大根どうでしょう ①
この時季に、人から大根をもらうと嬉しくなる。これ一本さえあればどうやっても、美味しい食べ方が数品は出来るからである。
スーパーで家庭用にカットされている大根と違って、もらった大根はまるまる一本だ。青々と繁った菜っ葉から、畑から顔を出していた青首、そして栄養たっぷりの尻尾までついている。
昔の人は、大根を沢庵漬けすると、この尻尾や青首のところまできちんと、料理に使ったと言う。この辺りを沢庵漬けにしたものは切れっ端だけに食べ残しやすいので、煮物に使うといいらしい。少し硬いだけによく煮ると、野菜の甘味が濃く出るのかも知れない。
我が家では、漬け物は菜っ葉を塩漬けにするくらいで、立派な大根はたっぷり、美味しい汁で煮込む。大根ほど汁気を吸って旨味を出す野菜はない。熱々の美味しいお汁で頂く大根が、肌寒い季節の一番心強い味方なのである。
まず大根と言えば、定番はおでんだ。白いとこから煮立てて、出来れば一回冷ます。一晩置いて、飴色になったのがいい。これを同じおでんのコンニャクやはんぺん、牛スジなんかと食べるのもいいが、おでんの中が寂しくなるまで取って置いて、ある日のしめ飯としておでん茶漬けの菜にしてしまうのもいい。
くたくたとろとろの大根をご飯の上に置き、たっぷりおでんの主役たちを煮込んだ汁をかけ回す。白ゴマに揉み海苔をふり、練り辛子をひとつまみ。熱い大根を箸で崩しながら、飯と掻き込む。せっかくのおでんを余らせるところなく美味しく締めくくるには、最高の一品だ。
甘酸っぱい柚子味噌で、ふろふき大根もいい。あっつあつ風呂上がりの美白肌大根に、とろりと甘い味噌だれを落とす。さっぱりとした大根の汁気と、ねっとりとした柚子味噌の甘味が絡み合う。夢中で食べていると、鮮やかに鼻に抜ける清かな柚子の香気。きりりと冷えた樽酒を置いて、一対一で味わうのもいい。
(で、さて大根をどうしようか…)
と悩んでいると、迷いが尽きない。どんな風にしても、大根は楽しめるのだ。あれもこれも考えていると、あっという間に時間が経つ。
日が暮れてくるとまた、折よくしばらく見なかった飲み友達が現れたりもする。
「あれ、お酒持ってきてくれたの九王沢さん」
「ふふふ、今夜はちかげさんの好きな八海山を持ってきましたよう」
久しぶりに会ったが、この子はまー、よく気がつく。鼻が利く。新潟の銘酒、八海山はふくよかでまた、口当たりのいい酒なのだ。このたおやかな吟醸香がまた、雪国で大切に育てられたお姫様と言った感じなのである。
「すごいですね。立派なお大根」
「九王沢さんは、大根お料理する?」
「焦げ目をつけて焼いて、コンソメで煮たことがあります。お酒のまかないに」
「那智くんの仕込みかな?」
さすがこの子は洋風である。ならば、ここは大根で和食尽くしといこうではないか。
「わー、楽しみです。わたし日本に来てから、お大根と言えばコンビニおでんとか、居酒屋さんで大根サラダを食べたくらいですから…」
「それはもったいないなあ。九王沢さん。日本にいるなら冬は大根を食べないと」
ちょうどいいお客さんが来た。
今日は貸し切りテーブルで、九王沢さんに、大根尽くしをご馳走しよう。今夜は大根どうでしょうだ。なんだか本当に居酒屋じみてきたぞ。




