29.名前が付きました
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光る珠作りに成功してから数日後。
新たに作った光る珠を持って私はダントンと共に国王陛下にお会いしていた。
陛下はがちがちに緊張した私を見て盛大に笑い声をあげ、優しい言葉と労いの言葉をかけてくれるような良い意味で親戚のおじさん風な人だった。
もちろん一国を統べる者としての威厳を感じないわけではないが。
「しかし光る珠というのもいまいちパッとしない名前だとは思わないか、お前たち」
などと言って真剣に格好の良い名前を考え始めるような、そんな面白い人でもあった。
陛下の熟考の結果、光る珠は“光珠”と呼ばれることが決まった。そのまんま、と誰もが思ったのは言うまでもない。
「しかしこの光珠というものは不思議なものだな。人間が飲み込んだところで特に効果は無かったのだろう?」
陛下は不思議そうに光珠を摘み上げるとダントンに確認するように聞いた。
「はい。私の部下に飲ませてみましたが変化は見られませんでした」
「ふむ。人間にはハルカ嬢が直接、魔力持ちの生き物にはこの光珠を、ということか」
ダントンが少し小さめの光珠を作れないかと聞いてきたので作ってみたのだが、今の話からするに部下を使って実験したのか。自分で試さないあたりがダントンらしいというかなんというか。彼の部下も大変そうだ。
「問題はこの光珠の管理だな。余所者の手に渡って魔力持ちたちをおびき寄せる餌にでも使われたら厄介だ」
「それでしたら陛下が直接管理なさるのはいかがでしょう?確か王家には特殊な魔法がかけられた箱がありましたよね?」
「ああ、あれか。そうだな、それが良いだろう」
陛下とダントンの間で話はどんどん決まっていく。
「あの、特殊な箱というのは・・・」
「ああ、王家に伝わるものでな。代々レンバックを継ぐ者だけが開けることが出来る宝箱のようなものだ。毎回私に会うのも疲れるだろうから、ハルカ嬢には光珠を作ったらダントンに預けてもらおうか」
それから細かな取り決めがされていった。
・光珠はダントンか陛下が一緒の時にしか作らないこと
・光珠の作成は私の体調を考慮して、多くても週に2つまでで留めること
・魔力持ちの生き物たちへの魔力供給の仕方は出来るだけ口外しないこと
万が一しつこく聞かれたら人間と同じだと言ってよし
「こんなところだろう。今この国は特に他国との争いも無く平和だから慌てて聖獣たちに力をつけさせる必要はないが備えは必要だ。月白のを中心とした森を守っている者たちに光珠を与えてゆき、その後はそのさらに下につく者たちにも与えてゆくのが良いだろう」
「そのようにいたしましょう」
「そしてハルカ嬢には悪いが、君を他国に渡らせるわけにはいかない。まあダントンから話を聞く限りはそんなこととうに理解しているようだがな」
「もちろんです。この国の民になれるなら願ってもないことです」
ニヤッと笑う陛下にこちらも笑顔を返すとあと一つ、と話し出した。
「めでたくハルカ嬢も我が国の民となったことだし2か月後の夜会に君も参加すると良い」
「は?夜会、ですか?」
「そうだ。もともと予定していた夜会だがそこで君のお披露目もしようじゃないか。私はハルカ嬢を隠しておく気はないし、君を噂でしか知らない貴族からも一度会ってみたいという声が多数上がっていると聞く。ちょうど良い機会だ」
「・・・ちょっと待ってください。そんなの無理ですよ!夜会ってあの煌びやかなやつですよね?私マナーもわからないですし、服だって無いですし!」
「なに、心配することはない。衣装はこちらで用意するし、マナーも君なら2ヶ月もあれば十分覚えられるだろう。ダンスのコーチも用意しよう。ああ、あとエスコート役は君の隊に侯爵家の倅のラジアスがいるだろう。彼を当日の警備から外しておくからそれで万事解決だな」
「いやいやいやいや・・・・ちょっと先生からもなんとか言ってくださいよ!」
ダントンは首をゆっくり横に振ると私の肩に手を置いて諦めろと言った。
「陛下は一度決めたら考えを曲げない方だ。君に言った時点で夜会への参加は決定事項なのだよ」
「そんな~」
「そういうことだ。2か月後の夜会が楽しみだな」
豪快に笑う陛下を心の中で引っぱたいてやりたい気分だ。ラジアスにエスコートされるだなんて。少し前にやっと自分の恋心を認識したばかりだというのになんということだろう。
頭を抱えて項垂れる私をダントンと陛下は面白そうに見ていた。
その後宿舎に戻り通常の仕事を終え、自室に戻る頃には私は精神的に疲れ果て部屋の明かりも点けずにベッドに倒れこんだ。
夜会ってなんだ。ラジアスがエスコートってなんだ。ダンスってなんだ。あの社交ダンスというやつか。そんなの踊ったこともない。
「もう考えるのめんどくさい・・・」
私はもそもそと起き上がるとお風呂に入るために動き出した。こういう時はさっさと寝るに限る。考えたところでどうにもならないし、わかっているのは王命ならば逃げることなどできないということだけだ。
「とりあえず明日、副隊長にちゃんとお願いしないと」
私の声は深い溜息と共に夜の闇に吸い込まれていった。
光珠ってダサくない?というツッコミは無しでお願いします。
・・・・他に名前が思いつかなかったんです(´_ゝ`)
少し前に投稿した短編作品の影響か、いつの間にかブクマ数が2900を超えていました。
ファンタスティック!!
退屈しない話を書ければと改めて思っています。
本当にありがとうございます!




