの高さかはわからないが相当高いと思われる。雲が近くひんやりとしていて気持ちがいい。若干風が強いのが難点だが俺は問題ない。
「まさか魔力を与えて翼が生えるとは思わなかった」
ベヒーモスの新たな可能性を垣間見てしまった。もしかすると魔力の種類だとか魔力を与える部位だとかで性能が変わったりするのだろうか。背中に魔力を込めたから翼が生えたと考えれば辻褄も合う。
ちなみに今回のパーティはこんな感じだ。
アルファルド
職業:農夫
武器:剣
レベル:50(レベル詐称能力使用、本来のレベル100)
シア
職業:ニート
武器:銃
レベル:50(レベル詐称能力使用、本来のレベル200)
ピルフェット
職業:モンスター
武器:素手
レベル:50(レベル詐称能力使用、魔力供給により本来のレベル120)
ネティス
職業:無職
武器:杖
レベル:34(レベル限界到達済み)
今回ローラはお休みしてもらった。俺のことを理解できていない女と長旅はできない。
「俺前も思ってたんだけどさ、武器のところ銃ってなってるけどお前銃要素まったくないよね?」
「持ってるわよ」
サッと取り出したるは透明な緑色の小さな銃だった。
「予想通りの水鉄砲だな」
「でもこれ、魔力込めれば水も弾丸以上の威力になるわよ」
「その水鉄砲絶対こっち向けんなよ」
「そう言われると向けたくなるじゃない」
「おめーそれやったらどうなるかわかってんだろうな」
俺がそう言った瞬間「ふえっ」と泣き出してしまいそうな顔をするシア。
「俺が女の涙くらいでキョドるとでも思ってんのか?」
泣きそう、というかボロボロと涙を流し始めてしまった。
「いやホントゴメン。俺が悪かったって。お願いだから泣き止んで」
一瞬で決意が崩れ去った。もうちょっとちゃんと教育しないと、泣けばすべて許されるという変な思い込みをして育ってしまう。
「もう怒らない?」
「もう怒らないから。ほらハンカチ貸してやるから」
俺からハンカチを受け取り、涙を拭いたあとで鼻をかんだ。お約束ではあるが実際にやられるとやっぱり腹が立つ。
「そのハンカチあげるね」
「うん、ありがと」
してやられた感がすごい。無駄にパワーバランスがとれているのが癪だ。
ピルフェットは現在俺たちを乗せて飛行中。シアは泣き止んだあとで腕を組んだまま風を感じている。たしか最後の一人にネティスを連れてきたはずなんだがどこに行ったのか。
「ねえアル、あれ大丈夫なの?」
そう言いながらシアが指を差した。
ピルの尻尾にすがりつく一人の女がいた。言うまでもなくネティスだった。元々美人ではあるが、その面影がないほど顔が歪んでいた。風のせいもあるが恐れおののき、涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃになっていた。
「そういえばアイツ、俺たちとは比べ物にならないほど雑魚だったな」
身体強化するだとか風の抵抗をなくすだとか、たぶんそういうことができないんだと思う。できたとしてもふっ飛ばされる。それくらいの雑魚っぷりだ。なにせそのへんの農民よりもレベル上限が低い。
ピルに尻尾を動かしてもらい、なんとかネティスを救出した。どうやらピルはネティスが遊んでると思ったらしい。まあ顔は見えないしこの風で声は聞こえない。仕方ないとピルの頭を撫でてやった。
「遅いんですよ助けるのが!」
ぐちゃぐちゃになった顔を元に戻し、開口一番がそれだった。
「これくらいでふっ飛ばされるとは思ってなかったから」
「そもそもお二人はなんで平気そうなんですか!」
「ちゃんと魔法が使えるから」
あと何回もスライムにさせられたせいでぬめっと張り付くことができる。スライム最強では。
「私がちゃんと魔法使えないみたいじゃないですか!」
「でもふっ飛ばされたじゃん」
「言い返せないじゃないですか!」
「たぶんそれは言わない方がいいやつだな。まあいい、目的地まであとちょっとだから俺の近くにいろ。風よけくらいはやってやる」
「そうやって良い人ヅラして籠絡しようって魂胆ですか! どれだけの女を懐柔してきたんですかアナタは!」
「もう一回吹っ飛びたいらしいな」
「そんなつもりはありませんので」
スンっと真顔に戻りやがった。
「素直でよろしい」
そうこうしているうちに海が見えてきた。一番水着が似合いそうなローラがいないのは残念だが、さっさとクエストを済ませて海水浴でもしよう。




