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79 正妻さんは騙せない

遺跡攻略の翌日、俺は癒しを求めてフィリアの元を訪れていた。


……というのも嘘ではないが、渡すものがあったのだ。


「シリウス様、いらっしゃいませ」


いつも通りの可愛い笑みで出迎えてくれるフィリア。


本当に良い娘だ。


「こんにちは、フィリア。今日はフィリアに渡したい物があって来たんだ」

「渡したい物ですか?」

「うん、これなんだけど……」


そう言って、俺は小型の端末を渡す。


「これは……魔道具でしょうか?」

「うん、それがあればいつでも俺と連絡出来るものだよ」


まるで、前世にあったスマートフォンのようなそれは、まさしく携帯のような機能を持った魔道具である。


昨日、遺跡で発掘したものの1つで、古代の魔道具なのだが、携帯のような連絡の魔道具は魔力の燃費が悪く実用化されてるものは今世ではほとんど無いのでかなり貴重なものだったりする。


「凄いですね……でも、そんな貴重なもの頂いてよろしいのですか?」

「うん、可愛い婚約者ともっと話したいしね」

「可愛い……」


えへへ、と照れるフィリア。


可愛い。


圧倒的な萌えがそこにはあった。


まあ、空間魔法が使える俺はいつでもフィリアの元を訪ねられるが、フィリア側からのアクションが難しかったのでこれはかなり便利な代物だ。


かなりの台数を確保しているのだが、渡せる婚約者には全員渡してある。


シスタシア王国に居る、婚約者のフローラにはフィリアの後で渡しに行く予定だ。


ちなみに、家族にも早々に渡していた。


父様、母様、レグルス兄様、ラウル兄様、レシア姉様と、家族で使える分はもちろん無償で渡していた。


古代のオーバーテクノロジーの産物なので、売ればかなりの額が懐に来てしまうことになるが、無論今世はお金にまるで困ってないので売る気は無かった。


魔道具研究のために欲しがる人たちも大勢居るだろうが、その辺はレグルス兄様に任せることにした。


俺には人を見抜く力ないしね。


それに、王家で発見したと言った方が民衆の印象も良いだろう。


シスタシア王国に居るローザ姉様にも、フローラに渡すついでに渡してくるつもりだが……多分、この携帯のような魔道具を一番利用しそうなのは女性陣だろう。


特に嫁いでしまっている姉様2人は、色々と話したいことも多いだろうし、役立てて貰えると嬉しいものだ。


ちなみに、地下遺跡の件は事後報告になってしまったのだが、レグルス兄様は苦笑しながら、『次からは必ず報告すること』と、軽く叱ってくれたりもした。


俺の身を案じてくれているのが、地味に嬉しい。


「ありがとうございます、シリウス様」


照れてから、にっこりと微笑んでお礼を言うフィリア。


「シリウス様、こちらへ」


この癒しで、昨日の疲れは取れるなぁ……なんて思っていると、フィリアはすくっと、立ち上がってから、ソファーに腰掛けると、俺に手招きをする。


その呼び掛けに疑問になりつつも、言われた通りに隣に座るとフィリアは俺を自分の膝へと誘う……まあ、ようするに膝枕してくれた。


「あの……フィリアさん?」


嬉しいけど、突然どうしたのだろうか?


そう思っていると、フィリアは優しく俺の頭を撫でながら答える。


「お疲れに見えましたので……随分と、ご無理をなさったのではありませんか?」


……また見抜かれた。


前にも、フローラの治癒の時にこうして膝枕されたのを思い出す。


おかしいなぁ……顔に出すことはしてないはず。


確かに、本当なら今日一日くらい休んでたいくらいには気疲れはしていたりする。


ただ、前世での演技の技量で他の人達には気付かれるはずなかったのに……


「シリウス様。ご無理をなさないでください……とは言えませんが、私の前では隠さないでください。私はシリウス様の婚約者なのですから」


……ああ、本当に俺はこの娘と、女神様には叶いそうもないな。


「……分かった。この後予定あるけど……もう少しだけ、ここでこうしてていい?」

「はい」


優しく微笑むフィリアに俺は甘えることにする。


撫でられる頭が心地よくて、思わずウトウトとしてしまうが……これが、幸せなのだろうと、改めて実感出来るのであった。


しかし、フィリアさんマジで凄いっす。


うん、俺は一生この子の前では無理は出なさそうだ。


素直にそう思うのであった。


まあ、それが嬉しいんだけどね。











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第3王子はスローライフをご所望
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