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25 フィリアと領地視察

本日は、フィリアと俺の領地を視察することになった。


とはいえ、視察とは名ばかりのデートだ。


何度か領地に顔を見せに来たことがあるので、ある程度慣れてるのだろうが、やっぱり人前は緊張するのだろう。


まあ、フィリアの容姿は目立つので、今まで辛いこともあっただろう。


とはいえ、ここではその心配は無さそうだけど……


「まあまあ、シリウス様!それにフィリア様も!夫婦仲良く視察ですか?」

「いつ見てもお似合いですなぁ」

「お子が生まれるのも楽しみですねぇ」


俺とフィリアのことを知ってる領民――というか、訪れる店や歩いてると声をかけてくる領民達は皆俺たちに対して好意的だ。


まだ婚約の段階だが、夫婦と呼ばれる旅に照れつつも嬉しそうに微笑むフィリアが可愛くて仕方なかった。


8歳で子供をというのは、早すぎる気もするが……まあ、俺が未来の領主として、フィリアが未来の領主夫人として受け入れられてる証拠だろう。


「あ!シリウス様だぁ!」


途中で、孤児院も訪れると、子供達からの熱烈な歓迎を受けてしまう。


将来、俺の元で働きたいと言う子供が多くて、嬉しくもなるが、自由に好きな道を選べばいいと俺は言っておく。


強要はしないし、本気で俺の元に来たければ来てもいい。


でも、悔いのない選択をしなさいと、8歳らしからぬことも言うが、皆真剣に頷くので良しとしよう。


「フィリア、疲れてない?」


途中、店で休憩をとることになり、席に座ってからそう聞くとフィリアは微笑んで答えた。


「はい、ここは凄く居心地がいいですね」

「そう?」

「皆さん、シリウス様のことを凄く慕ってます。私の容姿のことも気にしない人が多くて、凄くいい街だと思います」


嫁ぎ先に好意的な印象を持って貰えたなら良かった。


まあ、ここの住民は、俺が来る前までもかなり良心的な人達が多かったみたいだし、ある意味俺の成果というよりは、領民達の心根の部分なのだろう。


椅子に座って、ペガサスのクイーンをもふもふするフィリア。


人が多いので、ユニコーンのナイトは隠れており、俺の頭の上にはフェニックスのフレイアちゃんがちょんっと、可愛らしく乗っていた。


マスコット感が強いが、この状態でも能力にそう制限はないので、頼もしいボディーガードでもあるのだ。


俺の頭の上でまったりしてる様子や、フィリアに抱かれて大人しくしてる様子からは想像つかないだろうけど……


「あ、このデザート美味しいですね」

「ウチの領の特産品の白銀桃を使ったタルトだね」


元々は、白桃だったのだが、煌めきがフィリアの髪に似ていたのでそう改名することにしたのだ。


領民達から反発があるかな?なんて思っていたが、婚約者のことを想ってのチョイスに微笑ましく思ったのか普通に浸透していったのだ。


俺も1口食べるが、これまで食べたタルトの中でも最高の1品と言えた。


「うん、美味しい。いい仕事してるね」


そう言うと、こちらを伺っていた店主が嬉しそうに微笑む。


と、そんな時だった。


「おいおい、何なんだこの店はよ。どの品もクソ不味くて食えたもんじゃねぇなぁ」


30代くらいだろうか?


柄の悪い冒険者の男が3人、そう言いながらせっかくの料理を床に撒き散らすと店主に向かってクレームを付け始めた。


「こんな料理出してプロとして恥ずかしくねぇのか?」

「こっちとらお客様だぞ!」

「こんな料理に金払うなんて冗談じゃねぇからな」


俺の見る限り、どの料理もかなり美味しいのだが……なるほど、クレームをつけて代金を踏み倒すつもりなのか。


全く、こんなのが冒険者に居るとか、他の冒険者が可哀想になる。


「……それは失礼しました。ですが、割ったお皿の弁償はして頂きますので」

「はぁ?俺らに逆らうわけ?俺らここの領主と仲良いからこんな店すぐに潰せるぜ?」


いや、俺はお前らなんぞ知らんが……


なんて思っていたが、その瞬間だった。


冷静だった店主の顔が激しく怒りに包まれ、事の成り行きを見守っていた店内の客、全員の視線が鋭くなって、3人の男を睨みつけた。


その店内の空気の変わり具合に困惑気味の男達3人。


そんな3人に、店主は包丁を両手に持つと、笑み浮かべつつも据わった瞳を向けて言った。


「あなた方が、どんなホラを吹こうが結構ですが、この領地でそのように領主様を貶める言動は容認できません」


その言葉に、「そうだ!」とか、「領主様がそんな事する訳ないだろ!」とか、「ふざけんな!」とか、野次が飛ぶ。


中には冒険者や兵士も居るようで、武器を片手に準備している様子も見えた。


このままだと、色々と面倒になりそうなので、仕方ないとため息をついてから、俺は立ち上がると3人の元に向かう。


「な、なんだよ、ガキ」

「あのさ、そういう人としてダメな行動は慎んだ方がいいよ?同じ冒険者の人達の評判も悪くなるからさ」

「うるせぇクソガキ!」


怒りに拳を振り上げる男。


だが、その拳は俺が防ぐまでもなく横から入ってきた冒険者と兵士によって届くことは無かった。


「申し訳ありません、領主様。お怪我は?」

「ああ、大丈夫だ。それより、休憩中に悪いが、この3人を捕らえてくれ。領主への暴行未遂と店主への俺の名を用いた脅し。どれも法で裁くことにしよう」

「な……ふざけ……」

「黙れ!領主様に無礼だぞ!」


その言葉に驚く3人だが、俺はため息混じりに言った。


「他でこのやり方が通用したのか知らないけど、この領地でそういう馬鹿な真似は許さないから。そんな訳で、少しは自分の行動を鑑みるように」


そうして、その3人を彼らに任せて俺とフィリアは店を後にした。


「シリウス様、お怪我とかは……」

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」

「いえ……それにしても、皆さんシリウス様のこと信じておられるのですね」

「俺もびっくりだけどね」


そう言うと、フィリアは「でも、私が1番シリウス様を信じております」と微笑んだのだった。


全く、可愛い婚約者だこと。


後日、3人の処罰は、冒険者ギルドと協議して、冒険者の資格の剥奪と、罰金を科すことにした。


釈放された3人が出歩くと領民達から白い目で見られ、居づらくなったのか早々に領地から出て行ったようだが、冒険者でなくなった彼らがどうなるのかは知らない。


盗賊にでも落ちたら、遠慮なく斬ればいいだろうが、釈放前に脅しておいたので、下手な真似はしないだろう。


そんな訳で、フィリアとのデートは少しハプニングもあったけど楽しかったです。

















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第3王子はスローライフをご所望
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