七話
家で寝転がってマンガを読んでいた。この世界でマンガは非常に高価だが、俺にはビリーという友人がいる。趣味趣向はビリーに任せる形になるが、暇つぶしにはもってこいだ。
「なに読んどるんじゃ?」
「だから勝手に……もういいや。次のクエストか?」
「作家の名前は……M字開脚か。なかなかいい曲線を描くのう。この腰のラインがとてつもなく色っぽい」
「勝手に覗き込んでくるなっつーの。で、なんでまた来たんだよ。しばらく大人しくしてろよ面倒くさいな」
「なにが面倒くさいんじゃ? 楽しくお喋りしようぞ」
「おめーの相手が面倒くさいの! お喋りもいらないの!」
「なんていうのかのう、女の子たちが集まってお茶を飲むやつ。たしか……ドシコい?」
「女子会の間違いな。あと俺たちは女子じゃねーからやるとしても男子会な。つーかドシコいって二度と言うなよ」
「もう、ワガママさんなんだからっ」
「はっ倒すぞ」
ギガントマウンテンとの戦闘から数日、頑張っても特殊クエストを完了できないショックから立ち直れていない。しばらくゆっくり休んでいたいのだ。そしてそのまま年を取りたい。
起き上がってベッドに腰掛けた。
「新しいクエストならしばらくいいぞ。疲れた。主に心が」
「シアちゃんでも抱っこしとけばなんとかなるじゃろ」
「いい抱きまくらだとは思うが、俺の精神力を回復させるほどじゃないな。胸が足りん」
「無理矢理花嫁候補にしておいてなんちゅークズ発言じゃ……」
「顔は可愛いし身体も発展途上だからな。まだ伸びしろはある」
「女は中身じゃぞ?」
「おめーが女のなにを知ってるのかと……」
「はい、それじゃあ特製紙芝居のはじまりはじまりー」
サッと背中から画用紙の束を取り出した。十枚以上あるってことは、いつもより長く続きそうだ。
「雑。やり方考えて」
「あるところにおじいさんとおばあさんがいました」
「ここは変わらないんだな。今日はなにが来るんだ」
ちょっとだけワクワクしてる自分が許せない。
「おじいさんは山へ行きました」
「なにしに行ったんだよ。目的を言えよ」
「おばあさんは川へ……行きました」
「もしかしてネタ切れとかじゃないよな?」
「おばあさんが川の水面を見つめて「はあ、罪な女……」とつぶやいていたその時!」
「目的がない上に意味深」
「川の上流からクエストが流れてきました。はい、幻のキノコを十本採取しよう」
「うーん、この」
「目的はいたって簡単じゃ。この前はアララアアの町に行ったじゃろ? 今度はその反対側にあるアッオーウの町に行くといい。今アッオーウの町ではキノコの大収穫祭をやっておる。町の近くにある山々ではたくさんのキノコが取れる。その中でも幻の「マトゥータケ」は高価で取り引きされる。味も絶品じゃから、売っても食べてもいい」
「完全に松茸じゃん。そういう寄せ方する?」
「見た目はお前が知ってる松茸と似てるから、見ればすぐにわかると思うぞ。で、やるのか?」
「断っても無駄なんだろ。わかったよ、やるよ」
「制限時間はキノコ狩りの一日。目覚めた瞬間からスタートじゃからな気張って行くといい」
じいさんは「じゃあの」と行って煙になって消えていった。
「バリエーション増やしてきたな」
マンガの続きでも読むかと、マンガを置いた場所に手を伸ばした。
「あんのクソじじい……」
俺が読んでいたマンガを持っていったらしい。床を見れば、借りてきたマンガの半分がなくなっていた。
「頭ひっぱたいておけばよかった……」
次は必ず、あのハゲ頭をひっぱたいてやろう。
とりあえず、今は明日のために準備をしなければいけない。キノコ狩りをするメンバーを探すのだ。幻のキノコというくらいだし、人数は多いにこしたことはない。
こうして、俺は明日のための人員確保に乗り出すのだった。




