26.運ばれる
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光る珠の鑑定結果が出た。
≪魔力の塊≫
なんというシンプルさ。無駄の無さ。
「これでユーリ達に魔力を供給できるんでしょうか?」
「私も驚くくらいシンプルな結果しか出なかったから断定は出来ないが・・・あとは聖獣様に直接お見せして判断してもらうしかないね」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
王城裏の森へとやってきた私とダントンはユーリを呼び出していた。
「ユーリ!」
私はいつも通りユーリに駆け寄り身体に抱き着きそのもふもふを堪能する。ユーリは大人しくされるがままだ。
「ハルカ嬢!いくら君でも聖獣様にそれは失礼だろう」
ダントンが慌てて止めに入るがその声をユーリが遮る。
『よい。こやつのこれはもう挨拶の一環として割り切ることにした。して、私を呼び出したということは漸く魔力の供給が出来るようになったのか?』
「そうなの!やっとユーリが言ってた光る珠らしきものが出来上がったんだ。だからユーリに確認してもらおうと思って持ってきたよ」
『どれ。確認してやるからいい加減離れてさっさとそれを見せろ』
渋々ユーリから離れた私はポケットから先ほど出来上がったばかりの光る珠をユーリに差し出した。
「これなんだけど」
『ほう・・・』
ユーリは光る珠に鼻を近づけスンスンと匂いを嗅ぐ。
『見た目はサンディアから貰ったものと相違ないな。とても良い魔力を感じる。実に美味そうだ』
「それじゃあ」
『ハルカの魔力、ありがたく喰わせてもらうぞ』
そう言うとユーリは光る珠を私の手の上から舌で掬い取り一飲みにした。
すると―――
「え?なんか光って・・・」
「これは・・・」
―――ユーリが白く輝きだした。
輝きだしたユーリを私もダントンも呆然と見つめる。
しばらくするとユーリを覆っていた光は空気に溶けるように消えていった。
そして光が消えた後には飲み込む前と少し違うユーリの姿が。
「ユーリ?・・・大丈夫?ってかなんか毛艶良くなってない?」
「聖獣様?」
『ふむ。・・・素晴らしい。こんなに満たされたのはいつ振りか』
満足そうに呟いてユーリがこちらに顔を向けた。
『礼を言うぞハルカ。お前の作り出したものはサンディアから貰っていたものと同じだ。あるいはそれ以上の魔力を秘めているかもしれんな』
そう告げるユーリの顔は心なしか嬉しそうに見える。
私は嬉しさとやっと成し遂げたという安堵感から力が抜けその場にへたり込んでしまった。
「良くやったな、ハルカ嬢。・・・ハルカ嬢?」
『どうした?』
「いや、なんかほっとして・・・腰抜けた、かも?」
『まったく・・・締まりのないやつだ』
「うう・・・すみません」
今までにも何度も見てきた呆れを含んだユーリの視線は居心地が悪い。今にも溜息をつかれそうだ。
『仕方ない。良いものを貰った礼に私がラジアスの元まで送り届けてやろう』
「聖獣様、そのようなことは私が」
『よい。魔導師長よ、お前は王に知らせに行くのだろう。お前の役目はハルカを私の背に乗せるまでだ』
「・・・かしこまりました。お心遣い感謝いたします」
ダントンはユーリの言葉に粘ることなくあっさり頷くと私をユーリの背に乗せた。
「すみません、先生。ありがとございます。ユーリもありがとう」
『気にするな。礼だと言っただろうが』
「光る珠も完成したことだし、明日は休みにしよう。お疲れ様」
「はい」
「では聖獣様、よろしくお願い致します」
頭を下げて見送るダントンを背にしてユーリがゆったりと第二部隊宿舎に向けて歩き出した。
『魔力はまだ有り余っているが、あの珠を作りだすのはお前の身体にかなりの負荷が掛かるのだろう。おそらく今力が入らないのはそのためだ』
