62.消えた流民(2)
すみません。少し間が空きました。
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部屋には国王とラジアスの二人だけが残された。
「それで?何があった?」
「ハルカ・アリマが行方知れずになりました」
「・・・何だと?どういうことだ?」
国王は眉間に皺を寄せる。
「言葉通りです。昼過ぎに魔導師長にお会いした際、ハルカ嬢は光珠作りを終え騎士団に戻ったとお聞きしました。普段より多くの光珠を作ったことにより疲れを感じていたからすでに自室にて休んでいるかもしれないと言われ、後で様子を見に行くことを約束しました」
「それで?」
「ハルカ嬢の様子を見に行き、呼びかけたのですがハルカ嬢も天竜様も返答が無かったため合鍵を使用し部屋の中を確認しましたが姿はどこにもありませんでした。このような時間に自室に戻っていないことは今までに一度もありません」
「他の場所にいるか、もしくはどこかで倒れている可能性は?」
「私もその可能性を考え、ハルカ嬢の行きそうな場所や城からの帰り道を探しましたがどこにも姿がありません。聖獣の協力を仰ぐことも考えましたが、その前にまずご報告をと思い参った次第です」
「そうか」
国王は一度ソファに深く座り直すとラジアスを見て言った。
「一応聞いておくが、ハルカ嬢が自分から姿を消すということはあると思うか?」
「それは有り得ないことかと。ハルカ嬢は元の世界に戻れないと知ってからはここで生きていく覚悟を決めているようでした。それに、もしここから出て行くにしても頼れる場所も人も外には少ないかと思います。唯一考えられるのは、王都にあるガンテルグ侯爵家の屋敷くらいかと思いますが、もしそこにいるようなら母から必ず連絡が来るはずです」
「だよなあ」
国王は天を仰ぎながらソファの背もたれに身を預けた。
「ユーリに声を掛ける前にダントンの到着を待つ。先ほど急ぎ呼んでくるように指示したからそろそろ来るだろう」
国王は先ほどの人払いの際に、ハルカのことで何かあるならばダントンがいたほうが良いと判断しそのことをすでに指示していたのだ。
ダントンは城下に別邸を設けており、そこから城に毎日通って来ていた。
城にほど近いその場所からならさほど時間はかからないだろうが、ハルカがいなくなったという事実にラジアスは気が急いており、ダントンを待つ時間はとても長いものに感じられた。
平静を保つように心掛けてはいるが、ラジアスの焦りは国王にはお見通しのようだった。
「気持ちはわかるが落ち着け」
「・・申し訳ありません」
「ダントンならハルカ嬢の居場所を探れるはずだ」
「どういうことかお聞きしてもよろしいでしょうか?」
国王が言うにはハルカは魔力量が人よりも膨大なことと、ハルカの魔力の塊である光珠があるため、それを元にダントンほど力のある者なら魔力探索で場所が分かるということだった。
そう聞いたところで廊下の方からバタバタと慌てる足音が聞こえてきた。
どうやらダントンが到着したようだ。
「失礼致します。ハルカ嬢のことで急な呼び出しとは何があったのですか?」
「ハルカ嬢が姿を消した。自室に戻っておらず、思い当たる場所は探したがどこにもいないそうだ」
「なんと・・・!」
「ガンテルグ副隊長から話を聞く前にお前を呼んだが正解だったようだ」
「魔力探索ですね!やってみます。陛下、光珠をお借りしてもよろしいですか?」
国王から光珠を借り受けたダントンは、目を瞑りひとつ深く息を吐くと光珠を握った手を前に出し集中した。
「陛下。魔力探索はどの程度の範囲まで行えるのですか?」
ラジアスはダントンの邪魔にならないよう小声で国王に尋ねた。
国王もまた小声でその問いに返す。
「王都全域、と言っていたな」
「そんなに・・・しかし、もし見つからなかったら」
「すでに王都から離れたか、魔力を遮断される空間にいるか・・・」
「・・・最悪の場合、命が尽きているか」
「そうだ」
自分で言った最悪の結末に一瞬ひゅっと息を飲む。
そのようなこと決してあってほしくない。願うような気持ちでダントンの探索の結果を待つラジアスに嫌な言葉が届く。
「駄目です。見つかりません」
「そうか。ではユーリの協力を仰ぐ。行くぞ」
国王が言って立ち上がる。
扉を開けるとそこにいた騎士へと声を掛ける。
「森へ行く」
「今からですか?」
「そうだ。ことは急を要するかもしれん。第一からは・・お前たち二人が一緒に来い。そっちの二人は騎士団に戻り待機。他にも今ここにいる者は状況がはっきりするまでは何も語るな。万が一流民に関して探りを入れてくる者がいたら何も知らないと言い通したうえで私に報告を上げろ」
「はっ!」
「では行くぞ」
国王たちは森へ入り少し進むとユーリを呼んだ。
森の木々たちが大きな声が外に漏れるのを隠してくれる。
暫く待つとのそのそとユーリがやってきた。
『こんな時間に何の用だ』
「悪いな。いきなりだがユーリに協力を仰ぎたい」
『内容次第だが・・・言ってみろ』
「ハルカ嬢が行方不明だ」
『何だと?』
第一騎士団の二人は声こそ発しなかったが国王の言葉に驚いていた。
先ほど部屋の外にいた二人には初めて聞く内容で、流民が行方不明など大問題なのではないかと思ったが、それと同時にあの場で国王が皆に言った言葉に合点がいった。
「ダントンにハルカ嬢の魔力を探らせたが感知出来なかった。ユーリなら匂いで分からないか?前に美味そうな匂いがすると言っていただろう」
『難しいだろうな。そこの魔導師の方がよほど探せる範囲は広いだろう。それにハルカが魔力をコントロール出来るようになってからは外に漏れる魔力はほぼ無い上に、今お前は光珠を持っているだろう?そちらの匂いが強すぎる』
「そんな」
思わずダントンから声が漏れる。
ハルカが魔力をコントロール出来るようにしたことでこのような弊害が出るなど考えもしなかった。
『それに探っても魔力を感知出来ぬのなら遮断されているかもしれん。だとすればいくらハルカの魔力が漏れていようとも匂いなど分からん』
「・・・では、魔力ではなくハルカ自身の匂いならどうだ?」
ラジアスの問いにユーリが答える。
『それならば出来ると思うが・・・辿れる匂いが残っていればの話だ。しかもそれほど距離は追えないぞ』
「構わない。少しでも手掛かりを得られる可能性があるのなら頼む」
『ならばハルカの匂いが付いたものはあるか?』
「執務室にハルカ専用のペンがある。取ってくるから少し待っていてくれ」
今にも走り去ろうとするラジアスをユーリが呼び止める。
『待て。ラズの足より私が行ったほうが速い。乗れ』
「恩に着る。陛下、急ぎ戻りますので暫しお待ちを」
「待て。ダントン。今日の光珠作成はどこで行った?」
「普段通り、魔術研究棟と王城を繋ぐ私の執務室です」
「ではハルカ嬢の私物を持ったらそこに来い。分からなくなっているのはダントンと別れてからの行方だ。そこから探し始める方が良いだろう」
「わかりました。では後ほどそちらで合流いたしましょう」
ユーリに跨り走り去って行くラジアスの背を見送り、国王たちもダントンの執務室へと向かった。
お待たせした上なかなか話が進みませんで(汗)
のろのろですがお付き合いくださーい!




