62 情報提供
「それで、本当にゴブリンやオークの魔石は貰ってもいいのか?」
少し話してから、その場の処理を任せて帰ろうとすると、そんなことを聞いてくるベート。
「まあね、そこまで必要ないし、後片付けお願いする代わりってことで」
「ゴブリンキングとオークロードもいいのか?」
「まあ、今のところ必要ないしね」
それに、ゴブリンやオーク、ゴブリンキングやオークロードの魔石ならストックもある。
フィリア達の婚約指輪の材料を集めてた時に何度も遭遇して倒したので要らない在庫も抱えてる。
……と、そういえば、フローラの婚約指輪も作らないと。
材料集めからだけど、さて何がいいなと考えていると、ふと馬車の荷物の中に珍しいものが見えた。
「へー、珍しいね。それってオレンジミントの果実?」
その名の通り、オレンジとミントの味がある果物なのだが、スレインド王国には無く、シスタシア王国でも見覚えが無かったので、てっきり無い思っていたけど……
「ああ、恐らくオークションの品だろうな」
「オークション?」
「まあな、それも闇が付くやつ」
その言葉で何となく察してしまった。
非公式なものなのだろう。
しかも、闇オークションとなると、危ないものも取り扱ってるかもしれない。
「ねぇ、そのオークションの会場と概要とか日時とか教えてくれない?」
「いいけど……参加するのか?君が強いのは分かるが、あそこの品はどれも違法な上に法外な値段だぞ?」
「少し気になってね」
オレンジミントみたいな、違法ではないのもあるのだろうが、大半は違法な品物なのだろう。
ヘルメス義兄様がこのオークションのことを知らないとは思えないが……念の為現場を抑える必要はあるだろうな。
それに、もしかしたらお米とか出品されてるかもだし、興味もあるのだ。
一通り話を聞いてみるが、オークション会場は毎回異なり、時間や日時もバラバラ。
入手経路は謎だが、毎回かなりの品を出してるそうだ。
おまけに……
「これは噂でしかないが……他の種族とのハーフの奴を売ってたって話も聞くな」
人間以外にも、エルフのような別の種族も存在するこの世界だが、基本的に住み分けており、交流があるのは一部の種族のみだろう。
だが、稀にそういった人と人間のハーフが生まれたりするが、大抵はどっちからも疎まれて居場所が無いというのがほとんどらしい。
人身売買や奴隷は国により違うが、ハーフは殆どの国は黙認してる節があるそうだ。
まあ、そこそこ珍しい例でもあるし、想定にはないのだろう。
ちなみに、スレインド王国とシスタシア王国は人身売買や奴隷制度は禁止されてる。
父様やヘルメス義兄様の前の代まではあったそうだが、そういうのを好まない2人が変えたそうだ。
イケメンだねぇ。
まあ、その手の制度にもメリットとデメリットがあるし、人の命を売り買いすることがないような世界の方が皆安心して暮らせるのかもしれない。
ある程度話が聞けたので、俺はお礼を言ってからシスタシア王国の王城に戻ると早速レグルス兄様とヘルメス義兄様に報告をすることにする。
その頃には多少は雨もマシになってきたが……寒いし後でお風呂入ろうと決めるのだった。
「1万の次にシスタシア5000のアンデッド……そして、ゴブリンキングとオークロードか……」
考え込むレグルス兄様。
「何にしても、助かったよシリウス。ありがとう」
「いえ、それで兄様達はどう思いますか?」
そう聞くと2人はため息混じりに答えた。
「まあ、何かしら陰謀とかありそうな気配もあるけど……もう少し情報を集めてからじゃないと結論は出ないかな」
「だね、何にしてもシリウスが居てくれて良かった。その辺は私達も少し調べてみるよ。シリウスにもまた手伝いを頼むかもだけど……」
「構いませんよ」
どのみち、フィリア達に危険が迫ることは許せないのでそのくらいの労働はいいだろう。
「ありがとう。にしても、闇オークションかぁ……義弟くん、どうするの?」
「まあ、明日だったか?なら、どうせなら終わった辺りで取り押さえるとしようかな。シリウスは出るの?」
「気になるので念の為に」
「そっか、まあ、手が必要そうなら助けてね」
「了解しました」
その後は、報告が終わってからお風呂に入って温まってから婚約者達の元に戻るのだった。
にしても、アンデッドにゴブリンキング、オークロードと、闇オークションか……色々重なるなぁ。
まあ、闇オークション自体はヘルメス義兄様達が何とかするだろうし、俺はいい物あったら貰えるようにしておこうかな?
別に普通に闇オークションで普通にお金を出して買うのも不可能ではないが、ヘルメス義兄様も今回のアンデッドのお礼に渡せそうなものは渡してくれるそうだし、オレンジミントとかは久しぶりに食べたかったし丁度いいかもしれない。
ちなみに、仕事帰りの俺だったが、4人の婚約者達は何も言わなくても俺が仕事帰りだと分かったのか優しく労ってくれた。
うん、自分のした仕事を正当に評価されて労って貰えるのってこんなに素晴らしいんだね。