「そうなんだ」
『一度に扱う魔力量が多すぎるからな。お前は魔力量は異常だが、その器となる身体は普通の人間と変わりないからな』
そうこうしているうちに騎士団の宿舎まで戻ってきた。
ここまで来るとちらほらと人の姿が見えてくる。すれ違う人みんながユーリの背に乗って運ばれる私を見て驚いた顔をしている。
「・・・そういえばユーリってすごい存在なんだっけね。不敬とか言って罰せられたらどうしよう」
『っは。万が一そんな馬鹿げたことになったら呼ぶが良い。その前にラズがどうにかしそうだがな』
「副隊長が?なんで?」
話ながらもユーリはラジアスの匂いを探っているのか、鼻を動かしながらも迷うことなく第二部隊の鍛錬場に向かっていく。
キィン、キィン 剣同士がぶつかる音が聞こえる。
「止めっ!」
「セリアン、お前はすぐ突っ込んでいく癖をどうにかしろ!」
「ルバートは魔法に頼りすぎるな!」
アランとラジアスから檄が飛んでいる。
そこへハルカを乗せたユーリが現れ場は騒然となった。
「おい、聖獣だ・・・!」
「久し振りにお目にかかった!」
「なぜここに?」「ラジアス副隊長にご用でもあるのか?」
「背にいるのはハルカじゃないか?」
「なんと畏れ多い・・・」
そんな声など気にする様子もなく進むユーリにラジアスが走り寄ってきた。
「ユーリ!こんな所までどうしたんだ?それにハルカは何故そこに?」
『魔力を一度に大量使用したことにより負荷が掛かって身体に力が入らなくなっているようだから連れてきてやったのだ』
「はは・・・情けないことにそうなんです」
「大丈夫なのか?」
『少し休ませれば元に戻るだろう。さすがに私では部屋までは行けぬからな。ここからはラズに運んでもらえ』
「ユーリここまでありがとう」
ユーリの背から降りる。ここまでの僅かな時間でも立てるくらいまでには回復していたが地面に足が付いた瞬間ふらついて転びそうになる。
「・・・っ!」
そこにすかさずラジアスの手が伸びてきてふらつく身体を支えてくれた。私はその勢いのままラジアスの胸元に顔を寄せる形になってしまった。
シャツ1枚に隔たれた引き締まった身体に思わず顔が熱くなり、慌てて離れようとした。
「っすみません!あの、ご迷惑をおかけしますが肩を貸していただければ・・・」
「肩だと?そんなフラフラで歩けるわけないだろう」
ラジアスは隊長であるアランに一旦抜けることを告げるとハルカの背中と膝裏に腕を回し軽々と抱え上げた。
「ひゃっ・・・?!」
「しっかり掴まっておけよ」
いわゆるお姫様抱っこと言うやつである。
鍛錬を見学に来ていたご令嬢方だろうか、きゃあきゃあとどこからともなく黄色い声が上がる。みんなに見られていることがわかり、恥ずかしすぎてさらに顔が赤くなる。
「や、やだ!下ろしてください。私重いですから!」
「こら!暴れるな。問題無いから大人しくしていろ」
(問題ある!私の心臓が破裂するー!)
「隊長、一旦抜けますね」
「ああ、ハルカはしっかり休むんだぞ」
きっと茹蛸のように赤い顔をしているであろう私を抱いたままラジアスはぐんぐんと宿舎に向かって歩いていく。
人目が恥ずかしくもういっそのこと隠れてしまえとラジアスの胸に顔を埋めると一瞬ラジアスの足が止まった。
「副隊長?やっぱり重いですよね?今からでも下ろしてもらえれば・・・」
「いや、大丈夫だ。むしろ思っていたよりも軽くて驚いている」
「そ、そうですか・・・」
私はまた顔を赤くして隠すようにラジアスの胸元に顔を埋めた。
168㎝もある女性をお姫様抱っこ出来るのかという疑問。
→ラジアスが185cmくらいある設定なのでいけるだろう!だって鍛えてるもんね!
と自分を納得させました(笑)




