85 コミュ力という力
「おお!シリウスくんだ!」
早速、ティファニーと一緒に領地へと転移すると、俺を見つけて嬉しそうに抱きついてくるセリア。
「やあ、セリア。ここでの生活とその体には慣れた?」
「うん!お陰様で!」
返事をしながらも、俺に頬ずりしてくるセリア。
やはり元となった外側のホムンクルスがほとんど人間と大差ないお陰か、魂がきちんと定着してるようでホッとする。
古代の文明の技術力というのは凄まじいもので、理論上は子供まで作れるというのだから、それらを設計したのは本物の神様なのではないだろうか?なんて思ってしまう。
まあ、それが俺の敬愛する女神様かは不明だが。
どちらかと言うと、この世界の創造主の男装女神様の方が正解には近い気もする。
「あれ?シリウスくん、その子は……」
「ああ、姪のティファニーだよ。ティー、この人は……」
「えるふさんだぁ!」
着いてからポカンとセリアを見ていたティファニーだったが、俺が紹介しようとするタイミングで正気に戻ったようで、興奮したような声をあげる。
そういえば、前にエルフであるスフィアとセリアの2人を家族に紹介した時にはティファニーは居なかったから、会うのが初めてになるのか。
物珍しそうにセリアを眺めているティファニーだが、その様子は興味津々といった感じだ。
「初めまして!私はセリアって言います!ティーちゃんでいいのかな?」
「そうでしゅ!」
「そっか、可愛いね〜」
ティファニーのために屈んで目線を合わせると、直ぐに打ち解けるように話し出すセリア。
相変わらずこの子のコミュ力はとんでもないなぁ……俺も見習いたいくらいだ。
「セリア、ちょっと……って、あら、シリウス来てたの」
楽しげに話す2人を見守っていると、室内にスフィアが入ってきた。
「こんにちは。元気そうだね、スフィア」
「まあね、その子は……」
「ああ、俺の姪だよ」
「可愛らしい子ね」
「また、えるふさんだぁ!」
2人目のエルフの出現にさらにテンションが上がるティファニー。
そんなティファニーに自己紹介するスフィアだが、こちらもやはり中々のコミュ力で直ぐに打ち解けていた。
まあ、うちの姪のコミュ力の高さもあるだろうけど、スフィアもセリアも異常にコミュ力が高いのでこういった席では連れて行きたいものだ。
自慢ではないが、俺は心から溶け込むとかそんなコミュ力はないし。
社交辞令とか、建前とかそんな会話くらいしか出来ないのは、前世からの賜物と言えた。
嬉しくはないけど。
「それで、シリウス。この子を連れてきたのは案内か何か?」
挨拶が終わったようで、そんなことを聞いてくるスフィア。
「まあね、来たいってお願いされて」
「シリウスっと意外と子供好きなんだね」
「スフィアはどうなの?」
「んー、可愛いけど自分の子が出来たら手一杯になりそうかな」
チラッと俺を見ながらそんなことを言われる。
それは、俺が子供に思われてるのか、俺の子が欲しいといってるのか……後者な気もするが、そんな好かれることはしてないので、なんとも言えない。
まあ、エルフであるスフィアやセリアにとっては俺の精神年齢の方がダイレクトに伝わってるのかもしれないとは思う。
転生者とは思われてないだろうが、そのうち気付いても不思議ではない。
その時はその時だな。
「ここでの暮らしとセリアはどう?」
「ええ、お陰様で楽しくやってるよ。仕事もそんなに大変じゃないし、ここは揉め事も少ないしね。何より……」
「何より?」
「みーんな、シリウスが大好きで信じてるから、温かい雰囲気で心地良いんだ」
嬉しそうにそんなことを言われてしまう。
そ、そんなにかなぁ……?
「ところで……セシルとシャルティアとソルテが居ないということは、護衛は私たちがしていいんだよね?」
「忙しかった?」
「そのくらいの時間はあるよ」
本日は、ティファニーしか領地に連れてきて居なかった。
理由としては、ティファニーが居ないことで寂しいであろうスワロのために、比較的話しやすい俺の婚約者達が残ってくれたという感じだ。
現地にはスフィアとセリアが居るので問題ないと判断したのだろう。
優しい婚約者に感謝。
「よーし!じゃあ、街に行こっか!」
「うん!」
そして、仲良さげにセリアとティファニーが部屋から出ていく。
自由な2人に苦笑しながら、俺とスフィアもあとを追いかけるが、領主館の使用人達と普通に馴染んでいる2人の姿に少しだけ安心する。
やっぱり、この領地の人たちも優しい人が多いみたいだ。
エルフやハーフエルフへの変な偏見とかもなく、仲良くやれるようなので、これからもしばらく2人に任せておいて問題ないだろう。
まあ、無論俺も領主としてやれる事はやるけどね。





