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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
番外編

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天竜の長くも短い1日 後編

 

 天竜は一人で勝手に出歩いたりしない。

 ハルカの部屋から出る時はたいていハルカの腰袋の中にいる。

 それがここでハルカと共にいる条件だからだ。

 天竜の存在が明らかになると大騒ぎになるからと、この国の王に言われたから仕方がない。

 天竜は偉大な竜であるから、そんなこと守る必要もないけれど、天竜は話のわかる竜なのでその願いを聞き入れてやっている。

 多少狭いが毛玉の姿であればそれほど窮屈でもない。

 そうして常に行動を共にし、時々美味しい魔力の塊をハルカからもらう。

 これが実に美味なのだ。

 食べると身体中に良質な魔力が巡り、成長が促進される。

 天竜が本来の姿になるためにはかなり長い年月を要するが、ハルカの魔力があれば今までよりもうんと早く戻れるだろう。

 今はまだ維持できるのは手のひらサイズではあるが、もっと魔力をもらえれば一時的になら元の大きな竜の姿になれる日もそう遠くないだろう。

 そうしたらまず初めにハルカを乗せて空を飛ぼうと天竜は決めている。

 空はとても広く、高く、そこから見下ろす景色は美しい。

 きっと喜んでくれるだろう。

 そのためにも魔力の塊が必要なのだが、作りすぎるとハルカの身体に負担が掛かると言われれば我慢するしかない。

 ハルカを苦しめてまで早く大きくなりたいとは思わない。

 それに天竜以外にもハルカから魔力の塊をもらっている者もいる。

 それが月白の銀狼、ユーリだ。

 天竜がまだ前の天竜だった頃、撫でてやろうとして危うく潰しかけた銀狼は今は森の主になっているようだ。

 天竜からすればまだまだ小僧だが、それでも以前よりはだいぶ立派になったと言える。

 昔から生意気な物言いの小僧ではあったが、ハルカに対してはそれなりの気遣いを見せることもあり、大人になったのだと感じている。

 それを本人に言ったらものすごく嫌そうな顔をされたのでもう言わないことにした。


「嫌がるとわかっているのにそれをやるのはどうかと思う。そういう人とはなるべく関わらないようにしたい」


 以前ハルカが言っていたことだ。

 天竜はずっとハルカと関わっていたいから、ハルカに嫌われるようなことはしたくない。

 ユーリとだって仲違いしたいわけではないので嫌がることはしないのだ。

 良いことをするとハルカが撫でてくれて「天竜はいい子だね!」と笑ってくれる。

 普通の人間の子供のように、天竜のことを良い子だと撫でまわしたりする者はハルカ以外にはいないだろう。

 今までの長い生の中でもそんな人間とは出会ったことがない。

 ハルカに褒められたり撫でられたりすると気持ちがふわふわする。

 けれど決して嫌な気持ちではない。

 布団にくるまれている時の様に温かい何かで満たされる。

 そんな天竜の様子にユーリは『天竜ともあろう者がずいぶんと人間に飼いならされたものだ』と皮肉たっぷりに言ったが、天竜は心が広いからそんなことで怒ったりはしない。

 それにユーリだってハルカに抱き着かれたり撫でられたりするのを受け入れている。

 尾が揺れそうなのを我慢しているのだって知っている。

 だからお互い様なのだ。

 けれど天竜は大人で良い子だから敢えて指摘したりはしないのだ。


 基本はハルカと共に行動し、時々ユーリの背で寝たりして1日を過ごす。

 人間の言う昼時を少し過ぎた頃になると、ハルカやラジアスがクッキーをくれることがあり、天竜はそれを楽しみにしている。

 このクッキーという食べ物、ハルカの魔力の次くらいに美味だ。

 こんなに美味なる食べ物を生み出すとは、人間の探求心とは素晴らしいものである。

 美味すぎて、もらえない日には密かにガッカリしているのだが、きっと気付かれてはいないはずだ。

 最近ではクッキー以外のものにも興味が出てきたので、今度ハルカに何かねだってみようかと真剣に考えているところだ。

 特に夜の食事時ともなると、ハルカの魔力とはまた違った種類の良い匂いの誘惑に思わず腰袋から出てしまいそうになる。

 天竜の主な糧は魔素やハルカの魔力であり、本来なら人間の食べ物を食す必要はない。

 けれども辺りを包む匂いや、ハルカたちの楽しそうな声を聞いていると天竜もそこに交ざりたくなってしまうのだ。


『やはり人の営みとは良いものだ。我と違って短い生だからこその活気に溢れておる』


 天竜がそう言うとハルカは笑って「天竜ってなんかおじいちゃんみたいだね」と言った。

 不服だ。

 天竜はまだ年若い幼体の竜であるというのに。

 まあ知識も記憶も生まれ直す度にそのまま引き継いでいるのだからあながち間違っているとも言えないのだが。

 いったいいつ自分が天竜として存在し始めたのか。

 どれほどの時を生きているのかは今となっては天竜ですら思い出せない。

 何のために天竜として存在しているのかも考えるだけ無駄なのでもう考えないことにしている。

 けれど今度の生は、ハルカたちの命ある限り共にいたいと思うし、大好きなハルカが望むなら、本来の住処であるザザ山があるこの国と、そこに住む人間たちを見守ってやっても良いかもしれないと思ったりもするのだ。

 天竜は能天気そうに見えて実はいろいろ考えているのである。

 そうして日々いろいろなことを思いながら1日を終える。

 ハルカがベッドに上がる頃、天竜も枕元に移動する。

 時には空の月を見て遠い故郷に想いを馳せるハルカを見守り、慰め、そして共に眠るのだ。


 ハルカが完全に寝静まった頃、こっそり懐に移動したり、頬に寄り添ったりしていることは天竜だけの秘密である。


以上、天竜の1日でした。

いかがでしたでしょうか?

初めはハルカの魔力に惹かれていただけでしたが、今では人柄も含めてハルカが大好きな天竜でした♪


いいねやブクマありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします(*´▽`*)


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挿絵(By みてみん)



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― 新着の感想 ―
[一言] 色んな作品で神獣、聖獣、竜が出てきたけどこの作品の天竜が1番好きかも知れない。
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